第三章 第二話 「今日と一昨日」
先日投稿したものは、色々と後から見て雑すぎましたので、削除しまして、今話の第二章の最後のシーンから先日のあの戦闘シーンに繋がるまでの部分を出来る限りの書き出したものです…投稿です。
カヴァリナ皇国南部。そこは豊かない緑が多い茂る森林が半分を占めており、更に森の何処かにある泉には水を司る精霊の母である第精霊が居るとの伝承は、カヴァリナ皇国が建国される以前より存在していた。
「それが、この「水精霊の森」なんだ」
「なるほど」
そして現在、颯天はアルレーシャと共に馬に乗りその精霊が住むとされる泉がある森「水精霊の森」を進みながら、その歴史をアルレーシャから聞いていたのだが、説明を終えるとアルレーシャは申し訳なさそうに颯天へと話しかける。
「すまない、颯天。君を付き合わせることになってしまって…」
「気にするな。それに水精霊直々の招待を断るつもりも。理由も無いからな」
「ありがとう」
颯天の気にするなという言葉にアルレーシャは改めて颯天へとお礼の言葉を言うと再び前へと視線を向ける。
(にしても、大精霊、か)
それは、二日前。颯天がアルレーシャの部屋と呼び出され、訪れた夜の出来事だった。
部屋の中で待っていたアルレーシャ、その時の姿はガウンこそ肩に掛けていたが、その下に身に着けていたのは絹のような材質で、丈は膝上、更に前開きの胸元に白いリボンをあしらわれ清楚な印象を与えるネグリジェを身に着けたアルレーシャが立っていた。
「‥‥‥‥その、あまり、見ないでもらえると、助かる」
「わ、悪い!」
思わず、目を逸らさずに見てしまっていたことを謝罪しつつ颯天は急いで視線を逸らすが既に記憶の中にアルレーシャの姿は色濃く焼き付いている事を自覚しながら、思わずにいられなかった。
(なんで、そんな恰好をしてるんだ!?)
颯天が部屋を訪れるという事を、来るように言った本人であるアルレーシャが知らないはずないと颯天は考えていたのだが、しかし同時にアルレーシャも混乱していた。
(待たせるのは、と思って部屋へ入れてしまったけど、どうすればいいの!?)
戦いであれば勇猛にして敵を倒し、民の前では守護、導く王であるアルレーシャだったが、今この状況において慌てる様子はごく普通の少女と変わりなかった。
そもそも、アルレーシャが身に着けているネグリジェ、これはアルレーシャが用意したものではない。王の私室ということで、アルレーシャの部屋には湯あみができる設備がありそこで颯天を呼ぶ前に湯あみをしたのだが、普段であれば湯あみを終える頃には颯天を案内するセバスの妻にして、アルレーシャ専属メイドであるアミルが着替えを用意しているのだが、今回は下着とナイトドレスではなく何故かネグリジェと、申し訳程度といった感じでガウンが置かれているのみで、体を冷やすわけにも、そして何も着ないわけにもいかないとアルレーシャは覚悟を決めて身に着けた直後、颯天が来てしまい、部屋に入れてしまったのだった。
「「‥‥‥‥‥」」
そして、起こる両者無言の状態。そんな中、どうにかアルレーシャの姿が視界に入らないように視線を逸らしていた颯天が沈黙を破るために口を開く。
「えっと、それで‥‥どうして俺を呼んだんだ?」
「あ、ああ。その、少し颯天と話したいな、と思って」
「そ、そうなのか…えっと、そこに椅子に座っても?」
「あ、ああ。構わない」
互いにぎこちないながらも、どうにか会話のドッチボールをしつつ、颯天は椅子に座るが、アルレーシャはその場から動く様子がなかったので、促すことにした。
「アルレーシャ。俺だけ座っているのも申し訳ないから、できれば、座ってもらえないか?」
「そ、そうだな!」
颯天の提案が渡りに船だったのか、それともこの状況に混乱してなのかは颯天にもわからなかったが、アルレーシャは近くにあった椅子へと座り、そこでようやく少し落ち着いたのか互いに小さくだが安堵の息を吐いた。
そして、一息ついたことで落ち着いたと判断した颯天は踏み込んだ質問を、アルレーシャへと投げかける。
「それで、俺一人を呼んだってことは、何か俺が関係する事が出来たのか?」
「ああ」
そして、幸いなことにいったん一呼吸がつけたことと、颯天が見ないようにしているお陰で落ち着くことが出来たアルレーシャは、少し間を空けのた後、颯天を呼んだ要件を口にした。
「実は…颯天に会ってほしい方がいるんだ」
「会ってほしい方?」
アルレーシャの会ってほしい方、と言われたが颯天には思い当たる人物は居なかったので、視線で先を促すとアルレーシャは口を開く。
「ああ。実はその方は既に、この場に居られるんだ」
「ここに、居る?」
颯天は咄嗟に簡易索敵で気配、魔力を探ったが、気配、魔力の反応はなく、単に居ないのか、それとも簡易索敵を欺けるほどの実力を持つ存在か。
(いや、まさか…)
頭の中に浮かんだ予想に、颯天は半分否定しながらも狭い範囲の索敵に適した魔拡感知を使い、部屋の中に居た何かを察知すると同時に、姿を隠していた術式が解除されたのか、それとも解いたのかは不明だが空間が揺れたかと思うと隠れていた存在が実体化する。
「なっ!?」
「ふふふ、まさか私の術を乱しますか。流石ですね、異なる世界の人」
それが目の前に現れた瞬間、颯天は驚愕し、一方の術を破られた美女はどこか嬉しそうに笑みを浮かべつつ、アルレーシャへと視線を向ける。
「どうやら、いい人と巡り会えたようですね、アルレーシャ?」
「い、いい人…」
颯天たちの前に姿を現したのは白い肌、淡い水色の髪と深い知性を感じさせる髪と同じ色の瞳。そして淡い水色のローブを身に着けた絶世と呼ぶに相応しい美女がそこに居た。
そして、姿を現した美女の言葉にアルレーシャはどこか気恥ずかし気に颯天をちらちらとみていたが、颯天はそれどころではなかった。
(これが、精霊。いや、その上位である大精霊か)
それは、容姿も絶世という言葉が似合うと適していたが、颯天が驚愕したのはその魔力の厚みだった。そもそも、魔力とは年月を経るごとに厚みを増していく。例えるならば、樹木の年輪が近いものなのだが、それ以外にもう一つ、魔力の厚みを増す方法があるのだが、それは一旦置いておく。
(なんて厚みと濃さなんだ)
颯天が見た目の前の精霊の魔力の厚みは軽く見積もっても五百年は超えており、今まで颯天が感じたことのないものではあった。がしかし颯天は目の前の精霊よりも厚く濃く、そして重さを感じさせる魔力を颯天は知っていた。それは、父である宗龍の魔力だった。
精霊を超える時点で人外レベルなのだが、それを息子である颯天が知らないはずはなかったが、父である宗龍と目の前の精霊の魔力の厚みと濃さはそもそも方向性が違っていた。
宗龍は幾つもの戦いにより磨かれた魔力、しかし目の前の精霊は長い年月を経たことによって鍛えられた魔力だった。
「ふふ、良い眼を持っているようですね」
「!」
「ふふふっ」
颯天が自身の魔力の厚みに気が付いた精霊はしかし、その様子はどこか子を見守る母のように嬉しそうに見守っていた。が、颯天は少なくともアルレーシャから見てもバレないように見ていたのだが、それを一瞬で見抜かれたことに颯天の驚きは人一倍だった。
それから少し時間が経ち、場が落ち着いたタイミングで颯天たちの正面の椅子に腰かけると、精霊は口を開いた。
「では、改めまして。まずは自己紹介をしましょう。私の名はローレライ、真名はヒュドール。この皇国の南方、あなた方が人が「水精霊の森」と呼ぶ森の泉に住まう水の大精霊です」
ヒュドールと自らの真名を乗った大精霊。それに対して颯天はある疑問を投げかけた。
「そんな簡単に真名を明かしていいのか?」
「もちろん、明かしてはいけません。ですので、普段はもう一つの名であるローレライを名乗っています。ですが、アルレーシャがここまで信用しているのです。であるならば真名を名乗らないのは失礼と思いましたので。それに、これでも人を見る目は確かに持っていますので。ああ、ですが呼ばれるときはローラと呼んでください」
「分かった。それとそっちがしたならこっちも名乗らないとな」
深い知性を感じさせながら、最後は少しばかり茶目っ気を感じさせる言葉に、颯天はどこか困ったような表情を浮かべた後、自らも名乗る。
「俺の名前は影無颯天。アルレーシャから聞いているかは知らないが、この世界に召喚された勇者に巻き込まれて召喚された一人だ」
「勇者がこの世界に召喚されたことは確かに存じていますが、巻き込まれた、ですか。それ程に強大な力を持っている貴方が?」
「事実だからな」
颯天の言葉に大精霊ヒュドールは面白そうに口元に手を当てて笑ったが、事実に変わりがないのでもはやあの時のことを割り切っている颯天はすまし顔で受け流すと、一歩踏み込む。
「それで、俺を呼び出した要件は何なんだ?」
「貴方を呼び出した要件を話す前に、貴方は彼女が持つ剣、その本来の姿を知っていますか?」
「ああ。火・風・水・大地の四大属性が宿りし聖なる剣である《光り輝く黄金の聖剣》。それは真の姿を覆う二重の鞘の一つで、本当の姿はもう一つの枷である鞘、《光の加護受けし鞘》。この二つの枷を解くことで真の姿である【明日を照らす絶剣】となる事もな」
「そうです。明日を照らす絶剣≪デュランダル≫は、私を含めた他の四大属性を司る大精霊の血も混ぜ作られています。そしてその加護により、使い手によっては物質、非物質のみならず空間、果ては神すらも殺す事が出来る武具として、私たちは明日を照らす絶剣をもう一つの名で呼んでいます。神殺具と」
「つまり、ヒュドール。いや大精霊ローラ。あんた達は、神を殺そうとした。という事は、つまり」
そう口にした瞬間、颯天の頭の中に自分たちと敵対しようとしなかった、現在は王宮の一室で眠っているはずのアザゼルの姿は浮かび、颯天が誰を思い浮かべたのかを理解したのだろう、ヒュドールは首を縦に振った。
「ええ。今あなたが想像された通りです。アザゼルは、かつて神を殺そうとした我らの同志です」
「…! …テ!・‥‥ハヤテってば!」
「…っと、すまん。聞いてなかった」
「ぼーっとするなんて颯天らしくもない」
「悪い。少し一昨日のことを思い出しててな」
「一昨日…あ」
颯天の言葉を聞いた瞬間に、出来事を思い出したのかアルレーシャは赤面して口を閉じてしまい、一昨日と似たような状況に陥りかけたが、颯天の前方に緑が広がる。
「アルレーシャ、あれがそうなのか?」
「あ、ああ。あれが、「水精霊の森」だ」
「自然が豊かな森だな」
まだ遠いためにそこまでわからないが、それでも遠目から見ても青々しく木々が幾多もあるさまは、自然の豊かさを伝えるには十分だった。
「ああ。私もここに来るたびにそう思うよ」
そして、颯天と同様にその有様を久々にみたアルレーシャも以前と変わらない森の様子に何処か安堵の表情を浮かべつつ、二人は進んでいく。
「あ、そうだ。アルレーシャ。着くまでのわかる範囲でいいから「水精霊の森」について教えてくれ」
「別に構わないけど、いくら王族である私もそこまで詳しいことは知らないからな」
「構わないさ」
こうして、二人は冒頭のやり取りをしつつ森の奥へ進んでいったのだった。
なかなか、今話は良い感じに書けたのでは、と思いましたが、やはり先日投稿したの話を読んでみて、深夜テンションの勢いで書くのは自分はダメだな、改めて思いました。
さて、それは投げておきまして、今話は前書きにも書きましたが、既に削除しましたが、先日投稿した戦闘シーンに繋がるまでの話を書き出しました。そして、現在先日投稿した話をほぼほぼ改稿という名の書き直しをしています。早ければ今年中に投稿、上手く行けばもう一話投稿をしたいなと思っていますが、そこはまだ予想が出来ていませんので、更新されたら、ラッキーと思っていただけると幸いです。
長くなりましたので、今話はこれにて失礼します。読者の皆様が少しでも楽しんで貰えると嬉しいです。また感想や評価、または誤字脱字報告などを頂けると大変嬉しいので、宜しくお願いします。
では、失礼します。皆様、また次話で。