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生産職ですが最強です  作者: シウ
第三章 精霊の森編
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第三章 第八話 「難攻不落への潜入 中」

どうにか出来ましたので、前編の続きである最新話(中)を投稿です。

※2021年11月3日にて、次話の為に、最後の部分を少し加筆しました。

 日が傾き、オレンジ色の光が洞窟にも差し込み、洞窟の入り口に立っていた見張りの一人が欠伸をした。


「ふぁ、ああぁぁ…」


「おい、見張り中だぞ?」


「悪い、日が落ちてきて、交代の時間がそろそろだと思って、ついな」


「…まあ、分からないでもないが。今は気を引き締めておけよ?」


「仲間を取り返しに襲撃してくるかもしれないから、だろ?」


 今この洞窟に捕らえられている獣人達。奴隷商達に連れてこられた彼らはこの国と領土が接している隣国、カヴァリナ皇国の領土内にある「水精霊の森」と呼ばれる、長い間、帝国を苦しめた森から奴隷として連れてこられたのだった。


 そして、そうなればあることが起きる可能性があった。それは森に住む獣人達が仲間を助けるために襲撃してくる可能性だった。


「分かってるさ。けど、ここの場所は秘匿されてるし、もしそうなっても戦うのは俺たちじゃなくて、アイツだろ?」


「まあ、そうなんだがな。気持ちの問題だ」


 男の言葉に注意した仲間の兵士は肩をすくめながら前を見ると、延びる木の影を歩くように、一人の黒衣の男が立っていた。


「ッ!何者だ!?」


「いったいどうやってここに辿り着いた!?」


 手に持っていた、属性を宿らせた魔石を弾丸とすることで、対象に直接、または空に放つことで簡易ではあるが魔法が誰でも扱える武器、魔導式銃を構えるが、男は臆した様子もなく立っていたが。


「う、うあああぁぁっ!?」


「どうした!?」


「う、腕が…!?」


 視線を下に向けると、そこには自分達の影すらも飲み込む巨大な影があり、そこから無数の手が足を掴むのみならず、更に上へと伸びつつあった。


「は、離せ、離せっ!?」


「ちぃっ!」


 恐慌状態に陥った仲間を切り捨てる判断を下し、即座に魔導式銃を影に向け銃を撃つと、装填されていたのが光属性の弾丸だったようで、辺りに眩い光が生まれ、まるで光を嫌うかのように消え去り、それは隣の仲間を襲っていた影も消え去る。


「喰らえ!」


 自由になり、即座に次弾を装填し、この原因であると思われる男へと銃を撃つ。その弾丸は火属性で、撃ち出されると、火の塊となって突き進み、黒衣の男へと直撃し、男は火に飲まれるが、直ぐにその火は消える。まるで喰らってしまったかのように。


「化け物が!」


 男は諦めることなく、持っていたあらゆる属性弾を撃ち、それらは全て命中したが、最初の火と同様に数秒後には消え去ってしまう。


「おい、今すぐ応援を呼んでこい!はやく!」


「わ、分かった…!」


 腰が抜けていた同僚にそう言い、男は銃を撃ち続ける。本来、静かなこの場所でこれだけの銃声がすれば、そもそも驚きの声を上げた時点で建物から何らかの応援が来るはずなのだが、来る様子が一切ないことから先に襲われて既に全滅したと考えるほかなかった。

 であるならば、もはや洞窟に居る仲間に加え、配置されているアレを連れてこなければ拙いと考えていた時だった。


「なるほど。それがこの国の銃か…。面白い」


 短くだが、確かに黒衣の男と思われる声に、怪物だと思っていた男は思わず排莢と装填をしていた手が僅かに止まってしまい、更に視野狭窄によって正面にしか意識が向いていなかったせいで、下への疎かになっていた事もあり、一瞬にして影によって拘束される。


「ぐっ!?」


「視野が狭いですわね?」


 視線を刹那という僅かに下を見て視線を再び戻すとそこには、顔を隠していた布を取り払った、氷のように澄んだ淡い水色の長髪、黒と金色の瞳に加え、色っぽさを感じさせる赤い唇の女がすぐ目の前に立っていた。


「うふふっ」


「貴様、一体なにもっ!?」


 男の言葉は最後まで続かず、その口は女の唇によって塞がれ、どうにかしようと男はもがくが、頭の後ろに回された手によって動かず、やがて何とも言えない快楽と共に、四肢の先から徐々に冷たくなっていくのが分かり逃げようとするが、影と頭に回されたヒンヤリとした手によって逃れられず、接している唇から熱が吸い出されていき、次第に頭がボンヤリとし始め熱を失った指先、足先から氷に覆われ始める。


「‥‥ッ!…ッ!?」


 そん中でも、これ以上この女に吸われれば、氷漬けになって死ぬ。そんな未来が見えた男は最後の力で暴れていた時、背後から複数の足音が聞こえ、それも間近に迫っていると教え、同じように足音が聞こえたのか、女は唇を離すと視線を男の後ろへと向ける。


「もう、彼との時間を邪魔をしないでもらえない?」


「化け物め! 全員、一斉に放て!」


 その号令と共に男は死を覚悟したが、その身に弾丸が当たることも。そもそも銃声すらならなかった。なぜなら、そこには腕は羽。足は鳥、それ以外は人の女の特徴を持つ人面鳥ともハーピーとも呼ばれる無数の女によって銃を構えた全員を拘束していたからだった。


「うふふ、良いわよ。存分に頂きなさい」


「「「「「「うわぁぁぁぁ!!??」」」」」」」」


 女の声が聞こえたのか、人面鳥ハーピー達は一斉に男達へと群がると、男たちは悲鳴を上げるが敵わずに身に着けていた服を破ると、人面鳥たちはそのまま我先に男達と媾いはじめ、辺りに嬌声が響き始め、やがて最初に媾いが終わった人面鳥が退くと、時間を置かずに次が男と媾い始める。


「うふふ、それじゃあ。こっちも続きをしましょうか」


 その様子に女は笑みを浮かべると、再び男の口に自身の唇を重ねるとじわじわと熱を奪い、快楽を与えられ、やがて男はその意識を暗闇へと飲み込まれた。



「第一段階、クリア」


 颯天の目の前には、突如として倒れ起き上がることのない二人の兵士で、洞窟の中を含め、恐らく同様の光景が広がっていると思われた。彼らが倒れた理由、それは颯天が発動した範囲を洞窟の中を含めた、広域に展開した術。相手を強制的に眠らせ、あらゆる夢。今回は相手を眠った対象に快楽と恐怖を与える幻術の一つにして奥義の一つである「夜魔夢幻獄界(やまむげんごくかい)」の影響だった。


「下手に殺して、後々面倒ごとになられても困るからな」


 ないとは思うが、ケルヴァス帝国側がカヴァリナ皇国側が密かに潜入させ帝国兵を殺したと、そもそもは自分たちのせいだがそれをカヴァリナ皇国側のせいだと喧伝し、諸外国の貴族を巻き込んで有利性を取りに来る可能性も否定できない。

 そして、そのために眠った状態で兵士たちが後始末を兼ねて殺される可能性もある。故にその可能性を潰す方法としての手段がまず見張りの兵士たちを全て眠らせ、幻術に掛ける事だった。


「さて、手早く済ませるか」


 倒れている兵士たちを物ともせずに、颯天は洞窟の奥へと伸びている下り道を進んでいくと天井は徐々に高くなり、やがて少し開けた場所に出るとそこには、高さ凡そ十メートル越え、横は凡そ十五メートルほどの巨大な金属製の門があり。その両端に倒れている兵士の姿があった。


「これは、随分と近未来な門だな…」


 そう呟きつつ、颯天は門に触れると、どっしりとした純正の金属によって作られたものだからこそ出せる重みがあった。


「…使ってみるか」


 そう呟くと、颯天はいつの間にかステータスプレートに表記されていた、解析眼を発動させると。


『オルテライト複合門:高い魔力耐性を誇るラナイ鉱石と物理耐性の高いオルティト鉱石をそれぞれ併せた門。古代文明の遺産』


 と、面白い情報が颯天の前に表示され、視線を横の洞窟に向けると。


『キゲル地下遺跡へと通ずる洞窟』


 と先ほどとは違った情報が颯天の視界に表示された。確かにこの洞窟は地の下に存在しているので、地下遺跡というのも間違ってはいなかった。


「ふむ。なるほどな」


 一人納得しつつ颯天は「霊眼」を閉じるのと同じ方法、必要なくなった電源を落とす。そんなイメージをするとつい今しがたまで視界に表示されていた情報はなくなり、元の視界に戻っていた。


「こいつは、案外と使いやすそうだ」


 霊眼、そして遠見と合わせて使えば面白そうなことが出来そうだ。そんな事を内心で考えつつ、颯天は扉へと手を当てる。本来であれば、扉の両サイドに何か、六角柱の鍵とぼしきものを差し込む場所を見つけ、倒れている兵士達が持っているのも知っていたが、出来る限る証拠を残さない為に、颯天は敢えてそれを選択せずに、門。

 その一部に自身の魔力を流し込み、面に馴染ませていく。が魔力耐性が高いお陰でなかなか颯天の魔力が浸透していく様子が無かった。


(流石は高い魔力・物理耐性を誇る扉だけあるが‥‥これはどうだ?)


 颯天は、先ほどよりも多くの魔力を今度は面ではなく、点。一点集中へと切り替え突き破るように、一気に浸透させる。

 すると、先ほどの厄介さが嘘のようにあっさりと魔力を阻む扉を貫通してのけ、そこからは早かった。


 空いた穴を中心に中から魔力を浸透させていくと、あっさりと颯天の魔力は浸透しきり、颯天はそのまま両手の指先を一点に合わせ、左右に開く。

 すると、見ただけで壊せない。そう感じさせる門がまるで粘土のように形を変え、やがてそこには人が一人余裕で通ることが出来る隙間が出来上がり、颯天はその隙間を通り抜けると振り向き、開いた穴を塞ぎ終えると改めて辺りを確認する。辺りの石壁には区画こそ別けられているが、その全てに檻があり、その中に入れられている種族は様々で、まさに監獄と相応しい形相を表していた。


「なんとまぁ…」


「…誰だ?」


 口から思わず零れ出た、人の業の深さに思わず呆れが多分に含まれた颯天の言葉に、反応してか声が聞こえ、視線を向けるとそこには歳は15.6ほど。しかし歳以上に豊かな胸と筋肉が付いた均整取れたプロポーションをボロボロの服がどうにか隠している狼の耳、尻尾を持つ少女が檻の中にいた。


「お前たちを助ける依頼を受けた者だ」


「なに?」


 そう言い、颯天は檻の中にいる少女に近づくも少女は颯天の言葉を信じていないのか、疑うような眼で見るが、それに構わず颯天は少女の前にしゃがみ込む。


「緑多き大地」


「…どこでそれを知った?」


「悪いがここじゃあ話せない…どうなんだ?」


「‥‥駆けるは我が風」


 颯天が口にした言葉が効いたのか、少女は対となる言葉を口にした。


「どうやら偽物じゃないらしいな」


 確認を終えた颯天は、そのまま立ち上がると格子に手を当て右へと動かすと格子がまとめて変形し、あっと言う間に少女が通れるだけの隙間が生まれる。


「私が力づくでも壊せなかった格子をこうも簡単に‥‥…一体、何者だ?」


「それは、全員を集め、脱出できたときに教えてやるよ。それより、早く助ける為に手伝ってもらえるか?」


「…いいだろう」


 少女の問いに、颯天は僅かに悪ガキのような笑みを浮かべながら立ち上がり、そんな颯天を見た少女は、そう答えると立ち上がった。


「よし。救出を始めるか。と、呼び名が無いと不便だな。何か愛称かあだ名みたいなのはあるか?」


「もちろんあるが、私だけが教えるのは駄目だ」


「まぁ、そうだろうな。なら取り敢えず俺の事は‥‥取り敢えずシャドウとでも呼んでくれ」


「シャドウ…?」


咄嗟に頭に浮かんだのは名字の一文字、影無の影を英語読みしただけという手の抜き具合満点といった名前で、少女も流石に訝しげに颯天を見てきた。


「まあ、名前の一部を変えたものだから、全部が間違いって訳でもないぞ? それで、俺も呼び名を教えたんだから、そっちも教えてくれるんだろ?」


「まあ、そちらが名乗ったのであれば、私も名乗らない訳にはいかないか。私の事はフェンと呼んでくれ。私もお前の事はシャドウと呼ぼう」


「フェンか、分かった。じゃあ互いに呼び名も分かった。時間も惜しいから次の檻に行くぞ」


 そう言うと颯天は狼の少女、フェンを連れて無数の檻がのある監獄を進み始めた。


どうでしたでしょうか?少しでも楽しんで貰えると幸いです。また、今話に関してですが。最後の部分を書き直す可能性があります。ご了承下さい。

さて、次で色々と身の回りが書こうと思っていますので、月一投稿はどうにか維持していきますので、次話を楽しみにしていただけると幸いです。

それでは、皆様。また次話で

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