第二章 第三十二話 「決着」
体調崩して、胃痛とかに襲われ…も、もう…限…界…頭が…痛い…と、投稿、です…(ううっ、考える事が多すぎて…頭と胃が痛い…)
颯天達の前、数メートル程の距離に浮かぶのは全長凡そ三メートル程の巨剣で、剣全体に刀身と同じ幾何学模様がビッシリと刻まれ、時折発行を繰り返しており、その様から見た者に禍々しい印象を見たものに与える剣。そんな剣を颯天は眼を逸らす事無く見ながら剣を分解し、苦無へと創り直し腰のベルトに差し込み、霊体化ではなく顕現した状態で剣を視てもらっている白夜に話しかける。
「どうだ、白夜?」
「‥‥うむ。主殿も予想していた通り、あれは魔剣じゃ。それも意志を持つ武具じゃの」
「そうか」
剣を視ていいる白夜からの報告に颯天は改めて確信を得ながら今はまだ、浮遊しているだけの剣への警戒を高める。
【魔剣】それはアルレーシャが持つ剣などの祝福や加護といった力が宿ったの物を【聖剣】と呼称するならば、その反対に存在する怨念などが宿った呪われた【魔】の力を持つ剣の事をそうと呼んでいた。そして日本で最も有名どころで言うならば妖刀ムラマサなども【魔剣】と言えるだろう。
そして、往々にして【魔剣】武器が意思を持つ事もある。今回の様に。
が、幸いにもまだ動き出す様子はないが、警戒していると同じく警戒をしていた白夜が颯天へと話かけてきた。
「さて、まだ時間がありそうじゃから尋ねるが…主殿」
「なんだ?」
「わざわざ崩壊の際に壊さなかったのは、そおいう事なんじゃろ?」
「何がだ?」
「惚けなくともよい。わしも確信を得たのはつい今しがたじゃよ。普段の主殿であれば今回の様な危険が及ぶ可能性があれば確実に倒しておるはずじゃ。じゃが今回は厄介な物が巣くっておるのに倒さなかったその理由。それは…あの娘に王としての自信をつけさせてやりたいのじゃろ?」
「‥‥‥‥」
「今回の出来事、幾ら格上の相手だったとはいえ一方的にやられ、言っときは落ち込んでおったが今は剣の開放が出来た事によって幾分かはマシになっておるが、まだ足りぬ。そこで、あの天使より強い存在を相手にし、勝たせる事で自信をつけさせようとした、そうじゃな?」
「ああ。完膚なきまでに正解だ」
参ったとばかりに颯天は両手を上げ、その様子に白夜は「過保護じゃの」と微かに笑う。
颯天がコカビエルに巣食い、崩壊させた事によって姿を顕現した【魔剣】をその場で破壊しなかった理由。
それはアルレーシャに倒させる事で自信をつけさせるという目的が為だった。故に時間稼ぎと称してコカビエルの相手を引き受け。
倒せるようにアルレーシャにアザゼルとの模擬戦をするように言ったのだった。
だが、事此処に至り、颯天のが想定していなかった事態が起きた。
予定ではコカビエルが全魔力を放出する際に顕現するようにし、それは成功したのだが、顕現した剣は周囲に放出されたコカビエルの魔力を吸収したという事だった。
そして、対処するために颯天は封印を解錠するという事態へと発展したのだった。
「ま、全てが予定通り、とまでは行かなかったけどな」
「そうじゃな。今回の件は主殿の予想が甘かった、という訳じゃ」
「ぐうの音も言えないな」
白夜からの手厳しい言葉にに颯天は内心で改めて苦笑を浮かべた、直後。相対していた剣より膨大な魔力が放出され、颯天は武器を構え、白夜は再度霊体化し颯天の魔力を調整する為に憑依する。
「‥‥‥…」
「——————」
そして、【魔剣】と颯天が相対した、僅かな間を置き、颯天から仕掛ける。
「まずは…」
ベルトに挟んでいた苦無を無造作に、しかし腕が霞むほどの速さで投擲し、無系統忍術『金剛体』を発動させる。そして颯天は何もない空を蹴り、一歩毎に加速していく。
十歩目にしてその速さは最大加速であるマッハ2へと到達、【魔剣】を剣の間合いへと捉え、剣を振ろうとした時だった。
「—————————」
剣を振ろうとする直前まで反応すらしなかった【魔剣】はその刀身を動かし、『金剛体』に加え加速が乗った颯天の斬撃を意図も容易く受け止めた。
「…なるほど」
そのまま拮抗するかと思われたが、あっさりと颯天は後ろへ飛び、そのタイミングで投擲した苦無が着弾したが、【魔剣】に当たった瞬間、苦無は元の砂鉄へと姿を変えた事で、颯天は確信した。
たった一度、剣を交えただけで、颯天の解錠に際して解放された全魔力の内の一割がごっそりと削られていた。
「魔力吸収…それも武器を通しての、間接接触でも吸うとなると厄介な」
特殊な術が刻まれた颯天専用にして、最上級の大業物である【黒鴉】とは言え特に精霊が宿るなどの力は持っていない。
そして、何より今の颯天と【魔剣】の相性は最悪と言っても良かった。何せ、今の颯天は残り少ない残存魔力を解錠することによって誤魔化しているが常に魔力を消耗している強化状態。
分が悪いにも程があった。そして、颯天の魔力を吸収した影響か、【魔剣】の魔力が強まっていた。
「————————————」
何度か明滅を繰り返した後、その刀身をまるで大車輪の様に回転させ颯天へと斬りかかってきた。
「っと!はっ!」
繰り出される剣撃は縦横無尽。たがその悉くを【魔剣】の剣先の僅かな動きから予測し逸らせば魔力を吸われるため回避に専念するが、徐々に速度が上がって行き、逸らさなければ不味い鋭い斬撃もあり、僅かな接触で横に流す様にして捌くが同時に微量とはいえ魔力を吸収されるジリ貧の状況になっていた時だった。
(主殿、下から何か来るぞ!)
横薙ぎを逸らした事によって生じた僅かな隙に、下の方の方を探るとたしかに白夜の指摘通り、何かがこの場へと近づいて来ており、それは雲を突き破って姿を現す。
(アレは‥‥大きな光の槍かの?)
光の槍と言えばこの場においてはアザゼル以外に他ならないが、今この周囲でアザゼルの魔力や気配は皆無だった。
(だが、何の意味も無くあいつがするとは思えない。なにか意味があるはず‥…まさか!?)
決して無いとは言えない可能性に颯天が辿り着いた時には既に下の方から流星の如く駆けあがってきた槍が【魔剣】へと直撃しようとしていたが、当たるその直前にまるで目的は果たしたとばかりに穂先から崩れて行き、やがて槍の中から一人の人影が姿を現すと剣全体に黄金の魔力が纏う。
槍の中から姿を現したその人物、アルレーシャは足場となっていた槍から跳躍。手にした黄金の光を纏った剣を裂帛の声と共に振るい、対し【魔剣】も危険を感知したのか禍々しい魔力を刀身へ纏わせその刀身を振るい辺りに聖剣の黄金の魔力と魔剣の禍々しい魔力が辺り一帯へと吹き荒れる。
「ハアァァァァッ!!」
その衝撃の余波によって白夜が構築した結界に亀裂が生じるがそれに関係なくアルレーシャと【魔剣】の鍔迫り合いは十秒にも亘った直後、十を超える剣戟が繰り広げられたが、足場が無いアルレーシャが弾き飛ばされるという結果に終わり、アルレーシャはそのまま落ちていく、という事は無く、まるでそこに何かがあると確信しているかのようにアルレーシャは見えない足場へと着地すると、振り返った。
「お待たせ、ハヤテ」
「‥…お前、どうして?それに」
想定外の登場に加え、後の事も考えずの行動。しかし絶対ハヤテが何とかしてくれるといったアルレーシャの眼に宿った絶対的な信頼に流石の颯天も困惑こそしたが、それでもその混乱は一秒にも満たない時間で抑え込み、言葉少なげにそう返すのが、今の颯天に出来る精いっぱいの反応だったが、それでも確認しなければと、【魔剣】から視線を逸らす事無く颯天は念のために尋ねる。
「さっきのは一体何なんだ?」
「私も詳しくは分からないけど、ハヤテの所に最速で行くにはこれが良い、ってアザゼルに言われたからアレに乗って来た」
(無茶をするの~)
全くだと白夜の言葉に同意しつつ天を仰ぎたい衝動を堪える。
「あ、アザゼルがハヤテに話があるって言ってたから、その間の時間を稼ぐから!」
「あ、お、おい!?」
颯天が急いで声を掛けたがアルレーシャの耳に届く事は無く、アルレーシャは距離を詰めて来ていた【魔剣】と刃を交え始め、その様子を白夜は冷静に観察し、気が付いた。
(主殿。どうやら、あの娘は剣を交えておるが魔力は吸収されておらんようじゃぞ?)
(なに?)
白夜の言葉に颯天は霊眼を凝らし刃を交えているアルレーシャと【魔剣】を視ると、刃を交えているのにアルレーシャの魔力が減っている様子は見られなかった。
(まさか、気づいたか?)
そんな事を考えているともう一つの気配が先ほどの槍の速度には劣るが、見知った魔力がかなりの速度で近づき、やがて減速し颯天の横で止まったアザゼルが話しかけてきた。
「ふう~、どうやら上手く行ったみたいだな」
「アザゼル。一体どういうつもりだ?」
本来まで手を付けれない魔力を鍵を使ったとはいえ強引に引き出した影響で、颯天の僅かな怒りの感情に反応し、魔力が荒れるが、その様子を視たアザゼルは焦る事無く言葉を紡ぐ。
「まあ、そう怒るな。後でちゃんと説明はするが、お前も人の事をとやかく言えないだろ。お互い様だ。それより今はあの剣についてだが。どうやら既に一度剣を交えて凡その理解は出来てるんだろ?」
「‥‥ああ」
後で説明しろと一睨みした後、アザゼルの問いに答えると、アザゼルはニヤッと笑った。
「なら話が早いな。アレを壊すには魔力が関係するものは使えない。それと下手に剣を交えるのもダメだ。魔力を吸われちまうからな。けど」
アザゼルの視線を追うように、剣を交えているアルレーシャが握る【聖剣】へと視線を向ける。
「【聖剣】は別。という事か」
「ああ。触れた剣越しに魔力を吸収するとは言え、属性が反対である聖剣、そして加護を得たその使い手からは魔力を吸収することは出来ない、という訳だ。それに、お前の策の通りなら。あいつが決めた方が良いだろ?」
色々とアザゼルに言いたいことがあったが颯天はそれらを一旦棚に上げ、【魔剣】に対する情報を纏めると、あの【魔剣】に対抗できるのはアルレーシャただ一人という事だった。
「そうだな。それじゃあ、俺は援護に回るが、そっちはどうする?」
「悪いが、俺は観戦さ。正直あいつをここまで飛ばすだけで残った魔力をほぼ使い切っちまったのさ」
「なら、後は任せる。精々死なねえようにな」
そう返すと、颯天はアルレーシャを援護する為に空を駆けていき、その後ろ姿を見送りつつ、アザゼルは嬉しそうな笑みを浮かべる。
(こいつ‥‥気づいてやがったな)
確かにアザゼルの魔力は尽きかける寸前にまで減っており、その言葉に嘘は言ってなかったが、本当のことも言っていたが、言ってない事もあった。だがそれでもアルレーシャを勝たせる。この一点では利害は一致していた。
「見させてもらおうか。これからの若い世代の力ってやつを」
* * *
「———————」
下からの斬り上げにアルレーシャは剣の腹に手を添え斬撃を受け流すが、流しきれなかった衝撃で数歩後ろへと弾かれ、その間に距離を詰め横から迫る斬撃を切り上げる事によって防ぐ。
(使い手が居ないにも、関わらずこの威力。それに魔力を吸収して自身の力にするのは確かに厄介。でも【聖剣】なら!)
防ぐのではなく前へと踏み出し、剣を振るい【魔剣】を押し返した時だった。
「あれ。もう良いの?」
後ろを見ることなくハヤテへと話しかける。
「話すことは話した。待たせて悪かったな」
「ううん。それじゃあ、私が【魔剣】を倒す所、見ててもらえる?」
「ああ。後の事は気にせず、全力でやれば良い」
頷き、アルレーシャは【魔剣】を前にして静かに目を閉じる。
「世の術理摂理。その全てを断つ」
アルレーシャの詠唱が始まり光り輝く黄金の聖剣へと黄金の魔力が収束していく。
「ーーーーーーーーーー」
もちろん。無防備なアルレーシャに【魔剣】は刃を振るおうとするが、颯天によって作られたアルレーシャの分身によって撹乱され本体がどれかが見切れずにその刃が届くには至らない。
「四元の精霊の加護宿りし【聖剣】よ。今その真なる姿を現せ」
静かに剣を両手で振り上げつつ、アルレーシャは最後の詠唱を口にする。
アルレーシャが詠唱を終えた瞬間、手にしていた刀身に光が溢れ、刀身の大きさが大剣へと変化した時。
「…まあ、そう簡単にはいくわけないか」
まるで真似をするかのように【魔剣】は真の力を解放した光り輝く黄金の聖剣と同等か、それ以上の刀身と魔力を纏う。
「ーーーーーーーーーー」
「………」
そして、アルレーシャがデュランダルを振り下ろし、【魔剣】は斬り上げる様にして放たれた二つの【切断】の力が宿った斬撃が衝突、互いに断ちきらんと拮抗するが、魔力量ではコカビエルに加え、颯天の魔力を吸収した【魔剣】の方が徐々に押し始めるが、アルレーシャに焦りはなかった。アルレーシャは頼ることを覚えたのだから。
「ハヤテ…私に力を貸してくれる?」
「はぁ…なにを言うかと思えば」
そう言い、颯天は後ろからアルレーシャが握る剣へと手を添える。
「お前は気にしないで前だけを見ていろ」
「…うん」
(‥…これは、また増えそうじゃの)
デュランダルにまるで星を見守る夜空の様な何処か温かい闇色の魔力がデュランダルへと流れ込み、アルレーシャは最後の枷を外す言葉を口にする。
「真名解錠」
その瞬間二つの魔力が混じり合い先ほどよりも大きな大剣が形作られる。颯天はアルレーシャに合わせる様にして二人で刃を振り下ろす。
「魔剣を絶て、【明日を照らす絶剣】!」
振り下ろしたタイミングでの、アルレーシャによる剣の力を解放する真名の解錠を以て爆発的に威力を増し、先にはなった斬撃をも飲み込むようにして【魔剣】を飲み込むのみならず、そのまま結界まで直撃、結界をも容易く絶ち切ってしまったが為に、結界が崩壊をはじめ颯天達は急いで白夜が外に出る為の鳥居を外へと脱出したのだった。
こ、今回はもう勢いで書ききった感じです。そして改めて文才が乏しいという事実を再確認しました‥‥。
…さて、この後の事はエピローグで書き出します。どうにか、今週中に。
そして、読者の皆様、お待たせして本当に申し訳ありません。ですが、ようやく二章のエピローグに手が掛かりましたので、手を外さないように頑張って行きますので、宜しくお願いします。
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では、次話のエピローグの投稿を楽しみに待っていただけると幸いです。では、失礼します。また次話で。