第二章 第二十九話 「黄金の守護」
し、試行錯誤を繰り返して…どうにか書き上げれました…ので、投稿します。少しでも楽しんで貰えると嬉しいです。また、お待たせしてしまい、申し訳ありません。そして、次の投稿がこの話の第五十話目になります。…そんなにやってたんだと、今更ながら思いました。
…そして、すみません…愚痴を一つだけ…友人から読んだ感想にて「絶妙にダサい」とのお言葉を頂きました……どうしろと?
※六月十二日に最後の部分を改稿しました。理由としては後のつながりに違和感が出そうだったからです。
颯天とアルレーシャが目覚める少し前、その上空ではアザゼルとコカビエルの熾烈な戦いが繰り広げられており、しかしその戦況においてアザゼルは防御一辺倒にならざるを得なかった。
「ほらほら、どうしたんですか、アザゼル? 攻撃してこないと意味がありませんよ?」
「はっ、さっきから弾幕を張っている臆病者のお前に言われたかないなぁ!」
コカビエルが創り出し撃ちだしてくる光の球をアザゼルは光の槍で弾き(打ち)返し、また軌道を逸らすことによって迫っていた光の球を相殺しながらも、地上への流れ玉の全てを相殺するという神業と言っても過言ではない行為を既に、軽く数百回は成功させていた。
元々はアザゼルもコカビエルと同様に光の球を操っていたのだが、光の球の軌道を読んで相殺するという事を意図的に起こす行為は神経を擦り減らす故に徐々に粗が多くなり被弾する回数も増えてきていた。故に槍で軌道を逸らし光の球同士を相殺するという方法に切り替えたが、それでもアザゼルの限界が訪れつつあった。
(ちぃ、流石にそろそろ不味いな‥‥)
そう考えながら、どうにか光の球の軌道を逸らし、光の球同士を相殺させる事で出来た僅かな隙に、一瞬だけ地上へと視線を向けるが、そこには白い雲しか見えず地上を見る事は出来なかった。
空に上がって、凡そ三十分ほど経過した事、地上の方で力強い二つの魔力の波動、恐らく黒衣の男が何らかの術を行使したのだろうという事をアザゼルは理解していた。
(くそ、あっちはどうなったんだ…?)
しかし、それから何らかの変化はなく、それ程の時間が経ったという事は、少なからず結果が出ていてもおかしくはない。アルレーシャが助かったか、それとも死んだのか、そのどちらかの結果が。そしてアザゼルの脳裏をよぎるのは、また、助けられないのか。という言葉だった。
(ええい、くそ!)
思わず、悪い方へと引きづられ掛けた思考を振り払うかのように槍を振るい光の球を打ち消すと左手の中に螺旋状の、貫通性に特化させた形状の槍を作り出すと同時に握り、
「ふッ!」
一息に、視界で捉えたコカビエルへと投擲する。
(ふん、小細工を)
一方のコカビエルは自身へと近づいて来る槍へとアザゼルへと向けていた光の球を次々と当てていくが如くが一瞬も耐えきる事が出来ずに消滅していき、やがて数メートルの距離までに螺旋状の槍がコカビエルへと迫るが、コカビエルに焦りの表情はなく、目の前に十の障壁を作り出し、螺旋状の槍と障壁が互いに衝突し、槍は障壁の半分である五枚ほど砕いた所で食い止めていた。
「ふん。半分砕いたのは流石といえますが、残念ながら今の私相手では威力が足りないですよ」
そう呟きながらコカビエルは残っていた障壁を全て現在槍を圧しとどめている六枚目へと統合させる。統合する事で障壁は硬度が上がる。そして後は槍が自壊するのを待つだけとなった。
「これで‥‥ん? アレは…」
なんだ? とコカビエルが思った瞬間。ガラスを砕け散るような音と共に統合し硬度が増したはずの障壁が自壊するはずだった槍によって粉砕、押し留める物が無くなった槍は飛翔しコカビエルの心臓、ただその一点を貫いた。
「バ、馬鹿な…グボッ!」
そして、貫かれた場所からは血が溢れ、コカビエルの口からも血の塊が吐き出され、まるで少しでも溢れ出る血を少しでも抑えようとするかのように貫けれた場所に手を当てる、その様子を見ていたアザゼルは、安堵の息を吐いた。
(どうやら、【射貫く螺旋槍】は成功したみたいだな‥‥)
【射貫く螺旋槍】 それはアザゼルが光の槍に幾つものアレンジを加え完成させた目標に定めたものを貫通する、それだけに特化させた槍だった。
その一つとして計上は螺旋状で、そうする事によって回転力を高める事で貫通力の強化に繋がり、更に槍の特性はもう一つあった。それは使用者が相手を視界に一度捉え、目標に設定した上で投擲する事により、射線上にあるあらゆる障害を破壊し必ず目標を貫くように開発した。それがコカビエルを貫いた【射貫く螺旋槍】の正体だった。
そして、例え天使、そして熾天使ほどの力を持っていたコカビエルのと言えど、生命の核である心臓を破壊されてしまえば、待ち受けるのはあらゆる生物と同じく訪れるのは死のみであるはずだった。が、コカビエルの口から漏れ出たのは苦しみの吐息ではなく、まるでアザゼルを憐れむかのようなの様な哄笑だった。
「‥‥くくくっ‥…ははは、はははははははっ!」
「…何がおかしい?」
気が触れ、おかしくなったのかともアザゼルあ考えたが、コカビエルの笑い声には僅かばかりの嘲笑が混じっている事に気づき問うと、コカビエルは苦しむ様子は一切なく、ごく自然にアザゼルの問いに答えた。
「いやなぁ。 確かにアンタの今の一撃は俺に届いて心臓を完膚なきまでに破壊した。けどな、今の俺にとって致命傷には程遠いんだよ」
「なっ‥‥馬鹿な!」
そう言いつつコカビエルはアザゼルの【射貫く螺旋槍】によって確かに貫かれた箇所、心臓のある場所から手を除けると、そこには風穴はなく、まるで時間が戻ったかの如く、何事も無かったかのように塞がっており、思わずアザゼルは驚きの表情を浮かべながらも、迫りくる光球を槍で弾きながら頭はフル回転させる。
(ありえそうな可能性として最も考えられるのは幻術。今の奴は俺より力を持ってる。故に術中に嵌る可能性は否定できない。だが、例え幻術であれ【射貫く螺旋槍】は目標と定めた相手に確実に届く。そして奴の血は幻術によるものでは無かった。ならば幻術と言う可能性は限りなくゼロだ。ならあり得るとすれば…)
頭の中は僅かに混乱しながらも、アザゼルは考えるが、その思考能力は普段の時よりも遥かに遅かった。しかし、それは無理からぬことであった。幾ら天使、熾天使であれど、生きている以上生命の核と言える心臓を破壊されれば死ぬ。
その常識が目の前の覆されたが故の倒したという確信があったアザゼルの動揺は仕方がないものであった。そして何より混乱による思考能力の低下によって意識を割く割合が増えた事によって迎撃に生じた僅かな、しかし致命的な隙となる合間を縫って光球は球状から鎖へと変化し、アザゼルの右腕を縛り上げる。
「ちぃ!」
即座に左手に作り出した槍で切り払おうとするが、右手と同様に左腕も鎖状へと変化した光球によって拘束された。
「おやおや、堕天使の総統ともあろう方が、注意が散漫すぎるのではありませんか?」
「はっ! 他人の力で強くなったお前相手に、ちょうどいいハンデだろ?」
「‥‥そこまで言うのであれば、いいでしょう。殺してあげましょう!」
コカビエルが手を上げるとそこには現れたのは、全長三十メートルに迫ろうかと言った巨大サイズの槍だった。
「さあ、受けてみなさい! 我が一撃を!」
コカビエルが手を振り下ろすとその大きさに見合わずかなりの早さでアザゼルへと迫り、それはさながら隕石のようであり、そしてこれには流石にアザゼルも焦りの表情を浮かべた。
(くそ、幾らなんでも大きすぎないか!?)
思わずコカビエルを挑発した直前までの自分を殴りたい衝動に駆られるが、そんな事は不可能なのでまずは魔力によって強化した腕力で鎖を引きちぎり、アザゼルはその場で軽く三十を超える障壁を一列に展開する。だが、障壁を展開したのは自分の身を守るためではなく、少しでも威力を抑える事で地上にへの被害を抑えるためだった。
(少しでも、地上への被害を抑えねぇと!)
そして、槍がアザゼルが展開した障壁と接触した直後、一瞬にして十を越える障壁が破壊され、即座に新たな障壁を展開するがそれらも即座に破壊され、槍の威力が衰える様子はないと判断したアザゼルは最大出力の障壁を複数展開、がそれは先ほどの一瞬と比べると二、三秒程度持ってはいたが、同じく砕かれる。
(最大強度でも駄目か!)
それでも、先程と比べると障壁の強度が上がっているため、アザゼルがいる場所へまでは凡そ二十秒ほどの時間の余裕があった。
(これしかないな‥‥)
二十秒と言う僅かな時間の間に地上への被害を少しでも晴らす為の手段をアザゼルは決断すると同時に、その体からアザゼルの背にあるまるで鴉の羽と同色である翼と同じ黒色の魔力を全身に纏い、その場からまるで地上から空へと駆け上がる矢のように光の槍へと飛翔する。
アザゼルが選んだ手段、それは障壁ではなく自身の盾とする方法で、一見するれば自殺の様にも見えるが、アザゼルに自殺のつもりはなく、寧ろ距離を詰めた事で目視による槍の穂先、そこにピンポイントでの
極小の障壁を展開し、受け止めるといった内容だった。
そして、障壁を展開したアザゼルの右手と槍はぶつかり、互いを火花を散らしながら槍は動きを止め、受け止める事に成功した、が。
「ぐっ、があああぁぁぁっ!」
受け止める事によって生じる多大な負担を物語るかのような咆哮と、槍を受け止めているアザゼルの手の指は曲がるはずの無い方へと曲がり、右腕から肩にかけては血が噴き上がり、まるでミシミシと軋む音が聞こえそうなほどの重症でありながらも、その腕を下ろそうとはしなかった。そして、そんなアザゼルの様子を見てコカビエルが動かない、という事は無かった。
「ふふふっ、どうやら喜んでもらえているようですね‥‥では。もっと追加してあげましょう」
コカビエルが槍へと手を向けると、槍は更に倍以上の大きさへと変化を遂げ、その威力も上がりアザゼルの全魔力を以て展開した障壁に亀裂が生じ、それでも即座に砕かれる事は無かったが、亀裂は網目の様に障壁全体へと広がって行き、やがてバキッと言う音を残しアザゼルは地上へと吹き飛ばされるように空から墜落し、辺りに土煙と水しぶきが舞う中、受け身すら取る事も出来なかった状態で地面に叩きつけられたアザゼルは全身至る所に灼けた鉄を押し付けられているかのような灼熱の痛みを堪えるも込み上げてきた血の塊を吐き出す。
(‥…く‥‥そ‥‥)
幸運にも痛みのあまり意識を失うという事は無く、視界も揺れてはいるが比較的良好のお陰もあり今の自分の体の状況を正確に把握する事が出来ていた。そしてその中でも重症だったのは、槍を受け止めていた右腕だった。
(‥右腕は…どうやら形は残っていて、感覚は微かにあるが今すぐには使えないな‥‥それに肋骨から始まり大腿骨まで見事に砕けているな‥‥唯一軽傷なのは‥…左腕だけか)
体を起こす事すらままならない、そんな状況でアザゼルの視界はこうしている間も距離を詰めて来る極太の光の槍が見えていた。
(ここまで、なのか‥‥)
左腕以外動かす事の出来ない、正に翼をもがれた鳥のようだとアザゼルの頭に、そんな諦観が浮かんだ時だった。アザゼル体を黄金の光が優しく包み込んだのは。
(なんだ‥‥この温かな光は‥‥?)
まるで誰かの優しさに包み込まれているかのような、アザゼル自身は知らないが、それは例えるなら赤ん坊が母親のお腹の中にいる時の様な温かな安らぎが、そこにあった。そして、温かな光はアザゼルが負っていた全身至る所に追っていた傷を癒していく最中、それは起こった。
(ずっと、貴方を見てる‥‥だから‥…頑張れ、アル)
(‥‥‥ルーチェ‥‥?)
それは、限界が近かったアザゼルの意識が生み出した妄想による産物であったかもしれず、しかしそれでももう聞こえる事も無い、かつてアザゼルが守ろうとし、護れなかった一人の女性、ルーチェ・ペンドラゴン。
その彼女の声がした直後、アザゼルを包み込む黄金の光の守護にコカビエルが創り出した光の槍が直撃し、威力を物語るように辺り一帯に土煙を巻き上げた。
今回の話はまあ、颯天達が中で戦っている間と、前話の最後のアザゼルをを包んだ黄金の光の所までのアザゼル視点という感じです。そして、次話では役者が揃いましたので、あと、二、三話で出来れば第二章を書き上げればと思っています。いよいよ第二章クライマックスです。少しでも楽しみに待って頂けると幸いです。
投稿が遅く、申し訳ありません。ですが今月中に出来ればあと一、二話ほど投降できますようにがんばります。
では、長くなりましたが今回はこれにて失礼します。最後にですが、評価、感想、またブックマークなど頂けますと大変な励みになります。
では、皆様、また次話で。