第一章 第十一話 「出発」
ふう、修正、加筆が終わった…投稿。腕が‥‥
「安らぎの風」
柔らかな朝日が部屋に差し込むなか颯天は目覚めた。
「う、ん~ん。朝か・・・ふあぁ・・眠い。けど今日はあいつと会えるかもしれないからな。シッ、気合い入れておくかな。」
頬を叩き気合を入れ、ベットから体を起こし、装備の最終確認をしつつとそれらを身に着けていく。するとコンコンと優し気にドアをノックされた。
「お兄ちゃん、朝ですよ、ご飯もできましたよ?」
「ああ、今から行く」
颯天が答えるとニアは下へと戻っていった。
「・・昨日と同じ感じだな。まあ平和でいいが」
颯天は自嘲気味に言った後、そして最後に、背に【雷切】を腰に【黒鴉】を差し込み動かないよう、そして動いた際に邪魔にならないように、固定する。
そして昨日錬金術で一部改造した特殊プロテクターを両腕に着け、腰のポーチの中を確認しているとある物が出てきた。
「これは・・・」
それは、颯天にとって懐かしくもあり、颯天が傷を負った出来事を思い起こさせるモノだった。
「お兄ちゃんおはようです!」
「ああ、おはようニア。朝から元気いっぱいだな」
「はいです!ニアはお兄ちゃんの前だといつも元気いっぱいです。あれ?お兄ちゃんその手に持っているものは何ですか?」
「ああ、これか」
ニアが見つけた颯天がミアに見えるように見せたのは、薄い紙に何やら文様らしきものが描かれたものだった。
「これは?」
「ああ、これは俺の故郷で俺に姉のように接してくれた人が俺の為に作ってくれたものだよ。さっき荷物を整理している時に出てきたんだ」
へぇ、とニアは珍しい物に興味が惹かれたのか、興味深そうに颯天の手の中にある札とも言えなくもない紙を見ていたが、颯天がこれから依頼に出かけるのを思い出したのか、興味はあるが颯天の邪魔をしたくないのだろう、ニアは少し距離を置いた。
「ご、ごめんなさい。つい夢中に見てしまって、あ、朝ご飯持ってきますね!」
「あ、ああ」
ニアはそう言うと厨房へと走っていってしまい、食堂の中で颯天だけが残された。
「やれやれ、見ていてもよかったのに・・・まぁ、あれだけ自制できるなら将来はすごい子になるかもな・・・」
颯天は誰に告げるもなく、独り言のようにつぶやき、いつもの当たり毎になっている、自分の席に腰を落ち着けた。そして手に持っていた札に視線を向けた。
「まさかこれが出てくるとはな・・・あっちで姉さんに習った呪術の触媒となる札【呪符】。そうか、どおりで見つからなかったと思ったら、この中に入れてたのか。それにしても懐かしいな。姉さんには散々しごかれた思い出しかないが、まぁ今の俺があるのは姉さんのおかげでもあるしな」
「お兄ちゃん~、朝ご飯持ってきましたよ!」
「ああ、ありが・・・ちょっと量が多くないか?」
ニアが持ってきてくれたのは普段の食べている朝食の倍以上の量だった。普段、颯天はあまり食べる方ではないのだ。それも多めの朝食はなかなかにきついものがあるのだ。
「お兄ちゃん、もしかしてこの量は食べれないですか?」
「いや、食べれるよ。ただ量が多いなって思ったからね」
反射的に食べれると言ってしまった颯天は自分の発言に後悔した。
(やべっ、つい食べれるって言っちまった。でも、ニアに見られているとどうしても頑張りたくなっしまうんだよな。それに目をウルウルさせて上目使いは・・・反則だろ!)
颯天が内心ではそんなことを思っているとは知らないニアは純粋に颯天が食べるといったのがうれしかったのか笑みを浮かべる。
(グハッ!)
この瞬間表面上ではどうにか繕う事が出来たが、内心では颯天はノックアウト寸前だった。純粋な笑み程、人を落とす方法はない。
「さて、じゃあ、いただきます」
颯天は自分の目の前の朝食にしては大盛りという名の料理と言う敵に挑んでいった。
「‥‥‥ふぅ、ごちそう、さまでした」
颯天は何とか目の前の朝食(量は昼食並み、それも大盛)を食べ終え、一息つく。普段の倍以上の朝食の量は流石に…
「さすがに、少しばかりきつかった。」
膨らんだ腹をさすっていると厨房の方から足音がして、誰かが出てきたこの宿の亭主にしてニアの親であるアルセトだった。
「ハヤテさん、申し訳ありませんでした。まさかあの子があれほどの量を出していたとは」
アルセトの言葉にどうやら先ほどの量は明らかに多かったようだと颯天は理解した。それにしても気になるのはニアが何故量を載せたんだろうか?と颯天がそんなことを思っていると何となく分かったのかアルセトさんが説明してくれた。
「実は、今日あなたが依頼で街を出られると聞き、あの子があなたが力を発揮できるようにと思っての事だと思うのでどうか、あの子の事を嫌いにならないで上げてください。」
アルセトさんの思いがよくわかり、おかげで俺の疑問も氷解した。いや、答えが単純で分かっていた事であった。
(なるほどね、この世界の外は常に危険が伴う、だからこそ力が出るようにと思ってニアはこれだけの量を載せたのか)
その理由さえ分かれば颯天が嫌いになるという事もないし、嫌いになる要素すらない。
「ええ、分かってますよ。ニアがわざとやったんじゃないってことは。だけど、できれば次はいつも通りの量の朝食で頼むとニアに伝えてください。それと、悪いことはしてないのでニアを叱らないであげてください、寧ろ、美味しかった、ありがとうと伝えてください」
「え、ですがそれでは」
「今回のはニアが俺のことを思ってしてくれたことです。それをとやかく言うつもりも俺はありません。失敗は次に活かせば問題は無い。だけど、間違ったことなんかがあれば、ちゃんと叱ってあげてください。俺からいうことはこれぐらいです。」
「分かりました」
「じゃあそろそろ行かないといけないので。御飯ご馳走様です」
颯天は話している途中に窓から日の傾きを確認し、そろそろ時間だと判断し、ご飯の事のお礼を言うと席を立ち上がり、そのまま「安らぎの風」を出ると、集合場所である町の正門へと向かって歩き始めた。
「気を付けてね」
宿を出て街の門へと向かう颯天の背に表に出て見送ってくれているニアに颯天は片手を上げて応え、そのまま集合場所である街門へと歩みを進めた。
「さてと、街門は確かあっちにあったな。よしこのままだと体が重いし、街門まで少し走っていくか」
颯天はその場で軽く体の柔軟を行い、目的地で待ち合わせ場所である街門へと向かって走りだした。
傍から見たらそれは普通の人から見たら全速力で走っているかの速さだったので、周りの人は走っていく颯天を見た街の住人は思わず颯天を二度見したのだった。
そして、「安らぎの風」を出て数分後、颯天は街門へとたどり着いていた。
「ふぅ、到着っと。さすがに少し着くのが早かったかな?」
そう言って辺りを見回すと朝早いというのに人通りは昼間以上に多かった。特に荷物を積んだ馬車がひっきりなしに出たり入ったりを繰り返していた。
「仕方ない、待つか。幸いこれだけ大きい街とあって人通りが多いから、宮廷騎士団が来るまでの間、眼を鍛えるためにここで観察をさせてもらうか」
颯天は早速、街門を行き来する人を観察し始めた。
「なるほどなるほど、この町の特産品は地球でいうところのメロンみたいなものが有名のようだな。依頼が終わったらニアに御土産としてもいいかもしれないな、お、あっちの荷車は武器か、ふむ、いくつか業物が混じってたな。その次の荷車には・・・」
「ほお、変わった事をされておられる」
「いえ、これもいい鍛錬になりますよ。ところで」
颯天はすっかり観察にハマってしまっていた。この街には何がどういうものが入ってきて、何が出ていくのかを見ていたが、徐々に熱が入ってしまい、現状に至る。そして背後から颯天に声を掛けてきた人物に颯天は尋ねた。
「貴方は誰ですか?」
颯天が後ろを向くとそこにはこの世界に転移した際に見た姫様の近衛の兵士の鎧に似た物を纏っている男が立っていた。
年はおよそ三十代後半だろう、顔には実戦の物か、それとも訓練の時に着いたものかは分からないが、左頬と右眉に切傷がありそれが男の放つ雰囲気をより一層強くしていた。目も鋭く、リスなどの小動物はにらみつけられただけで死んでしまうのではと思わせるする鋭目だった。しかし颯天は一切動じることなく男を見返した。
「お前が、今回依頼を受けた冒険者か?」
「ああ、そうだ。ところで、今回の依頼主で勇者のお供の宮廷騎士団団長のデュオス・エルメドか?」
「ああ、そうだ、年上に対して敬語も言えないのか貴様は?」
デュオスの体から怒気とも殺気ともとれる威圧が颯天を襲うが颯天は涼しい顔をしたまま表情を一切変えなかった。
「そういう貴様は、危機感、いや、相手の実力の把握が出来ていない自惚れか?」
そう言葉を返しながら颯天の眼に鋭さが増していく。それはまるで触れればすべて切り裂く刃のようだった。
「何を言っておるのだ、実力なら私の方が・・・ぐっ」
デュオスは先ほどまで自分が発していた威圧を遥かに上回る、鋭い刃物のようとしか形容出来ない様な、鋭い圧倒的で暴力的による圧力が颯天の眼から発せられていた。
デュオスの額には冷や汗が浮かび上がる。今目の前にしている男のまるで全てを飲み込むような黒い眼に恐怖した。
しかしデュオスは一歩も引かなかった。常人であれば颯天の威圧に当てられると即座に気絶してしまうだろ。デュオスはそれを気合で耐えていた。
これは一重にデュオスの精神が常人より遥かに鍛えられていることの証であった。その証拠にデュオスの後ろで颯天からは見えない様に待機していたデュオスと同じ鎧を身に着けたの部下が、颯天の威圧にわずかに触れてしまい、一瞬で気絶して倒れたのだから。部下が倒れたのを見て颯天は威圧を止めた。
「なるほどアンタは確かに強いようだ。だが部下の方はまだまだだ」
そう言いながら颯天は立ち上がる。そして後ろにいるデュオスへと話しかけた。
「さて、こんなことをやるためにお互い来たんじゃない、さっさと目的地に向か。悪いが勇者たちへの説明は任せた。」
「・・・・了解した。」
何処か投げやりな颯天の態度にデュオスは納得しがたい表情を浮かべていたが、力の一端に触れたお陰なのだろうか、デュオスはそのまま他の部下を連れ、倒れた部下を担ぎながら離れて行った。恐らくデュオスが行く方向に勇者達、地球でのクラスメイト達が居るのだろうが、別に今は良いだろうと颯天は再びデュオス達が戻ってくるまで再び街門を行き来する人たちを観察し始めた。
「さて、今頃あの騎士団長様はこう思っているかもしれないな。勇者達のいい目標になるかもしれないって」
そう独白したが、それを聞いている者はいなかった。
(…なんて威圧だ、まだ若い身であるのにあそこまでの力を持っているとは、いったい彼は何者なんだ。年も勇者たちとあまり違わなかったではないか。だがこれは・・・勇者様方にとってはいい目標になるやもしれない)
颯天に予想されているとは露知らずにデュオスは内心そんなことを思いながら、この場にいない勇者達と行動を共にしている部下と勇者たちが待つ場所へと向かっていた。
そして勇者達と合流すると勇者達にこれから行く場所、食料などのの確認、移動の際のノウハウについて説明し終えると、先程の冒険者が待つ街門へと向かった。
「さて、それじゃあ、行くぞ」
颯天は勇者達と騎士団たちに聞こえる程度の周りから注目を集めない様に配慮した大きさの声で言うとそのまま歩き出した。
「よし、我々も行くぞっ」
デュオスとその部下、そして颯天と一緒に召喚された勇者たちは目的地であるミュールの森場所へと出発したのだった。
いよいよ、ドラゴン討伐に出発。
次の話は‥‥二週間以内に投稿したいです。どうかよろしくお願いします。
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