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プロローグ
街中で彼女は一人佇んでいた。透き通るような白い肌は、しっとりとした黒髪は男女問わず見るものを魅了する美しさを持っていた。
だが彼女に魅了される者は一人もいなかった。
街ゆく人は皆彼女を無視して足を進めている。
いや、正確に言うならばこうだろう。
まるで彼女がいないかのように歩いているのだ。
そしてそれを彼女は気にも留めていない。彼女自身が、自分が関わられないことを当たり前だと感じているような、そんな雰囲気が漂っている。
これがこの街の日常
だった。
あの日、彼と彼女の目が合った時
この街は、この世界は、この日常は、大きな流れに飲み込まれたかのように変化していく。