第5話 流れ星〜過去〜
夜中の2時前。あたしたちはなるべく暖かい格好をしてしゅんの家を出た。流れ星を見るために。
今いる場所は、よくわからない所。しゅんの小学校の校区は全然来たことないから、全くわからない。だけど、だんだん暗くなってきて車とかもほとんど走ってない。流れ星を見るのにイイ場所に向かってるんだと思う。
だけど、少し不安。このまましゅんが先にどんんどん行っちゃったら……と思うと。
何処まで行くんだろう? いつまで歩くのだろう? 疑問があたしの頭を駆け巡る。でももししゅんに訊いたら、俺について来たらわかる、とかって言うだろうな。
「ねぇしゅん。何処まで行くの?」あたしは、言ってくれるかもしれない、という期待を持って訊いてみる。
「流れ星が綺麗で沢山見れる所まで。……もしかして、不安?」そう言って訊かれたから、あたしは頷く。
「ならさ、こうしとけば大丈夫だろ?」
そう言ってしゅんは、あたしの手をギュッと握る。あたしは少し驚いたけど、しゅんの手をギュッと握り返す。
それからあたしとしゅんは喋らなかった。
どれくらい時間が経っただろう。どれくらい歩いただろう。急にしゅんが立ち止まる。たぶん目的地に着いたんだと思う。そこは、もうほとんど光がなくて真っ暗な状態。電灯が少しだけあって、その光でそこがどんな場所かがやっとわかるくらいの暗さ。
「あ、ここ」しゅんは言う。
「ここ?」
「ああ」
しゅんはそう言って、握っているあたしの手を引っ張る。
そこは公園で、ブランコとかシーソーとかがあった。しゅんがあたしの手を引っ張って連れて来てくれたのは、芝生。少し盛り上がって丘みたいになっている所。
その丘みたいになっているところの一番高いところにあたしとしゅんは座る。それから2人ほぼ同時に空を見上げる。
そこには、無数の流れ星が行き交っていた。
「綺麗……」呟いて、思わず見とれてしまう。
「すっげぇなぁ」と、しゅんも呟く。
しゅんがそう言ったあとに、あたしは寝転ぶ。そしたらしゅんも寝転ぶ。
「しゅん。これは知ってるよね?」不意にあたしは訊く。
「なに?」
――流れ星が流れる間に、3回願い事を心の中で唱えれば願いが叶うってこと。
――ああ、知ってる。けど。
――けど?
――俺のことは、願わないでくれよな。
――どうして?
――だってさ、なんか照れるじゃん。
――そんなことないよ。さ、願い事しなきゃ。
あたしがそう言ったあと、あたしとしゅんの間に数分沈黙が流れる。あたしもしゅんも、寝転んだまま手を合わせて願い事をしていた。