第二章 第二十四話 「上空の戦い」
あまり、時間が空くことなく投稿が出来ました。しかし何故かメインが書けないという事態……(どうしたものか)そして戦闘シーンは相変わらず……おっと、そんなシウの事は川にでも投げておいて、楽しんで貰えると幸いです。
颯天と白夜がアルレーシャの治療を始めた頃、その上空にてアザゼルとコカビエルは相対しており、コカビエルは颯天達が何をしているのかという事にも気づいてた。
「おやおや、十二熾天使を超える力を持つ存在となった私のオーラを受けた人間を助ける事など、出来るはずもないのに」
「まあ、普通はそうなのかもしれないが、今回はどうだろうな? 万が一ってのもあるんだぜ?」
そう言いつつアザゼルは何処となく意味深気味に笑みを浮かべるが、しかしアザゼルの笑みを見てコカビエルは見損なったと言わんばかりに目に冷たさが宿る。
「…どうやら、長きにわたる封印の影響で見る眼も衰えたようですね?」
「さあ、それはどうかな?」
「‥‥まあ、別にいでしょう。そもそも、それまでアザゼル、貴方が生きていればの話ですけどね」
先手必勝とばかりに、コカビエルは複数の極太の光の槍を作り出した。それは、建造物に直撃すれば跡形もなく破壊できる、到底個人に向けるべき威力の攻撃ではなく、しかしそれは同時にまだアザゼルを警戒しているという事でもありそこから分かる事。
それは自分をそれだけ警戒しているという事は、アルレーシャの治療に気を割くことが不可能とまでは行かないまでも、困難にする事は出来ているという事でアザゼルにとっては悪くない情報だったが、流石に現状で自分以上の力を持っているコカビエルの相手は少々、いやかなり骨が折れる戦いになるのは眼に見えていた。
「全く、大盤振る舞いだな‥‥まあ、久々に本気で体を動かすにはちょうどいいか」
しかし、そんなコカビエルを前にして、アザゼルは怯むことは無く、寧ろ挑戦的な笑みを浮かべると、その体から先ほど以上の、コカビエルに迫る程の黒い魔力を吹き出し、それを見てコカビエルは驚きの表情を浮かべる。
「…ほう、どうやら先ほどまでのは全力、という訳ではなかったようですね」
「まあ、本気と言っても、あのクソ神と戦った時のような本気の全力って訳じゃないがな。まあ今回は時間稼ぎが主だからな。この程度でいいだろ」
「…舐められたものですね!」
アザゼルに面と向かって全力を出さないと言われたコカビエルの表情に明確な怒りが混じり、その様子を見てアザゼルはコカビエルを自分に釘付けにさせる為の挑発にコカビエルが乗ったという事に対して内心で小さな笑みを浮かべたが、アザゼルのその事にコカビエルが気づいた様子はなかった。
だが、そんな事は今のコカビエルにとってはどうでもいい事だった。
「落ちろぉぉぉぉぉ!」
「はっ、嫌なこった!」
そんなアザゼルの作戦にまんまと引っ掛かったコカビエルだが、その力は本物でアザゼルへと先ほど作り出して宙に待機させていた光の槍が投擲されるも、軌道を読んだアザゼルはいち早く回避し、同じことが数度繰り返される。
「くそ!」
「おいおい。そんな力づくな雑な攻撃じゃ俺を落とすなんて出来ないぜ?」
「なら、コイツはどうだ!!!」
次にコカビエルがアザゼルを取り囲むようにして作り出したのは最早無数と言って良い程の矢ほどの大きさの光の矢で、その矢の密度の中に一分の隙すらも無い。
(‥‥こいつは、流石にきついぞ…!)
そしてそれだけの数の光の矢を作り出す事が出来るとは思っていなかったアザゼルは流石に挑発をし過ぎたかと内心で冷や汗を流しながら少しばかり後悔をしつつも表では然程驚いていないかのように笑みを浮かべた。
「ほう、そんな事も出来るのか」
「ふん、その虚勢がいつまで持つか見ものですよ…!」
コカビエルが手を振り下ろした瞬間、アザゼルを取り囲むようにして展開された光の矢が一斉にアザゼルへと飛来する。それを見てアザゼルは反対の手にも光の槍を形成し、左右で槍を持つ二槍の構え、更に十数個の光の球を作り出し正面から迎え撃つ姿勢を見せるも、流石のアザゼルも全てを防ぐのは困難。しかしその間もアザゼルへと無数の光の矢が迫る。
(ちっ、全部は無理だ…だが致命傷だけならば…!)
槍の間合いに入った無数の光の矢を槍と光球によって捌いて行くが数が多く、全てを防ぐことは出来ず傷を負っていくが顔や心臓、更に手足の太い血管がある場所に当たる攻撃は確実にだけ防いでいくが同時に被弾と共に息も上がっていくが、どうにか息を乱さないに注意して捌いて行く。
(ち、一撃の重さに加え、攻撃の密度が濃い…!)
槍と光球を駆使して迎撃していくが、攻撃の密度が濃く息をつく暇もなくまるで蝗の群れのようにコカビエルの攻撃が止むことは無い。
そして、どうにか攻撃を捌いて行くが、見方を変えれば徐々に嬲るようにして被弾を増やしていくアザゼルを高みの見物とばかりに見つつ、改めて今の自身の力を見て笑っていた。
「ふふ、ふふふ。…ははははっ! 素晴らしいっ!これが十二熾天使を越えた力か!」
自らの力に愉悦を感じ高笑いをしながらも油断なく今も捌いて行くアザゼルの様子を見る。
(しかし、まさかあれほど密度ある攻撃をあそこまで防がれるとはね…)
先ほどはアザゼルの挑発に乗ってしまったコカビエルだったが、改めてアザゼルを凌駕出来る力があるという事を再認識し落ち着きを取り戻し今も尚、傷つきながらも致命傷だけは防ぎつつ捌いているアザゼルがおり、そして今も尚アザゼルが立っている事に対してコカビエルには驚きしかなかった。
しかし、それはコカビエルにとっては嬉しい事でもあった。もしアザゼルがあの程度の攻撃で潰れるのであればやる気を出させる為にコカビエルはさっさと地上の人間どもを吹き飛ばしていただろう。その程度の攻撃をする事なく今のコカビエルにとっては造作も無いのだから。
(今、俺はアザゼルを躍らせている‥‥!)
だが、アザゼルは時間稼ぎという目的で動いているにしてもちゃんとコカビエルの前でアザゼルが踊っている、その事がコカビエルにとっては大事で、正直地上で何かをしている人間などどうでも良くアルレーシャにオーラを当てたのもそういう意図もあったのだった。
「ふふふ、さあ、もっと‥‥ッ!」
そして更に数を増やす為に手を上げようとした時、コカビエルの目の前でアザゼルを取り囲んでいた無数の光の矢の群れが内からの二つの光によって吹き飛ばされ、
「…ハァ…ハァ‥‥ハァ…」
「まさか、アレを吹き飛ばすとは…」
そこから姿を現したのは至る所から血を流しながらも未だ五体満足ではあったが消耗しており荒い息を吐いているアザゼルだった。しかしそんなアザゼルを見てのコカビエルの中に浮かんだのは、歓喜だった。
「いいですね‥‥流石はアザゼル。私の期待を裏切らないですね…!」
コカビエルは即座にアザゼルに対して光の槍や剣を撃ちだし、アザゼルは応戦するように幾つもの光の槍でその弾幕を時に弾き、または逸らしその隙を縫いつつ空いている反対の手元に作り出した極太の光の槍をコカビエルへと投擲するがコカビエルに届く前に剣と槍が集まり巨大な剣に迎撃され、一瞬の拮抗の後に撃ち砕かれる。
「てめぇの‥‥期待になんぞ‥‥答えてやっているつもりは‥‥ねぇ…!」
打ち砕いた光の剣がアザゼルへと迫るがアザゼルは体を回転させその勢いを乗せた槍で剣の腹を叩き軌道を変更し、軌道を逸らされた槍は治療を行っている颯天達がいる場所よりかなり離れた場所に直撃し地面に深い穴を作る。その深さから見て十メートルはあるだろう。そしてその様子を見てアザゼルは内心で舌打ちを打った。
(ちっ、遠距離からだとさっきみたいに状態になれば埒が明かない。それに治療の邪魔をしない為に下手に地上へ攻撃を落とさせるわけにはいかない…)
地上では、今もアルレーシャを助ける為に人間の男と使い魔と思しき狐の娘が目を閉じそれぞれ黒と金のオーラの様なモノを纏い混ぜ合わせる様子が見え、恐らくアルレーシャの治療を行っている事が伺えたが、しかしあの様子だと周囲に気を配る余裕がない事も伺えた。
だがそれはそれだけ真剣に助けようとしている事に加え、もう一つ、あれほどの実力を持つあの男と使い魔である狐の娘が周囲に気を配る事が出来ていないという事はそれだけアルレーシャを助ける為の治療は集中力を欠く事は出来ないという事が、何となくアザゼルは分かった。
(これは治療が終わるまでの間、地上へ届く攻撃は消さないといけないな)
下手に周囲に攻撃が当たって集中力が切れてしまえばアルレーシャの治療が失敗してしまう可能性があった。それだけは多少の無茶をしてでも止めなければと、アザゼルは心の中で決め、地上へと攻撃を届かせない為に、上を見る。
(まずは、上を取る!)
地上へ攻撃され危険性を減らす為、アザゼルは更に上空へと一直線に移動を開始し、
「ふふふ、いいでしょう。付き合ってあげましょう、アザゼル!」
上空へと飛翔を始めたアザゼルを見てその目的が何かという事にコカビエルは気づいてはいたが他は些事だと言わんばかりにアザゼルを追うようにして更に上空へと飛翔を始めたのだった。
どうだったでしょうか……?今話を読んで少しでも次の話を楽しみに待って頂けると幸いです。
さて、今回の話はアザゼルとコカビエルをメインに書き出しました。そして、予想できる方もいるでしょうが、次は治療を行っている颯天側の話を書き出したいと思います。次回の投稿は早くて来月になると思います。どうか、楽しみに待って頂けると幸いです。
また誤字脱字などありましたらご報告をしていただけると幸いです。
長くなりました、今回はこれで失礼します。どうか、また次話にてお会いできますように。
また最後にですが、皆様、体調などお気をつけください。それでは、また。