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生産職ですが最強です  作者: シウ
第一章 アスカロ王国編
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第一章 第十九話 「攻防」

ふう、ようやく書けた‥…やはり戦闘シーン、やっぱり難しい‥‥今後も頑張らねば‥‥

「とんだお笑い草だ、俺が、死ぬだと?ハハッ、ハハハハハハハッ!」


 颯天の宣告を聞いてガイストは気でも狂ったかのように突然笑い声を上げたが、颯天の顔には特に変化はなく、ただ淡々と何処か冷たさの宿った眼でガイストを見ていた。やがてガイストの笑い声は徐々に消え、


「調子に乗るな、たかが人間風情が!」


 その瞬間、ガイストの鍛えられているとはいえ、細身の体から、濃密な魔力が辺り一帯へと放出された。それは例えるのであれば吹き荒れる魔力の嵐のようだったがその中で、なお颯天の表情に変化は無かった。


「なるほど、確かに俺が思っていた以上の力を隠していたようだな」


「ふん、貴様が余裕でいられるのも、今の内だ」


 ガイストが地面を踏み込み、正面から颯天へと迫ってきた。その速さは先ほどに比べて数倍は早かった。


火炎鳳剣(イフリート)!」


 炎で作り出した剣を握り、ガイストはその炎の剣を颯天へ向け、横に薙ぎ払わんとし、颯天は先ほどから抜いていた黒鴉で受ける為に峰に手を当て、剣の腹で受けるための守りの態勢を取り颯天の持つ黒い剣とガイストが作り出した炎の剣が互いに衝突した。衝突した瞬間、辺りに炎の剣から熱風が吹き荒れ辺りの木々を揺らし、辺りを赤く染め上げる。その中、颯天は剣を受けた体勢から一歩も後ろへと引いていない。


「お前とその剣、まとめて焼き尽くしてやる!」


「大した大口を叩いたな」


「チィッ!」


 颯天が黒鴉と名付けた黒い刀身の刀の腹を滑らせるようにガイストの剣を逸らし、そのまま逆袈裟切りでガイストを切り裂こうとしたが、それを察知したガイストは火炎鳳剣イフリートで持って颯天のカウンター攻撃を防ぎ、後ろへと飛び後退する。


「木遁 蔦狗(つたいぬ)


 そのタイミングで颯天は蔓がまるで犬の様に付きまとい、やがて相手へと絡まり動きを捕縛、または阻害する木遁【蔦狗】を発動させたが、そう簡単に捕まる相手でもなく、何より火を扱っている相手に木だ、意図も容易く火炎鳳剣イフリートに焼き払われ、ガイストも地面へと降り立つ。


「妙な技を使いやがるな」


「俺としては至って当たり前の術だがな」


 短い問答を終えると、互いに距離を詰め、今度は颯天は守りではなく攻めへと転じる。ガイストは垂直に剣を、それに対して颯天は水平に剣を振るい、黒の刀と炎の剣が互いにぶつかり合う。それによって辺りの空気は再び熱せられる。その熱の発生元たる火炎鳳剣イフリートと刃を交えている黒鴉は、その熱にも耐えていた。それを見てガイストは怒りの声を上げる。


「貴様の剣、一体それは何なのだ、我が火炎鳳剣イフリートを以て溶かせぬ物など、あるはずがない!」


「それは、お前がその剣と、その剣の力を十全に扱えていないからだ。剣は使い手の腕次第。それは例え剣を知らぬ者が、名剣を幾ら振るおうとも決して届かない事と同じ。そして、俺の眼で見る限りお前は確かに剣は扱えるが剣ではなく魔法で戦うタイプのはずだ」


「クッ!」


 ガイストは何も言葉を返さない。それは颯天の言葉が、正鵠を射ていたからだった。確かにガイストは火炎鳳剣イフリートを扱うために剣を扱う事は出来る程度の騎士程度であれば容易に戦える程度の腕は持っている。だが、颯天との剣の勝負、そして火炎鳳剣イフリートの力を十全に引き出せるだけの剣の技量と魔法の技量を比べると、その秤は魔法へと傾いている。


「お前は、選択を間違えた。剣ではなく、魔法であれば幾分かは勝機も視えただろうが」


「何時まで、上から俺を見ているつもりだ」


 あるがままの事実を颯天によって口にされ、その静かな怒りによってガイストの体から溢れた魔力、その全てが火炎鳳剣イフリートへと注がれていき、魔力が注がれていくと同時に辺り一帯はまるで煌々と輝く太陽に照らされた砂漠に着の身着のまま放り出されたかのような肌を焼く熱が辺りを包み始め、颯天は咄嗟に後ろへと退避した。


 そしてそうしている間にも炎の剣は大きくなっており、それはもはや太陽と言ってもいい程の熱量を誇っていた。しかし颯天が熱気を感じている中、ガイストは熱を感じていないようだった。


(いや、そもそも自分で作り出した魔法の剣だからな、熱の遮断なんかも出来ていないと使い物にすらならないからな。しかし、どうしたものか)


 あれだけの熱量を保有する魔法によって作り出された剣を如何にして防ぐか、そもそも颯天は、先程はどうやって防いでいたのか、単純に剣自体の耐久性もあったが、種を明かせば簡単でそ火炎鳳剣イフリートと接している部分に火遁【爆烈】小規模の爆発を連続で起こすことによって熱を散らしていたのだった。


 だが小規模の爆発を常に引き起こすという事は剣自体を傷つける諸刃の剣でもあったが、颯天の錬金術によってその問題は解決していた。

 城を脱出し、宿を確保した颯天は部屋で自身の錬金術と言う力を検証した。その結果、颯天の錬金術は、自身の魔力を通した物体の原子・分子を操作・作り替え、別の物や作り手がイメージした物を生成、作り出す能力だった。


 そして原子と分子の操作が可能という事は、分子を固定する事も可能であるという事で、颯天は剣にガイストに気づかれない微量の魔力を通し、剣の分子を固定した。これによって爆発による分子の損壊が無くなり、結果颯天の剣に刃毀れなどの損傷が起きなかったのだった。


 そして颯天が最初に思いついたのも、剣と同じように爆発を起こすことによって熱量を吹き飛ばすというかなり大雑把な方法だった。幸いにもこの辺りに人が来るという事は滅多にないが、唯一気に掛かる事と言えば未だに眼を覚まさないクラスメイトに対してだった。


 剣の接地面だけに爆発を起こすのはまだ扱いなれている剣であるからこそ可能だったが、あれだけの熱量を吹き飛ばすとなると相応の爆発が必要で、その威力は備えている者にとっては大丈夫だが、備えていない者にとっては不意打ちの様なモノだった。そして颯天は思い立った。


 単純にそれを、この場合、熱を発している火炎鳳剣イフリートを厳密に言えば魔法の核となる部分を【霊眼】で見つけ、斬ってしまえば問題は無いと。そう判断し颯天は霊眼で火炎鳳剣イフリートの魔法の核を相手の様子を伺うようにしながら探し始めた。


「それにしても、お前の様な奴も不憫だよな?」


「何?」


 ガイストの火炎鳳剣イフリートの核となる場所を探っているとを唐突に話しかけてきたガイストに颯天は怪訝な表情を浮かべた。そもそも不憫とは何だと颯天は思い、それが伝わったのかまでは分からないがガイストは言葉を続ける。


「だってそうだろ?なんで騎士団の奴らは自分達じゃなくお前の様な人間に頼んだんだ?」


「そんな下らない事はどうでもいい。それが俺に何か関係するのか?」


「ああ、大アリさ。お前、魔族側(こっち)に付く気はないか」


「なに?」


 それはこの状況で勧誘とは颯天が、まったく予想していなかった内容だった。そしてそれを好機と見たのか、ガイストは更に言葉を紡ぐ。


「それだけの力を持っているなら、人間であろうと【魔王】様は配下に、そして、貴族としても迎えられる。悪い条件ではないはずだ」


「なるほどな、確かにいい条件ではあるだろうが、興味ないな」


「興味ない、だと?」


 それは予想していない答えだったのか、ガイストは何処か訳が分からないとばかりに颯天を見ていた。しかし颯天は興味なさげに口を開いた。


「俺は元々誰の元にも就くつもりもない。そもそもなんでお前の様な奴がいる所に行かなければならないんだ」


「それは、ここままだとお前の力を有効に使えていないからだよ」


 なおも勧誘を続けるガイスト。だが、


「いい加減、諦めたらどうだ?お前のお得意の固有魔法は、俺には聞かない」


「何を言っているんだ、俺の固有魔法?俺にはそんな「お前の固有魔法は精神操作、洗脳を得意とする魔法だろ?」‥…」


 ガイストの言葉を遮り颯天がそう言うと、ガイストの言葉が途切れ、辺りに燦燦と輝く火炎鳳剣イフリートの光と静寂が辺りを支配し、その中でガイストは必死に舌打ちをしたい衝動を堪え、表に出さない様に平静を保つ振りをしていた


(こいつ‥…どうして俺の固有魔法が精神操作、洗脳を得意としている事を、今の会話が堕とす為のものと分かりやがった!?)


 そう、唐突にガイアスが話し始めたのは相手を洗脳状態へとする為に必要な行程の一つであったが、しかしそんなはずはないと、自分の固有魔法【心操傀儡(マリオネット)】を見抜かれているはずはない、ブラフだとガイアスは内心の動揺をねじ伏せ、なんとでも無いように振舞う。


「何を言っているのか分からないな?」


「知らないふりをするのはどうでもいいが、洗脳をするにしても、俺には対して意味の無いものだ。」


 そういうと、颯天はガイストの魔法に関する考察を言い始めた。


「そもそも、魔族(そっち)に勧誘するにしてもタイミングがおかしいだろ。自分が優位に立っているか、命乞いの時ならいざ知らず、戦いの最中、いきなり勧誘するのは流石におかしいだろ。そして唐突にそんな事を言い始めたからには何かそれなりの理由(ワケ)があるはずだ。そしてある程度を除外すると浮かび上がるのが、声、厳密には音、特定の音、高音と低温を使い分けている事によるものかは分からないが、それによって俺に対して精神操作、または洗脳をしようとしている可能性だ。」


 颯天の考察にガイストは何も言わず、ただ聞いているのみだったが、颯天は考察を続ける。


「そして、もし音による洗脳だった場合、対処法は幾つかあり、その中で一番手っ取り早いのが、音を伝える鼓膜を破る事だ」


「み、自らの鼓膜を、破った、だと!?だがそれならば貴様は一体いつ、どうやって俺と会話を交わしていたのだ!」


 自らの鼓膜を破る、その強引な方法にガイストは驚きと共に愕然とした。確かにガイストは今まで何人もの人間や下級魔族を洗脳や精神操作を行って来たが、颯天ほど理解して使っていたのではなく、生まれた時から使えるから使っているに過ぎず、調べようともしなかった。


 また自らの鼓膜を破るという一種の狂気の沙汰とも取れる行動をようにしている目の前の男に、初めて原始的で、根源的な恐怖を抱いた。しかしそれ以上に気になるのは、仮に鼓膜を破いたとして、音が聞こえないのであれば相手との会話は不可能のはずだとガイストは言ったが颯天は事に何げなく答えを返してきた。


「鼓膜を破いたのは、最初からだ。確かに、鼓膜を破れば音は聞こえない。つまり会話は不可能に近いが、これだけの明かりがあれば、お前の口の動きで言葉の内容くらい容易に分かる。まあ暗くても裸眼で五メートル、【霊眼()】を使えば見えないものは無いだろうがな」


「‥…化け物めッ!」


 自然とガイストは口から漏れたのはそんな言葉だった。確かに火炎鳳剣イフリート程の明かりがあれば相手の口の動きは分かるだろうが、口の動きからその内容を読み解くなど、ガイストには不可能なもので、何より恐ろしいのは、ここに来る前、事前に自らの鼓膜を破るという行為が狂気の沙汰としかガイストには思えず、思わず後ろへと一歩下がってしまう。


「おいおい、この期に及んで逃げれると思っている訳ないだろうな?」


「ひ、ひいぃ!」


「俺は怒っているんだ。大切な存在へと手を掛けた、お前(てめぇ)に対してな」


「き、消え去れっ、炎鳳煌燐(リュミール・シャイン)!」


 颯天の低い声が辺りに響き、呼応するかのように颯天の体から放出される濃密で膨大な、間近でみた勇者をも凌ぐ魔力で辺りがまるで陽炎の様に揺れ動く。それはまるで颯天が闇の世界の化身、そしてガイストが恐れる【魔王】とその姿を重ねてしまい、ガイストは(恐怖)から逃れる為に、咄嗟に魔力を注ぎ込んだままだった光をもたらす太陽の如き火炎鳳剣イフリートの光を放った。


 それに対して颯天が行ったのは、自身の前に魔力を集中させる事で対応し、次の瞬間、颯天の魔力とガイストの持ちうる最大の切り札、火の魔法炎王煌燐(リュミール・シャイン)が互いに衝突した。

 それは太陽が地上を焼き払わんとしているが如く、まさに太陽の光と言うべきもので、並大抵の物、颯天の背後の木は灰も残す事無く無へと変える中、颯天は変化なくその場に立っていた。それは錬金術で原子ではなく、魔力をその場に固定して作り上げた魔力防壁だった。


「馬鹿な、たかが魔力障壁で、俺の炎鳳煌燐(リュミール・シャイン)を完璧に防いでいる、だと!?」


「完璧ではない、今も防壁の修理に追われながら魔力を消費しているんだからな」


 颯天の作り出した魔力防壁は単純に魔力のみで作り上げた防壁で、故に幾ら魔力をその場に固定しようとも破壊されるのだが、破壊された箇所を颯天は即座に修復する事で魔力障壁を維持していたが、それは常に魔力を消費する、魔力を大量に保有する颯天ならではの荒業だった。そして颯天は【黒鴉】を鞘へと一旦納め、左半身を一歩程後ろに引く事で半身となりいつでも抜けるように柄へ右手を添える。


(いけるか、どうかは賭けに近くなるな)


 颯天が行おうとしているのは、抜刀術だが、その抜刀術は一度の抜刀で三つの斬撃を繰り出す、奥義に分類されるもので、それ相応の集中力が要求される技だった。だが今は魔力障壁に意識を割いているので、今の状況では少々難しいかった。だがこの抜刀術が、最も周囲に被害を与えない方法だったので、颯天は魔力障壁へと割いていた意識を抜刀の精神集中へと切り替え、同時に魔法の核となる部分を【霊眼】を以て探り出す。


(つるぎ)より生ずるは三閃」


 颯天が意識を集中する為に祝詞を口にする間、修理される事の無くなった魔力障壁は徐々に崩れ去って行き、遮断していた熱が颯天へと襲い掛かったが、颯天の集中力と意識がブレる事は無い。


「御技を以て、刹那の刃の輝きを、今ここに示さん」


 颯天の意識は、まるで剣と一つとなるような、斬りたい者だけを斬るという究極の感覚を呼び起こす。そして【霊眼】を以て、魔法の核を捉え、抜刀する。


「抜刀、【剣翼三光(けんかさんこう)天燕(あまつばめ)


 颯天が剣を抜刀すると、一の(やいば)襲い掛かっていた極光の様な炎を断ち、二の(やいば)火炎鳳剣イフリートを具現化させていた魔法の核を切り裂き、終りである三の(やいば)で、ガイストの魔力の根源を両断し、ガイストからあふれ出していた魔力が目に見えて減少し始めた。それはあたかも底が抜けたコップであるかのように。


「貴様、何した!」


「単に、お前の魔力の根源を斬った。これでお前はもう、魔法が使える事は無い」


 颯天が切り裂いたのは、魔力を生み出す、心臓に宿る魔力を生み出す泉の源泉そのものを切り裂いた。もしこの世界で切り裂かれた魔力の源泉を治すのであれば、かなり魔法に精通した腕のいい治癒師でもなければ癒す事さえできない程の傷を颯天は与えていた。


「魔力が、俺の魔力が消えていく‥‥」


「それが、今までのお前の行いへの報いだ」


 颯天はガイストにそう言うと、視線を外し抜いていた【黒鴉】を静かに鞘へと納め、それと同時に放出していた颯天の魔力も納まっていた。そして気づいた。伏見たちがすぐそこまで来ているという事に。それと同時に颯天は悪寒に似た感覚を感じ咄嗟にガイストの方を向き身構えた。

 すると、ガイストのすぐ傍に、黒い何かとしか形容出来ない者が立っており、ガイストの表情は青を通り越して白くなっていた。


「ま、【魔王】様ッ!?」


「へえ、こいつがそうか」


 内心で冷や汗を流しながら、黒い靄が人の形を辛うじて保っている【魔王】へと視線を向けた。しかし黒い靄の人、【魔王】はこちらを向く事は無く、その視線はガイストにのみ注がれていたが、ガイストの表情はもはや白としか言えないほどに白く、視線を向けられていないのに、辺りにプレッシャーを辺りにまき散らしており、颯天の肌にも痛いほど伝わってくるほどだった。


「失敗をしたな。ガイスト」


 その声は、まるでノイズが走っているように、言葉としては理解できるが、どのような声なのか聞き分ける事は出来なかった。


「ま、魔王様…私は‥‥」


 ガイストは何か弁明の言葉を口にしようとした時、黒い靄の腕がガイストの胸に突き刺さっており、靄の様な腕には赤い雫が伝い垂れ、地面に赤い血だまりを作りつつあった。そのまま靄の腕は一息に引き抜かれ、その手の中には未だに脈動を続けるガイストの心臓が握られていた。


「ま、魔王‥…様‥‥‥」


「弱い者など、我には必要がない。消え去れ」


 靄の手の中にあった心臓が握りつぶされ、ガイストはまるで糸の切れた人形の様に自らが作り出した血の池の中へとその身を沈め、二度と動く事は無かった。


「さて、それでは戻るとするか」


「おいおい、無視して帰るのか?」


 まるで、なんとでもないように手に付いた血とガイストの心臓を焼き払い、その場を後にしようとしていた【魔王】に対して挑発的な口調で話しかけた事によって、【魔王】はその足を止めた。


「我は貴様に用が無い。故に見逃そうという機会をみすみす逃す愚か者か、貴様は?」


 視線が向いた瞬間、颯天は全身の産毛かそう立つようなプレッシャーを感じたが、颯天は何とでもないかのようにその場に立っていた。


「ほお、我が視線にも耐えうるか」


「まあな。それで聞くが、どうして俺と戦わないんだ?」


 顔などは一切見えないが、その声音の中にちょっとした驚きと興味惹かれたように颯天は感じたので、尋ねて見る事にした。


「何、少しばかり我の部下を、いや元部下を圧倒した人間を見てみようと思ったのだが、なるほど、よもやお前の様な人間が居るとはな」


「へえ、見ただけで分かるのか?」


「いや、貴様から発せられているオーラだが、もはや人間のモノでは無いな」


 それだけで話は終わりという事か、黒い靄はその場から最初から存在していなかったかのように闇へと消え去り、颯天と血だまりに沈んだガイストだけが残った。


「やれやれ、トンデモない奴がいたもんだな‥‥」


 そう言いながら颯天は流石に伏見に死体を見せるわけにはいかないので火遁【滅炎】で血だまりを蒸発させ、幾ら怒りを抱いた相手とは言え、死んだ後まで放置するのは流石に可哀そうだと思い死体は火葬し、その全てが終わった時、微かに声が聞こえてきた。


「う‥‥ううぅ‥‥…あれ、ここは‥…それに貴方は?」


「ああ、ようやくお目覚めか、やれやれ、地球(あっち)でのヤ〇ザの時もそうだが、変なところで巻き込まれる所があるな、穂河明日香?」


「え、どうして私の名前を?」


「まあ、ちゃんと説明するから少し待て。まとめて説明した方が早いだろ」


 穂河はどういう状況なのか、まったく理解できていないようだったが、颯天の言葉を聞いて頷いた。そして少しすると伏見と白夜が姿を現した。


「お待たせ、あ、もう助け出してたんだ?」


「ああ、まあ予定外の事もあったがな「もしかして、伏見さん?」」


 穂河が思わず颯天の言葉を遮り口にしたのは、猫耳と尻尾、そして髪の色こそ変わっているものの、それ以外は外見が全く変わっていない伏見に穂河が気が付くのはある意味で当たり前で、颯天が待つように言ったのも、まずは見知った人間の後の方が色々と信じやすいと考えたからだった。


「そう、私が分かる?」


「うん。同じクラスの人は覚えてるよ。それにしても、伏見さん、この人は一体?なんか親し気だし、それに何処か聞き覚えがある声なんだけど」


「分からない?」


 伏見の問いの中には、まだ颯天だと気が付いていないのと言う意味も含まれていたが穂河は頷くだけだった。そこで颯天はネタバラシをする為に着けていた黒いバンダナを取った。


「つまり、こういう事さ、穂河?」


「え‥‥…も、もしかして‥‥‥影無、君?いやそれにその恰好は‥…」


「ああ、見覚えがあるのは当然だろうな、だってあの時助けたのは、俺だからな。因みに死んだのは分身で俺は正真正銘生きているからな?」


 急激に多くの情報を与えた影響か、穂河はフリーズした後、


「ええええええええええええぇぇぇぇぇ!」


 森に驚愕の声音を多分に含んだ大きな声が響いたのだった。

今回は颯天が魔王と初顔合わせ?と穂河に対して正体を明かすお話を書きだしました。戦闘シーン、今はアレが限界ですが、精進していきます。

因みに最後の辺り少々力尽きかけでしたので、しょうもない内容になっていれば申し訳ありません。

予定では、次回は街に戻った辺りの話を書けたらと思っています。そろそろ颯天の旅の内容を考えなければいけないと思い始めています‥…(焦り)

取り敢えず、次話は二週間ほどで、投稿できればと思いますので、楽しみに待っていただけるとシウ自身嬉しいです。おかしな箇所など、疑問があれば報告していただけますと嬉しいです。それでは、また次話で。

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