第四章 第十五話 「芝居」
書けましたので、投稿です。う~ん、自分やっぱり書くの下手ですね‥‥。
「ふむ、赤い珊瑚の自然を生かした天然の城か。見てるだけで絵になる景色じゃの」
「綺麗・・・」
まるで、絵画のような絶景に白夜と伏見がそれぞれ感想を述べ、フランも光の当たり具合で宝石のように輝く城に興奮して颯天の肩の上でピョンピョンと跳ねる中で、颯天は別の事で感心していた。
そんな中、ネプチューンは口を開く。
「そうであろう! 何せあの城は‥‥」
「ああ。確かに綺麗だが、それだけじゃないぞ、軽く視た感じだがあの珊瑚、まだ生きている。だからもしどこかが壊れても自己再生で元に戻るぽいから、かなり堅牢な城になるだろうな」
「‥‥‥」
説明する気まんまんだったネプチューンのだったが、言おうとした事を颯天に全て説明されてしまい、一瞬にしてネプチューンは落ち込むが、切り替えたのかすぐに復活した。
「うむ、全部言われてしまったがその通りだ!全く、良い眼をしているな!」
「…まあ、眼は職業の影響で後天的に得ただけだ」
「ほお? あの場では聞きそびれていたが、君達ほどの実力を持つ人間が一体どのような職業なのか気になっていたんだ。問題が無ければ教えてほしいんだが、大丈夫だろうか?」
今更ながらだが、この世界で自らの職業を開示するという事は、自ら弱点を教えるのと同義である。そしてネプチューンがそう言ってきたのは、災厄と戦うのに颯天達の実力を知る為という事ともう一つ、もしもの時の為に相手の職業を把握する事で対処を容易にする為でもあった。
「‥‥まあ、教えるくらいは問題ないか。それほど影響もないしな」
「…影響がない? それは一体どういう事だ?」
ネプチューンの問いに答えることなく、颯天のネプチューンに見えるようにした状態でステータスプレートに魔力を流しステータスを表記させた。
NAME 影無 颯天 職業 錬金術師 レベル ■▲■◆ 性別 男
筋力 ■▲■※◆ (+■▲■◆)
体力 ■▲※■◆ (+■▲■◆)
耐性 ■▲■※◆ (+■▲■◆)
敏捷 ※■▲■◆ (+■▲■◆)
呪耐 ■▲?■◆ (+■▲■◆)
魔力 ■▲!■◆ (+■▲■◆)
(うん。バグっているな、これ)
久々に表示されたステータスプレートの内容に、颯天は冷静にそう結論付けたがもちろんそれは異常な事態で。それを何よりも物語っていたのは、なにこれ?と困惑しているネプチューンの表情だった。
「‥‥なんだ、これは?」
「正直言って、分からん。まあ、俺自身も仕組みが分かってないものだからこういった事もあるのかもしれないぞ?」
「そうなのか‥‥?」
ネプチューンに何とでもないようにそう言った颯天だが。実際、颯天はステータスプレートの仕組みを理解していた。
錬金術師の職業を獲得した後、興味本位で構造を調べて分かったステータスプレートの仕組みは、言わばリトマス試験紙のようなもので。
ステータスプレートは登録された魔力(液体)の強さによって色を変えるが、それだけでは大雑把で良く分からない。なのでそれをより分かりやすく可視化出来るように作られたのがステータスプレートという魔道具だった。
そして、颯天はこうなった原因については想像がついていた。ステータスプレートが訳分らん状態になった原因、それは恐らくつい先日の第二封印の解除によって解放された過剰な魔力によるオーバーフロー、それによって魔力を測定する部分が破損したのだと思われた。
そして、ある部分にまるで監視する為のような機構もあったようだが、それも破損したようであった。
(まあ、不可解な機構も壊れたみたいだから追々解析するとして。取り敢えず冒険者ギルドで使えれば問題ないだろう)
と、実際その程度にしか颯天はそこまで気にしていなかったりした。だが、ネプチューンは本当に困っていた。
「う~ん。だが、これでは流石の私も説明に困るぞ…?」
実際、ネプチューンが知る限りでこのような事が起きたのなど聞いたこともなく、だが実際に目の前にその現物がある。魔法による幻とも考えたがそのような素振りは一切なくて信じる他なくて。
「なら、私のなら使える?」
そう言って伏見はステータスプレートに魔力を込めながらネプチューンに見せる。
伏見稲波 職業 魔獣使い レベル▲■● 女 17歳
体力 ☆■●★ (■■■■+■■■■)■■■■の加護
筋力 ▲■★◇ (■■■■+■■■■)■■■■の加護
耐性 ▲■●? (■■■■+■■■■)■■■■の加護
魔耐 ✕▲■● (■■■■+■■■■)■■■■の加護
敏捷 〇▲★◇ (■■■■+■■■■)■■■■の加護
魔力 ■■■■ (〇▲★◇+✕▲■●)■■■■の加護
「‥‥‥同じ?」
「‥‥‥うむ、同じだな」
まさかの伏見のステータスプレートも颯天と同様の状態になっていて、流石のネプチューンもどうしたものかと頭を抱えるが。
「‥‥まあ、ローレライ様の加護を受けていると言えば問題はない、か?」
「いや、軽いな?」
「王だからな。多少は融通を利かせれるさ」
少々言葉に疑問符が付きながらもネプチューンはそう自己解決(?)する事で、ステータスプレートバグ事件は取り敢えず脇に置かれて。
「さて、ではまずは城へと向かうとしようか」
そう言いネプチューンは歩き始め、颯天たちもその背中を追うように歩き始めて王宮に近づいていくと徐々に街に暮らす人々の生活の音や声といった喧噪が聞こえ始めた。
「かなり栄えていな」
「そうじゃの。それに、伏見も気付いたかの?」
「うん。不安な声が聞こえない」
声が聞こえると言っても、まだ市街地までは距離がある。そんな中でも颯天たちは微かに街から聞こえた声音から災厄を前に国民はそこまでの恐怖を抱いていないと判断した。
「ほぅ、耳が良いな。まだ市街地までは距離があるはずなんだが…」
「まあ、この程度が出来なきゃ生き残れない環境で育ったからな」
「はあ、ローレライ様からの信頼と言葉が無ければ、私は君達をこの国に入れなかっただろうな…」
ネプチューンの何か言いたげな表情と共に颯天たちに聞こえるようにそう呟くが、颯天たちは特に気にした様子もなく言っても無駄だと判断したネプチューンは内心でもう一度ため息を吐きながら歩き続け、やがて目的の場所、コーラル城の前に到着した。
(これは、凄いな‥‥)
遠目からでは良く分からなかったが、近くで見て颯天は素直に感嘆した。
コーラル城は颯天が先程言った通りで珊瑚が生きてりる為、城の一部が破損しても自己再生するのでかなり堅牢な城であるが、もちろんそれに驕る事無く城壁と城の表面には衝撃を緩和する石壁、その下に魔法に対抗する障壁、その下には珊瑚が自らの身を護るために形成した高い硬度を誇るアヴェルタ水晶による人工物と自然による三重の防壁が形成されていた。
(これだけの防壁、余程のことが無い限りは抜けそうにないな)
(そうは言っても、お主なら抜けない事もなかろう?)
(いや、まあ。抜けなくはないけどな…)
(…抜けるの?)
(あれ、なんで伏見が‥‥)
流石にこの話題は不謹慎かと久々に念話で話しかけてきた白夜だったが、その会話に伏見も参加してきて。颯天はそこで思い出した、この念話が使える条件を。そして伏見もその条件を満たしているという事を。
(どうかした?)
(‥‥いや、気にしないでくれ)
今の伏見は今までとは違い本当の意味での楔の巫女で。伏見の全てを奪ってしまったという事を、颯天は改めて実感している間に城の中へと入るとネプチューンに気が付いた人魚達が近づいてきた。
「ネプチューン王! お帰りなさいませ!」
「ローレライ様からの加護はどうなりましたか!?」
「ああ、無事ローレライ様からの加護を授かることが出来た」
「「「おおおおおぉぉぉ~~!!!!!!」」」
「ローレライ様の加護があれば、災厄など恐るに足らず!」
「水の大精霊ローレライ様に、そしてサウスザーランド海王国に栄光あれ!!!」
その興奮は、あっという間に波及し王宮全体へと広がり。城の至る所から歓喜の声が上がる。そんな中、そいつが現れた瞬間に場の空気は一変した。
「やれやれ、まだ戦いになっていないのに騒がしい事だな?」
興奮した者達を武官たちにそう言い姿を見せたのは華美で露出が多く趣味の悪い鎧を身に着けた女たちに守られた、肥え太ったネプチューンよりも豪奢な服を身の纏った男の姿で。当たり前だが彼らも腹部より下は魚のものでネプチューンと同じ人魚族だが、ソイツに対して颯天は一切の興味を失った。
「‥‥ベルラードン大臣。そのような物言いはないのではないか?」
「おや、陛下。これは申し訳ない、ですが、まだ姿も見えぬ災厄との戦いになってすらいない。なのに水の大精霊であるローレライ様の加護を受け勝った気でいるというのも如何なものかと思いますが?」
「それはそうかもしれぬ。だがそうなった時前線で戦うのは我らではなく兵士の皆なのだ。そんな者達の気持ちを汲むのも上に立つ者の務めであろう?」
「流石は陛下!王たる者の考え、感服いたしますよ」
外野である颯天達から見ても分かる、言葉の端々から伝わってくる不快感。そこから分かる事、ベルラードンという人魚族の男は、ネプチューンに敬意を払っていない。いや、こいつはネプチューンを王と認めてすらいない。
「しかし、そんな陛下にお尋ねいたしますが。何故この場に我らの怨敵である人間を招き入れたのですか?」
「それは‥‥「へえ、興味深いな」」
ネプチューンが何か言おうとしたが、それを遮って颯天は何とでもないようにごく自然に口を開く。
「おおよそ予想が付いてはいたが、怨敵とはまた穏やかじゃないな? だが申し訳ないがそこの辺り不勉強でな、ご教授いただけると助かる」
「人間風情が、この我ら人魚族に対して口を聞くなど末代の恥だ。殺されたくなければ即刻この国を出るがいい!まあ、貴様ら人間がこの国を出たところで外に出ることなく溺れるだけだろうがな!」
明らかに見下した態度のベルラードンだが、それを止める者はいない。何せこの場に居るネプチューンを除いた全員が颯天達を目の敵とばかりに見てきている。そんな中でも颯天は自然体を崩さない。まるでそんなものはどうでもいいと言わんばかりに、ネプチューンにだけ視線を向ける。
「なあ、ネプチューン。これは俺達に対しての宣戦布告と取っていいのか?」
「宣戦布告ではない事だけはないと、ローレライ様に誓おう」
「そうか」
颯天の問いにネプチューンは短くそう答え、颯天も短い返事に留める。先の言葉、それが正解なのかはネプチューンには分からない。
だが、先程から颯天の意識は常にネプチューンに向いていた。まるで今から爆弾を落とすぞと言っているかのようで。そこから推察するに、針の筵状態であるこの状況を利用して颯天達は自らの立場を証明するぞと言っているかのようで。
「なら、今は俺の胸の中に納めておくとしよう。だが次はないぞ?」
「ああ、感謝する」
先程まではベラルードンの独壇場となっていた空気が、ネプチューンと颯天。この二人だけの意味深な会話によってその空気は、目の敵から不審なものへと変わる。そして、そんな空気が気に食わない愚か者が口を開く。
「陛下! 怨敵である人間風情に何故そのような事を言われるのですか!? 謝罪するべきは彼らの方でしょう!? 早くこの国より放逐しなければ更なる災いが起きます!」
「それは出来ぬ」
「何故ですか!?」
「彼の者たちは、水の大精霊であるローレライ様がお認めになられた盟友だからだ」
「なっ!?」
ネプチューンの口から出た内容にベラルードンだけでなく、この場に姿を見せている全員がどよめいた。人魚族である彼らが奉じる水の大精霊であるローレライ。その盟友に人間がなるなど、聞いたこともなかった。
「そ、そんなの出鱈目だ! 我らが奉じるローレライ様がただの人間を盟友とされる訳がっ!」
「証ならある。すまぬが見せてもらえるか?」
「はあ、仕方ない‥‥。これでいいか?」
わざとらしくため息を吐いた後、颯天達は目配せをしてそれぞれがローレライから託された身に着けていた腕輪見せた事で、周囲はどよめいた。身に着けている腕輪から感じ取れる魔力は間違いなく、この国を覆っている加護と同じ、その力強さは本物であるという何よりの証拠でもあった。
「どうだ、ベラルードン?これでも嘘というつもりか?」
「…いえ」
「分かれば良い。そして、この場に居る皆にも言っておく。彼の御仁達はローレライ様が遣わされた者達だ。決して刃を向けてはならぬ! それは奉じるローレライ様に対しての裏切りだ!そして刃を向けた者は己の死を覚悟せよ、これは王命である!」
「「「「「「‥‥はっ!」」」」」」
ネプチューンの言葉に少しの迷いこそあれ、あの腕輪が本物である以上彼らは王であるネプチューンに従う事にしてその場にいた者達は敬礼をとる。その中にはベルラードンの姿があったが、ネプチューンに向いたその眼には、黒い感情が見え隠れしていた。
今回の話は、取り敢えずこんな感じです。正直、こういった描写は先頭描写に次いで苦手なんですけど、まあ、大事かなと思い頑張りました。あ、因みにですがベルラードンの名前のもとはベラです(比較的どうでもいい情報‥‥)
さて、次話はまあ、ちょっとずつですが書いていきます。それとどのあたりになるかは不明ですが、新キャラ(?)も出す予定ですので、楽しみにして頂けると本当にうれしいです!
長くなりましたが、今回はここまでで。では皆様、また次話で。




