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生産職ですが最強です  作者: シウ
第四章 女神の迷宮編
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第四章 第八話 「決意と共に」

どうにか、出来ました。ので投稿です。

やっぱり、戦闘シーンは大変ですね…。書ける人たち本当に凄い。

追記;6月20に改稿しました。

「援護はわしに任せよ。お主らはただ前(颯天)だけを見ておれ!」


「はい!」


「分かった!」


 白夜の言葉にニアと伏見の二人は後ろを気にすることなく、真意は伝わなくとも多少の対策になるじゃろうと白夜が見守る中で更に進みドラゴンとの距離を詰めていく。


 二人が距離を詰めた事によって、ドラゴンは本能で感じ取った。あの三人、否二人に攻撃を貰えばせっかく表に出てこられたのに、また封じられてしまうという事を。


「グルルルッ!ルラアアァァッ!!」


 そうであるならば抗うのは必定。そしてドラゴンは封じられないために防御ではなく攻撃を、二人を殺す事を選択し、地を一直線に疾走る。だが、その速度は力を削られているドラゴンのほんの一部しかなく。


「はやッ!?」


「!?」


 だが、ニアと伏見の二人にとっては驚愕に値する疾風もかくやというほどの速さで。振るわれた拳をそれでも二人はどうにか回避し距離を取る。


「ふむ。やはり主様も成長しておるようじゃのぅ」


 如何にか二人が攻撃を避けることが出来たその様に、白夜が過去に見た時と比べてドラゴンの動きは鈍いもので。白夜は颯天も順調にドラゴンの力を己の力にしている事が伺えた。


「じゃが、それでもまだ()()()()()()()()()()()()()()()()()あの二人には、まだ分が悪いか」


 そう呟く白夜の前では伏見に狙いを定めたドラゴンが先ほどと同じ動きで距離を詰める。だが、その動きはであるならば、それはドラゴンの傲慢であり、驕りと言えた。


「グルラアァッ!」


「っ!」


「くぅっ!?」


 だが、その驕りを許される存在が弱体化しているとはいえ力の象徴とされるドラゴンであり、先程と同じ動きであるのに、伏見とニアの二人は攻撃が当たる寸前に左右に跳んで回避する。否回避するしかなかった。だが、この場にはもう一人いた。


「おうおう、人の庭で気持ちよさげに暴れおってからに」


「グルルル!」


「少しだけ、お仕置かの?」


 まるで、子供が新しいおもちゃを与えられて辺りを遊び散らかす。そんな状況に白夜はまるで幼子を少しばかり注意するかのような声音でそう言い。


「来いよ、蜥蜴」


「グルル‥‥」


「なんじゃ、来ぬのか?」


 そこには言霊による縛りも、霊力の放出による威圧もなくごく自然に挑発を口にする白夜に対して、先ほどまではとは打って変わりドラゴンの威勢は急激に無くなりその場から動こうとしなかった。


「なら、わしの好きにさせてもらうかの」


 そう言うと白夜はようやく体を起こした伏見とニアの二人の近くへと歩いていく。そして間近に来ると予想していた通り。


「やれやれ、何という表情をしておるのか。お主らは」


 白夜が見た二人は怪我こそ負ってないが砂まみれ、そしてその表情は少し前とは違いドラゴンの力を眼で、そして肌で感じた恐怖に呑まれた眼をしていた。だが、その恐怖に呑まれまいと抗う光も見て取れた。


「じゃが、まあ。ドラゴンの力を肌で間近で感じながらも動けただけ良しとするかの」


 そう呟きながら両手に霊力を収束させパンッ!と拍手すると淡白い燐光が弾け伏見とニアへと降り注ぐと、二人の体に纏わりついていた漆黒のオーラが弾け飛び。二人は先程までの動きが嘘だったかのように立ち上がる。


「…軽い?」


「さっきと全然違う…?」


「どうじゃ、これで動けるじゃろ?」


「白夜、何をしたの?」


「それに、どうして私達の動きが悪くなったんです?」


「良い機会じゃ。話しておこうかの」


 伏見とニアの二人は突然動けるようになったことに対して疑問に思うことは当然であり。

 そんな二人の為にドラゴンについて話し始めた。


「そもそも、ドラゴンとはなんじゃ?」


「災厄」


「世界を襲う災害?」


「ふむ。まあ、当たらずとも遠からずじゃの。正解は高次元の力の結晶が形を持った存在じゃ」


「「どういうこと(です)?」」


 二人の答えに白夜は正解を口にしたが、二人はその意味がよく分からず仲良く首を傾げる。そんな二人に白夜は説明を続ける。


「わかりやすく言えば、ドラゴンは宇宙(高次元)から降って来る流れ星のような存在じゃな」


「とんでもない大災害じゃないですか!?」


「うん。迷惑」


 ニアと伏見の反応に白夜は苦笑を浮かべながら話を進める。


「まあの。じゃが厄介なのは世界に出現したその時からじゃよ。それが何か、分かるか?」


「「?」」


「呪いじゃ」


「「呪い?」」


 白夜の言葉の意味が分からず二人は再び首を傾げる。そんな二人に白夜は説明する。


「高次元で生まれた存在が何故ドラゴンと成るのか。そこは推測じゃが、多くの人に力の象徴と認識されるいるからじゃと思っておる。じゃが最も厄介なのは、高次元の存在はそこに居るだけで呪いをまき散らす」


「呪いって、一体どんなものなんです…?」


「呪いと言うがそれは単純な魔力放出じゃ。じゃが問題は放出される魔力の濃さが尋常ではないことなのじゃ」


「どういう事?」


「全ての生物には自己を守ろうとする防衛本能がある。そしてそこには外部からの魔力、霊的干渉からの防御も存在しておる。しかし、ドラゴンかる放出された魔力は生物が持つ霊的防御を塗り潰し、塗り替える。だが肉体(器)が耐え切れず死に至る。一般人には視覚的には見えない事象。故に呪いと呼ばれておるのじゃ」


「さっきまでの私達は、呪われていた?」


「!?」


「まあの。じゃが抗っていたからあの程度で済んだと言える。常人であれば恐怖と魔力に呑まれて死んでおるよ」


「!?」


 驚くべき事実が次々と明かされてニアはただ驚くことしか出来なかったがそれが嘘だとは思わなかった。

 実際、白夜が祓ってくれていなかった時は自分の体ではないかのように重かったそれが、ドラゴンの威圧による恐怖と魔力侵食によるものだとは思っていなかったが。


「じゃが、お主らは死んでおらんし恐怖にも抗っておったじゃろ?それは何故じゃ?」


「それは‥‥」


「助けたい人がいるから」


 伏見の言葉を継ぐようにニアはその想いを口にする。そしてその答えに白夜は笑った。ちゃんと颯天の事を想っていたと。


「うむ。それでよい。ならもう一つアドバイスじゃ。全力であのドラゴンを殺せ」


「…はい?」


「どういうこと?」


「何もかも、言葉通りじゃ。ドラゴンが死んでも颯天が死ぬことは絶対にないからの。何せ、宿主が死ねば本当の意味で消滅してしまうんじゃからの。死ぬ気で護るよ」


 白夜からの当然の言葉にニアと伏見の二人は困惑した。あのドラゴンは魔力が実体化した存在。しかしその中心にいるのは颯天で。

 結果、二人は颯天を傷つけないかという迷いもあって全力の攻撃を避けていたが。そんな二人に対して白夜は絶対の自信をもって断言して、二人もその理由に納得した。如何に強大な力を持っていても宿主が居なければ存在できない。そう思った時だった。


(あれ、それなら颯天さんは一体)


 何時からそうなんだろう。そうニアが思った時。


「グラアアアアアァァァァッッッ!!!!!」


「おや、もうしびれを切らしたか。じゃが、丁度よいか」


 そう言いながら白夜は霊力を放出し結界を形成しドラゴンから咆哮に乗せて放たれた魔力を相殺する。


「グルルッ! ガアッ!」


 魔力が相殺されたドラゴンは接近戦を仕掛ける為に距離を詰める。そんな中、白夜は二人をその場に残し後ろへと跳躍する。


「お守りはここまでじゃ。後は自らの足で進んで行け!」


「「!」」


 白夜からの激を受け伏見とニアはそれぞれ立ち上がる。そんな中伏見へと狙いを定めたドラゴンは更に加速する。それは先程見た時と同じ疾風もかくやという速さで。


「…はっ!」


「グルアアッ!?」



「…くっ!」


 だが初見とは違い、更に加減が必要が無いと分かった伏見は既に一度見た速さ。であるならば先程の情報を基に予想を立て会費だけではなく反撃が出来るように、先ほどよりも回避の距離を短くした結果。すれ違いざまに放った伏見の拳がドラゴンの横っ腹を捉え、それにドラゴンは驚きの声を上げるが逆に拳を撃ち込んだ伏見は僅かに痛みが混じった表情を浮かべた後、後ろへと跳び退く。


月雨つきさめ


 詰められないように細か光を反射し神秘的な、まるで月から降る雨のようなそれは圧倒的な物量を誇る水の呪術「月雨つきさめ」によりドラゴンの足が止める。


「伏見さん、大丈夫ですか!?」


「大丈夫。思っていた以上に硬くて、痛かった」


 心配して駆け寄ってきたニアに伏見は何とでもない事を表すように何度かドラゴンを殴った手を振る仕草をする。


「でも、なんだか行ける気がする」


 猫又である伏見は自然に存在する生命力である【気】を操ることができる。だがその技量はまだまだ未熟であるが、裏を返せば成長の可能性は無限に存在しているとも言え。

 そして、今の僅かであるが一撃を入れた。それによって得た経験から伏見はこの戦いを通して急激に成長している、ニアはそう感じた。そして同時にこう思った。「負けたくない」と。


「次は、私が行きます! はああぁぁっ!」


「ガアアアァァァっ!」


 白夜の月雨による圧倒的な物量よって足止めを喰らっているドラゴンだったが、倒すべき人間が距離を詰めてきたのを察知し全身の魔力を圧縮、爆発させる事で白夜の「月雨」を無効化し、右手に持っていた「黒鴉」に魔力を収束させそれは刀というには太い大剣と化し、それをまるで木の枝のように軽々と振り下ろす。


「…‥‥すぅ」


 巨大な大剣。それが迫ることによって自身を塗りつぶすかのように影が強くなる中で、ニアは焦る事無く一度、浅いながらも深く一呼吸し。


「っ!」


 全身を魔力で多い身体強化を発動させると、その動きは急加速し、次に現れたニアは二刀の小太刀を振り抜いており。


「‥‥グギャァ?」


 そんなニアの背後でドラゴンが振るった大剣が砂煙を巻き上げ地面を割るが、地面以外の感触が無く、振り返るとそこには残心を解き、再び剣を構えるニアの姿があり。

 ドラゴンは、降るおろすのではなく今度は横薙ぎに大剣を振るう。その速さは先程よりも速いものだったが。


(アニ!)


(うん!)


 大剣が当たる。その直前にニアの体を大剣が捉えるが、ドラゴンが感じた感触は人を捉えた感触ではなく霞を斬ったかのようで。


「グギャアアアァァッッ!?」


 そんなドラゴンの思考を遮るように僅かだが鋭い痛みが走り痛みの声を上げる。その背後には先ほどの焼き直しかのように、二刀の小太刀を振り切った状態で残心するニアの姿があった。


「ほお。女神の力を以って颯天の動きを模倣、それを更に自己流に改良したか」


 感心するような白夜が呟き。それは一部では正解だった。

 そして、再び二刀の小太刀を構えるニアに対して、ドラゴンは動かなかった。それは警戒心からだった。

 先程から二度ドラゴンは攻撃を受けた。そのどれもが致命傷には程遠い小さいが、ダメージとして残るものでそれによって起こる警戒心によって攻撃ではなく迎撃を選択するのは必然と言えた。


(上手くいったね、姉さん!)


(うん、そうだね!)


 アニの嬉しそうな声にニアも嬉しそうにそう返事をしながらも、その視線はドラゴンから外れることは無く再び小太刀を構える。


(まさか、憑依させてる対象を剣だけじゃなくて私まで入れられるかも、って思い付きだっただけなんだけど…ね)


 そう。ニアがしたのは剣だけに戦女神の剣(テュール)の力を憑依させるではなく、自分の肉体(からだ)までを一つの剣とした結果、驚異的な力をニアは手にし、その結果が白夜の言っていた通り、颯天の動きの模倣、更にそこから小太刀二刀流の動きに最適化したのだった。


「シッ!」


 ニアが一歩踏み込む。それと同時にニアの体の前に円錐状に成形された盾が展開されるとニアは一息に神速へと至る。

 その動きは人が目で追うには不可能な速さ。だが相手は人ではなく最強と呼ばれる存在、ドラゴンであり。


(! 姉さん!)


(分かっている!)


 達人であっても目で追うのは不可能に近い速さでありながら、ドラゴンは迎撃の構えを取る。その構えとは一歩動き、至極単純でニアの正面に立つ。それだけだった。

 だが、ニアにとってそれは最悪の迎撃だった。何故、最悪なのか、それは先程の二度の攻撃はドラゴンのわき腹を通り抜ける形で小太刀を振るったが、今その道は塞がれてしまった。

 では、軌道を変えればという訳にもいかなかった。


(どうする、どうする…?)


 踏み出す前であればまだ可能だが、今のニアにはまだ走り出した後に()()()()()()()()()()()()()()で。ドラゴンはそれに偶然か本能的かは不明だが、進路をふさがれてしまった。

 それによって起こるのは、身体能力を強化しているとはいえ神速へと至った状態で、強固な魔力外装を纏うドラゴンにぶつかれば、無事では済まない。かといって、減速してはドラゴンに狙われてしまう。


「やれやれ、詰めが甘いぞ? 雷足(らいそく)


「!?(!?)」


 その声が聞こえた瞬間、ニアの世界は更に加速した。それは神速を越えた先の領域、光の軌跡を残す雷速へと。そして気づいた。この脚力を強化した状態なら力を込めれば一歩だけ、されどその踏み込みで僅かだが軌道が帰られるという事に。

 だが、そうすれば片足はしばらく使い物にならないかもしれないが。ニアは選択した。


(これで、一撃入れる!)


 片足を犠牲にして軌道を変え、雷速の速さを小太刀に乗せドラゴンに一撃入れる事を選択し、一筋の閃光が空に一瞬の軌跡がドラゴンと交差した後、二刀の小太刀を振り切り残心ニアの姿が現れる。それと同時に両手に持っていた小太刀の刃が破砕音と共に崩壊すると同時に、ニアはがくりと膝をつく。


「グルルルッ」


 それとは対照的にドラゴンには一つの傷もなく構えを解いて振り返る。その表情は何処か相手を負かしたことに対して笑っているかのようだったが。


「そこ」


 静かで短い言葉。されどその言葉とはどっしりとした裏腹に、ドラゴンの腹部の傷に叩き込まれたのは【気】を圧縮しを乗せ、貫通力を高める為にさらに回転を加えた拳で打撃を撃ち込むと同時に圧縮していた気を送り込む。

 その仕組みは分厚い装甲を持つ戦車などに使われる徹甲弾と同じ仕組みで。先程思い浮かび、そう名付けた技。


「【気爆】」


 その瞬間、ドラゴンの魔力外装にひびが入ったかと思うとそれは全身へと連鎖し、やがて内部の【気】の爆発に耐え切れずに崩壊していく。


「グ、グガ、アアアァァァァァァァァッッッ!!!!!!」


 最後の咆哮を最後にドラゴンの魔力外装は崩壊し、内部から現れたのは魔力に呑まれる前と何ら変わらない、しかし申し訳なさそうにしている颯天の姿だった。


「悪い、世話を掛けちまったな?」


「私は今度で大丈夫。だから、今はニアの所に行ってあげて」


「…ありがとう」


 伏見にお礼を言うと颯天はニアの元へと歩いて向かう。


「ニア」


「は…ハヤテ…さん…?」


「ああ。俺だよ」


 まるで幻を見ているかのようなニアに颯天はそっと夢ではない事を証明する様に抱きしめる。


「ニア。お前の覚悟と想い、受け取った」


「‥‥あ」


 颯天はしっかりと言葉にした後にニアを抱きしめ、ニアは小太刀から手を離すとゆっくりと颯天の背中へと手を回すと、やがて縋りつく様にギュッと抱きつく。そんなニアに、颯天は()()()()()()()()ニアに告げる。


「これからは、ずっと一緒だ」


「‥‥はいっ、はいっ!…ぐすっ」


 その言葉を聞いた事で戦闘で張り詰めていた緊張の糸が緩んだのか、ニアは泣き始めてしまい。そんなニアを泣き止むまで颯天はずっとあやすように優しく背中をさすってあげたのだった。


「契約は成った、か」


 そして、少し離れた場所で見ていた白夜もニアと伏見。二人が楔の巫女となった事を知覚しており、自分と同じく存在にして颯天を支える仲間が増えた事を今ばかりは素直に喜ぶことにし、その光景を温かい眼差しで見ていた。

戦闘シーン、どうでしたでしょうか?正直、かなり苦戦しました…。やはり戦闘シーンとか描写は大変ですね。

さて、まあ、取り敢えずこれで伏見とニアの二人は楔の巫女になることが出来ました。

次の話はまあ、日常系の後にニアの試練の話を書こうかと考え中ですので、お楽しみに。

また、今回評価、ブックマークをしていただけた方、本当にありがとうございます!評価や感想、ブックマーク頂けるととても励みになり頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします。

皆様暑いので体調に気を付けてください。では、また次話で。


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