第三章 第五話 「潜入」
ふぅ。どうにか3日ほどかかりましたが、どうにか出来ましたので、投稿です。
ゲルトゥーア帝国。
その国はカヴァリナ皇国の西方に位置し、主な産業としては他国にない奴隷の売買だが、もう一つ国を支える魔導産業と呼ばれるものがあった。
魔導産業。それは魔法が使えない者が魔法を使える者と同等以上の力を持たせることが出来る魔法の力を内包した人工武具の総称である。そして帝国はそれらを作り出す産業が活発で、また他国にはない技術ゆえにその影響力は絶大であり、ゆえに帝国は大陸随一の領土を誇ることが出来ているといえる所以だった。
しかし、魔導産業が大きく発展したその代償として、帝国では排気されるガスによって空気、水、大地が汚染され、皇族・貴族を除いた国民は常にその汚染された空気に苦しみ、今では限られた範囲にのみ自然が残る、大陸の中で最も緑の少ない国としても有名だった。
そして現在、陽が落ちそろそろ月が上がるであろう時刻、帝都に東西南北にある門の内の東側に存在する豊富な水と豊かな緑が存在する隣国であるカヴァリナ皇国領である「水精の森」の方角より一組の団体が帝国の首都である帝都へと帰還を果たすために門へと姿を現し、その一団を門を守る衛士は門の上より遠方を見ることが出来る魔導具によって確認した。
「兵士たちが戻ってきたぞ! 門を開けろ!」
門の近くに設置された管を通し、内部へと声を送り数秒後。重々しい音を立てながら門が上へと上がっていき、帝都内へと続く道が開かれる。
そして、それからおよそ十分ほどして、「水精霊の森」へと向かっていた帝国軍の一団が門へと辿り着き、兵士たちの出迎えに降りてきた衛士は兵士たちの様子に驚きを隠せなかった。
「っどうしたんだ!? いったい何があった!?」
降りてきた衛士たちが驚くのも無理はなかった。何故なら、彼らの装備は激しい戦闘だったことを物語るように傷つき、中には鎧の意味をなさないほどに破損した物も存在し更には出立した時と比べ人数が合わなかった。がしかし幸いにしてこの場へとたどり着いた兵士たちは傷こそ負っていたが、命を落とすほどの重症の者はいなかったが、それでも傷の重いものは医療班によって搬送されていく中。
「ピッグス殿!?」
兵士たちの中央から元は豪奢であったであろう、しかし今は土汚れなどで汚れ、ボロボロに近い服、そして何より体は肥えているのに、脂ぎった顔がげっそりやせ細ってしまい、歩くのも辛そうにしている一人の男、皇帝より兵を与えられ今朝「水精霊の森」へと部隊を率いて出立した奴隷商人ピッグスが姿を現し、衛士たちは一様にその様子に驚きながらも礼をするが、ピッグスは礼を返すことなく、口を開いた。
「今すぐ、皇帝陛下へと繋ぎを頼みたい」
「い、今すぐですか…?」
「ああ、我らがこのような状態になってしまった原因を、すぐに陛下へとご報告しなければ」
「し、しかし…陛下は現在…」
貴族たちとの晩餐会に参加されているはずです。という兵士の言葉は、ピッグスの叫びのような声によって打ち消された。
「そんなことはどうでもいい!! 急ぎ報告しなければならないんだ! 『皇国の騎士』が既にあの森へと派遣されていたのだと!!」
「「!?」」
皇国の騎士。その単語を聞いた瞬間、兵士の顔つきが青色へと変わった。ゲルトゥーア帝国は過去に幾度か隣国であるカヴァリナ皇国へと進行を企てたが、「水精霊の森」のせいで大きく迂回するしか方法が無いなか、一度のみカヴァリナ皇国へ侵入出来たことがあったが、迂回によって物質や体力を消耗した帝国軍は『群』の力を活かせず、『個』の力が強く、騎士と何より『四騎士』と呼ばれる者の一人によってカヴァリナ皇国の騎士たちによって悉く撃退された。
しかし、一度だけ撤退する際に帝国軍は何人かの捕虜を捕まえることに成功し、戦利品として連れ帰ろうとしたのだが、その情報を掴んだ騎士たちが撤退する帝国軍を猛追撃し、逆に帝国内まで侵入されるという事態に陥ったことがあり、それ以降帝国内ではカヴァリナ皇国の住人を攫えばカヴァリナ皇国の騎士たちの逆鱗に触れる。そして帝国内では『皇国の騎士』=『悪魔』という共通の認識が生まれた。故に今回の事がどれだけ危険性なのかを衛士は理解した。
「わ、分かりました! 今すぐ王宮へと伝えて参ります!!」
ピッグスにそう言い残すと、衛士の一人が王宮への連絡のために門の近く、そして帝都各所にも存在する駐留所へと駆けていく様を見て、ピッグスはただ見ているだけだった。
そして、ピッグスが東門にて王宮からの返事を待っているその頃、颯天は『幻術』朧霞によって疑似透明化することによって、誰にも気づかれることなくの帝都内部へと潜入しており、一目の付かないところに移動し、透明化を解除し一息つく。
(取り敢えず、潜入に成功したが‥‥どうやらこの国は思っていた以上に空気が汚いようだな…)
颯天が思わずそう内心で愚痴をを言ってしまうのも無理はなく、帝都へ近づいて行く毎に空気に違和感を感じていたが、ここは外部以上に空気は汚れており、周りを見ると通行人のほとんどが慣れた様子で口元を何かしらで覆っている事からこれがこの国の普通なのだと。
(ニアたちが来なくて正解だったな。それに、これじゃあ地球と変わらないな)
異世界なのに、地球と同じ公害が存在することに颯天はそんなことを思いながら颯天は汚染された空気から身を守るために颯天は首周りの襟をを鼻の辺りにまで上げ。そのタイミングで、自身の体内に入った有害物質を分解し、改めて汚れた空気が入らないかを確認した後、まずは東門より離れるために解除していた朧霞を再び発動させると中央へと移動を開始した。
移動を開始しておよそ十分後、颯天は帝都の中心部へと辿り着き、辺りを見回すと地球ではごく普通に存在するが、恐らくこの世界では珍しいであろう機械仕掛けの道具がいくつか見受けられ、更に見ていくと、それほど数が多いわけではないが、長い・短いの二種類の筒状の武器と、その弾と思われるものが売られ、更に各店の客と思われる人たちはそれをごく普通に手に取りいろいろと店の人間と話しており、それが他の店でも同様であったことからアレがこの国では普通に存在しているという事は疑いようもない事実だった。
(…なるほど、どうやらこの国では『銃』と地球でいう科学文明に近い技術があるようだな…いや、魔法を使っている可能性もあるから魔法と科学の融合、魔法科学文明が適切か?)
内心でそんなことを考えながらも、颯天は足を止めることなくその足を北へ。すなわちこの国の王がいる王宮へと足を向ける。
整備された道を歩くはじめて数分後には、まだ距離こそあるが離れていても分かるほどの王宮が颯天の視界に映った。
(あそこが、この国トップがいる場所か)
普通に見た作りとしてはごく普通の地球の欧州などに存在する王城と言った感じで、特に変わったところは無さそうだが、視点を霊眼の透視へと切り替えると、そこには王宮全体を包み込むようにオーロラのような光の膜のようなものが存在していた。
(あの膜のせいか透視でも見えない、か)
あの光の膜は、魔法や特殊な眼を妨害する機能を有しているのか、城の内部までを見通すことは出来なかった。
(まあ、いい。今回は救出が目的だからこっちは一旦後回しだ。今は取り敢えずは奴の店で情報を集めることにするか)
城の内部を見ることを早々に切り上げると、颯天は一度周囲を確認した後、アレがあることを確認し、ピッグスの店がある帝都の西側へと向かうためにもと来た道を通り中央へと戻った。
今話は、潜入する場面を書きました。出来れば次話でこの場面に至るまでの話を少し入れれたらと思いますので、気長にお待ち下さい。誤字脱字やおかしな箇所などありましたら、ご報告頂けますと幸いです。
それでは、今話はこれにて失礼します。皆様、また次話で。




