第二章 第三十三話 「今後の行方は」
くそぅ…頑張りましたが微妙に間に合いませんでした。
投稿です。(前回のは、今後に修正を考えていますが、まだ未定です。申し訳ありません。)
「っとまあ。こんな所だな」
「へぇ~、そんな事があったんですね?」
説明を終えた颯天は、手に持っていたコップに入った果実水を一口飲み、ニアはそんな颯天に相槌を打つ。
ニアを正気に戻した後。颯天達が王都へと帰還した。
その頃には王都を襲ってきていた魔物は全て討伐されており、アルレーシャは直ぐに後処理の為に王宮にて指揮を執ったお陰で迅速に終わりを告げ。
颯天達は王都防衛を祝しての国王であるアルレーシャからの招待で王宮に来たのだが礼服など持ち合わせていなかった為に颯天はタキシードを、そして伏見とニアはそれぞれドレスを貸してもらい祝宴に参加。そして現在、一息つく為に颯天達はテラスへと移動し、結界内部で何があったのかを外で戦っていた伏見とニアへと説明していたのだった。
「大変だった?」
颯天の様子を伺うように尋ねてきた伏見に、何か意味があるのではと考えはしたが、嘘を付く必要は無いかと考え、颯天は伏見に素直な感想を口することにした。
「まあ、それはお互いに大変ではあったと思うが…それがどうかしたのか?」
「‥‥部屋で、労う」
「あ! 伏見さんズルいですよ!と言うか二人だけの空間を作らないで私も混ぜてください!!」
そして伏見から帰ってきたのは、羞恥心で僅かに顔を赤く染めながらも颯天を見上げる伏見の姿で、その様子に颯天もドキドキしたが、傍らでニアも本気ではないにしろ抗議した事に加え、先に先約があったため首を横に振った。
「ありがとう。けど悪い。実はこの後アルレーシャに呼ばれてるんだ」
「アルレーシャさんに、ですか?」
「ああ。後で人を寄こすって言ってな」
颯天達を招待した張本人でアルレーシャは祝宴の挨拶の後、使いの者を出すと颯天に言った後からその姿はなく、恐らく裏の方で何かをしているのかもしれなかった。
(まあ、予想は容易につくがの)
「うん? 何か言ったか白夜?」
(い~や? 何も言っておらんぞ?)
「そうか?」
白夜が何か言った様な気が颯天にはしたのだが、白夜が違うというのであれば勘違いだったのかと思いながらコップに残った果実水を飲み切った時、テラスに初老の、と言っても芯が通ったかのようにピンとした姿勢と正に執事と言った雰囲気の男性が姿を現した。
「申し訳ありません。ハヤテ様はこちらにおられますか?」
「ああ。俺が颯天だが…もしかして貴方がアルレーシャが言っていた?」
「はい。女王陛下から貴方様のご案内を任されました、セバスでございます」
胸に片腕を当て。洗礼された動きで頭を下げるその仕草は正にTHE執事と言えるものだった。
「それじゃあ。二人は先に宿に戻っていてくれ」
「‥分かった」
「分かりました!」
(白夜は)
(二人の邪魔をするのも、わしだけ抜け駆けも年長者としていかんからの。ワシも二人と一緒に戻っておるよ)
(悪いな)
(なに、約束を忘れぬのであれば構わぬよ。ではの)
そう言うと白夜は伏見たちと一緒にそのまま宿へ戻る為に歩いて行き、三人を見送った後、颯天はセバスと名乗った執事へと向き直った。
「お待たせしました。行きましょう」
「分かりした。ではこちらです」
セバスに案内され、一旦祝宴が開かれているフロアを通り抜けそのまま廊下へと出た時、ふと気になる事があり颯天はセバスに尋ねる。
「そう言えば、アルレーシャは何処にいるんですか?」
「女王陛下はお疲れの為、現在は寝室にて休憩をされております」
「大丈夫なんですか? まだ数日は滞在する予定なのでまた後日でも」
「お気遣いありがとうございます。ですが大丈夫です。陛下が私に貴方様をお呼びになさった際には既に休憩を取られた後でしたので」
そんな事を話しながらもセバスの動きに一切の迷いが無く、階段を上がる仕草一つをとっても動作一つ一つが熟練を思わせる程に洗練されていた。
と、そうこうしていると目の前に扉が見え始め、部屋の前でセバスは足を止めた。
「到着いたしました。こちらでございます」
「すみません。ありがとうございます」
「いえいえ、私は自らの職務を果たしたまででございます。では私はこれにて」
そう言い颯天に頭を下げた後、セバスは先ほど来た道を戻っていき、周囲には颯天だけが残される。寝室で待っている。部屋の前に自分一人。周囲に人がいない。
「…まさか…な」
これらの情報からある推測が颯天の中で首をもたげるが、気のせいだろうと颯天は頭を掻くと、何時までも廊下に立っている訳にも、そして待たせる訳にもいかないので、颯天はそのままドアへと近づき、ノックをする。
「アルレーシャ。ハヤテだ。その‥‥入っても大丈夫か?」
「…どうぞ。入ってください」
僅かな間の後。微かに聞こえてきたアルレーシャからの返事を聞き、僅かに合った間に違和感を感じながらも、颯天はドアを開け部屋の中へと入る。
(灯は、付けてないか)
灯りを付けていない部屋は暗かったが、普段からの癖で片眼を閉じた状態で部屋に入ったお陰で全く見えていない訳では無く閉じていた片眼が暗さに慣れる。そして部屋の奥の月の光が差し込む窓辺付近に人影が見えた。
「よお、呼ばれたから来たぞ?」
「ああ。すまないな。呼び出したりして」
「いいさ。けど呼ぶ出すなんて、一体どうしたんだ‥‥ってちょ、おま、その恰好!?」
開いていた眼も暗さに慣れ、月の光のお陰で窓際の椅子に座ったアルレーシャの姿が見え始めた事によって見えたのは、ガウンこそ肩にかけていたが、その下に身に着けていたのは質感的には絹とおぼしき材質で丈は膝上、前開きの胸元に白のリボンの配いが清楚な印象を与える。
しかしそれによって視線が胸元へ誘導され、アルレーシャの胸ほ膨らみが見える様に強調された結果、妖艶さをも内包した白のネグリジェを身に着けたアルレーシャの姿だった。
* * *
【王の間】にて【魔王】の姿となったステラ・ルシファーは堕天使の総統アザゼルを解放する為にカヴァリナ皇国へと送った魔族、キィラからの報告を直接聞いていたのだが、魔族最強である【魔王】を前にしたキィラは尊敬、恐怖、畏怖が入り混じった何処か硬い表情で視た全てを伝えた。
「以上が、私が視ました全てでございます」
「そうか…キィラ。報告ご苦労だった。下がって休むが良い」
「はっ!」
下がり休むように伝え、キィラはそのまま広間より退出し、その時を見計らったの如く、実際見計らっていたのだろう、老練というべき風格を身に纏った赤を基調とした貴族服を身に着けた初老の老人、クルーク・バティンが姿を現した。
「クルーク。今回の件だが」
「はい。陛下が考えられていた事は当たっております。巧妙に隠されておりましたが、キィラと共にカヴァリナ皇国に向かったはずのエッランスの骸が見つかりました」
「そうか。ではやはり」
「はい。骸を調べたところ。外傷は心臓部分の焦げた跡のみという事から背後より一息に刺殺されたと見ていいでしょう。そしてその相手は」
「天使、か」
「はい。まず間違いはないかと」
ステラの言葉にクルークは頷いた。【天使】それはステラ達魔族が真に敵対する神の先兵にして魔族の天敵ともいえる存在だった。
しかし何より問題なのは、エッランスに化けた【天使】がアザゼル解放の為にカヴァリナ皇国へと向かってしまったという点だった。
「ふむ。クルーク。どう思う?」
「推測が混じったものとなりますが?」
「構わん」
「では。 私の推測ですと、恐らくアザゼル様はご無事でしょうカヴァリナ皇国の王族には現在も【竜】の血が流れております。そして【竜】は神を以てして御する事は困難。そして彼らの先祖である巫女が何の対策をしていなかったとは考えられません。であるならば何らかの代を重ねるごとに植え付けられた感情を無効化、または弱化させ打ち破ると言った可能性が高いと私は考えますが、もう一つ私がそう思う理由があります」
「ほお。その理由は?」
「以前陛下の前に立った人間の存在でございます。私の勘なのですがあの人間が打ち破るための鍵となる。そんな気がするのです」
「ふん。勘とはな。だがそうだな。あり得るやもしれぬな」
クルークの言葉に僅かな笑みを浮かべながらもステラは否定はしなかった。それはステラ自身もあり得ると感じていたが故の事だった。
「して、陛下。今後はどのように?」
「ふむ。少し様子を視るとしよう。そして期を見計らい一度あの男と言葉を交えてみるのも良いのではないかと思っておる」
現状、魔族だけでは神に勝てない。これは覆しようもない事実だ。故にステラは犠牲を、罪を重ねようと今回神に反逆し封印された【堕天使】達の開放、協力を得ようとしたのだ。
何せ。神によって魔族は世界を滅ぼす敵と認識されている為に他の種族と手を取り合う事出来ない。だが、あの人間であればもしくは、とステラは考えていた。
「では、準備だけでも?」
「ああ、頼めるか?」
「承知いたしました」
そう答えるとクルークの姿は既に無く、【王の間】にはステラのみが残され、ステラは背を玉座へと預け目を閉じる。その様子は瞑想をしているようにも、また先ほどの会話を聞いて入れば何処か祈りをしているかのようにも見えたが、もはや何人たりともいない【王の間】にてそれを知る者は存在していなかった。
今回のエピローグは、少し思わせ振り?なシーンを多めに書き出しました。
そして、今後はメインの執筆、投稿を開始しますので、月に一、二程の投稿となりますが、楽しみに待って頂けると嬉しいです。
そして、今話で二章は終わりまして、いよいよ三章へと突入です。
ブックマーク、評価、感想または誤字脱字などの報告を頂けますと幸いです。
では、今回はこれにて失礼します。次は新章となります、頑張りますので皆様、宜しくお願いします。