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生産職ですが最強です  作者: シウ
第四章 女神の迷宮編
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第四章 第十九話 「戦狂い、舞い踊る2」

書けましたので、投稿です。

 

「ふふふっ! よく受けきったわ!」


「お互い様だ。あの程度はあんたにとっては児戯にも等しい事だろ?」


「当たり前じゃない。こんなの序の口も序の口よ。貴方も、そうでしょ?」


「まあ、な」


 再び相対する颯天とクラウディア。そんな中で今度の先手を取ったのは颯天だった。剣を持っている手とは反対の手を上へ、クラウディアへと向けると腕全体に雷が奔り周囲の海水を蒸発させながら帯電する。


「【雷虎咆らいこうほう】!」


 掌から放たれるは獅子の姿を形どった雷の弾丸。対してクラウディアは泰然と構えると迫りくる獅子へと颯天と同じようにされど颯天と違い人差し指を指し伸ばすとその指先に氷の結晶が光り。


「【一角氷鯨いっかくひょうげい】!」


 その名を口にすると同時に尾びれから背びれ。胴体とヒレを形作っていきやがて完成するは全長一メートルほどの氷で作られた一本の角を持つ白鯨が形作られる。


「貫け!」


 クラウディアの命令すると一角を持つ白鯨はクラウディアへと迫っていた獅子を貫かんと突貫する。

 食いちぎらんとする獅子と一角をもって貫かんとする白鯨の一騎打ちはまるで先程の焼き直しかのように獅子の体から散らされた雷は海水を蒸発させ、魔力を宿したまま剝離した氷は海水を氷の結晶へと変えるが、やがて互いが互いに力(魔力)を使い果たしたことでその姿は霧散した。

 だというのに、颯天とクラウディアは互いに笑みを浮かべていた。


「氷の魔法か。いい腕をしている」


「貴方もね。私を試してくるだなんて、初めての経験よ?」


「そうなのか? 戦い慣れていると思ったが」


 颯天の感覚としてはクラウディアはかなりの実力者であると感じていたが。それに対してクラウディアは溜息を吐いた。


「戦い慣れているといっても、この国での私は「王女様」。だからなのでしょうね、手を抜かれるのよ」


 クラウディアは構えを解くと街の方へと視線を向ける。


「もちろん、仕方のない事だって事は私も理解している。けど、王族としての責務だけじゃ私の中の渇きは抑えきれなかった」


 そう言いながら街から颯天に視線を向ける。その眼を見た颯天は飢えた獰猛な虎の幻影を見た。


「だから、私は騎士団に入ったの。私の飢えを満たすには戦いしかないと。剣と魔法の腕も磨いた。そして騎士団に入って、誰よりも前線で戦ったわ。お陰で飢えも少しは抑えれたし、まあ幾つか自分勝手な行動が結果的に私の無二の片腕と出会えた幸運には感謝してるし、そのお陰で少しはマシにはなったわ。でも、私の中の渇きは収まらなかった」


 それはクラウディアの一人語り、誰かに聞いてほしいがためではなくまるで本気を出すための枷を外しているかのように颯天には見えた。だが颯天動くことなくクラウディアと同じく構えを解き聞きに徹する。まるでそれが本気のクラウディアを相手にするために必要というかのように。


「だから、ね。私は探していたの。王女である事なんて関係なく本気で戦える強者を」


「それが俺、という訳か?」


「ええ。私も話を聞いたときは半信半疑だったわ。けどこの短い時間で確信した。私は、貴方を待っていたんだって!」


 長い間、自分と対等に戦える存在に、待ち焦がれ、恋焦がれていたといっても過言ではないクラウディアの体から感情が高ぶっていく毎に少しずつ血のように紅い魔力が漏れ出す。それはまるで押し込めていた扉が濁流の勢いによって破損した個所からあふれ出ていくかのようで。


「だから、もし私を殺してしまったとしても私は恨まない。でも、もし貴方を殺してしまったなら、ごめんなさいね?」


「恨むわけないだろ。それに一つ言っておくと俺は、死ぬ気はない」


「‥‥あははっ!」


 颯天のその言葉がクラウディアに聞こえたかは定かではない。だが、確かにクラウディアは笑みを浮かべた直後、体よりまるで地のように紅い魔力が溢れ出てそのままクラウディアを包み込む。そして繭のように胎動したかと思うとそれは端から凍りついていき、やがて崩壊するとクラウディアは青と白を基調とした鎧を身に纏い、蒼くなった剣の刀身から漏れ出た冷気によってクラウディアの周囲に氷の結晶が咲き乱れた。


「…ああ、いい気分」


 まるで自らを縛っていた鎖からへ全てから解放されたかのようにクラウディアの身体から溢れる魔力は先程までと比べものにならないほどに強かった。


(これは、このままだと駄目だな)


 そう判断した颯天は切り札を切る事にした。


第一封印(ファーストシール) 開錠(パージ)!」


 魔力で編んだ鍵を差し込み、封印を解く。

 颯天本来の魔力、その一部が解放され颯天の体から濃密なまでの魔力が噴き上がる。しかし以前は嵐のように無秩序に荒れ狂っていた魔力も颯天の魔力回路を傷つけることもなく静かに循環していた。だが、決して大人しくなったという訳ではなく。


「凄い魔力、まるで嵐ね」


 颯天の体からあふれ出る魔力はごく僅か。内で荒れ狂う魔力を感じ取り、それは自分を凌ぐほどでありながらもクラウディアは、まるで童女のように無邪気に嬉しそうに笑う。そして、颯天も小さくだが満足げに笑っていた。


(上手くいったようだな)


 以前、初めて封印を開錠した際には鍵を作るには白夜の補助が必要だった。だがいつも白夜がそばにいるとは限らない。その事を想定し、颯天は密かに修練に励んで会得した二つ内の一つだった。


「それじゃあ、存分に楽しみましょう!」


 剣を振り上げると同時にクラウディアの周囲に冷気により生成された氷の槍、その数およそ数百が降り注ぐ。それに対して颯天は全身に濃密な魔力を纏う。


「【龍鱗纏りゅうりんそう】!」


 そして、地を蹴った颯天は自ら槍の雨の中を突き進む。そんな強引ともいえる動きにより半数以上の氷の槍が颯天へと着弾するが、龍鱗を纏う颯天の防御を砕くこと敵わず逆に自壊していく。


「あははははっ!」


 そして、降り注ぐ槍の雨を抜けた先にはまるで抜けてくると信じていたかのように颯天へと剣を振るってきたクラウディアの姿で。

 そんなクラウディアに応戦するかのように颯天も剣を振るう。


「あれだけの攻撃を正面から抜けてくるなんて、貴方おかしいんじゃないの!」


「じゃあ逆に聞くが、あれ以外の方法をお前は望んだか?」


「いいえ! だからこそ嬉しいんでしょ!」


「お前も、対外だな!」


 本当に嬉しそうに剣を振るうクラウディア、それにつられるように颯天も笑う。

 クラウディアの剣に纏う冷気によって剣の軌跡が凍る事で颯天の視界がわずかだが遮られる。そんな状態から胴に向けての突きを颯天は剣の腹で受け止めるだけにとどまらずにクラウディアの剣を横へと流し態勢崩す。


「がはっ!?」


 まずいっ。そう近くしたときにはクラウディアの体がくの字に折れ、苦悶の声と同時に肺の中にあった空気が吐き出される。

 その腹部には【黒鴉】の柄が突き刺さっていた。


「がああっ!」


「くっ!?」


 確かに、効いていた打突の一撃。だというのにクラウディアの体は本能的に足(尻尾)が颯天の側頭部を捉え吹き飛ばすことで距離が生まれた。


「驚いた。まさかあの状態から蹴りを入れてくるか…」


 咄嗟に腕で防いだ蹴り。だがその重さは【龍鱗纏】を纏っていなければ腕が折れてしまっていたと思わせるほどの重みをもっていた。

 颯天の視線の先。クラウディアの体は脱力していたが、その体から感じる獣性と視線が颯天の肌を突き刺すかのようで。

 颯天は警戒度を数段引き上げる。


「アハッ」


「ッ!?」


 確かに捉えていた姿が、掻き消えたかと思うと颯天は足払いを受けていて。気付いた時には眼前に拳が迫っていて。颯天はとっさに受け身を取る事無く地面へと叩きつけられた。


(あいつ、意識が飛んでるな…)


 今しがたのクラウディアの攻撃は、先程までとは違い一切の加減がされていなかった。更にいえば、地面に着弾した直後に颯天は今度は空、上へ打ち上げられていた。


「ガアアッ!」


 今度は横に蹴り飛ばされる。そしてその軌道の先には既に拳を振りかぶるクラウディアの姿があって。颯天は攻めに転じる。クラウディアの拳を起点に体を捻る事で勢いを殺し。


「正気に、戻れ!」


 お返しとばかりに脳天に蹴りを放つ。しかし本能的に戦闘不能になる事を嫌ったのかクラウディアは咄嗟に颯天へと剣を振るう。その剣は先程までが優雅であったとすれば粗雑の一言に尽きた。だが、型がないが故に読めない攻撃となり、颯天の足を僅かに掠り足の軌道が逸れるがそれでも肩へと直撃しクラウディアは地面へと叩き落されたが。


「グルアッ!」


「マジか…」


 クラウディアは尻尾をまるでバネのように伸縮させる事で威力を吸収、逆にそれを生かしての跳躍で再び颯天へと迫り、颯天とクラウディアの剣がぶつかる。それで颯天は確信した。


「おい。いい加減慣れただろ? 何時までそうしているつもりだ?」


「あら、バレてた?」


 悪びれもなく笑いながら答えたクラウディアの眼にはいまだ獣性が残っていながらも、理性の光が戻っていた。

戦闘描写、やっぱり難しいですね‥‥。あ、次か、次のあたりで戦闘は終わりかな?と考えています。

そして、一つお知らせなのですが、仕事がまた激務になるとの話が来たので、投稿がまた遅れます。

少しづつ進めて何とか今月にもう一話投稿できることを目指して頑張ります。

少しでも楽しんでもらえると幸いです。 では皆様、また次話にて。

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