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流れ星  作者: 沖田さくら
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第16話 流れ星〜現在〜

 しゅんと流れ星を見に行ったときと同じくらいの時間、夜中の2時頃。あの頃と同じように、あたしたちはなるべく暖かい格好をして、あたしの家を出た。あのときみたく、流れ星を見るために。

 あのときと違うのは、出発した家があたしの家だってことと、あたしの隣にいるのがしゅんじゃなくて本田だってこと。

「本田」

 あたしは本田の名前を呼んだとき、少し不安になった。今あたしが見ている光景は幻で、“本田 和哉”なんて人物は存在しなくて、あたしは現実逃避をしていて隣にいる人は返事をしてくれないんじゃないか、って。

「なんだ?」

 だけど、その不安はすぐに消えていった。右隣から、あたしの大好きな本田の、みんなより少しだけ低い声が聞こえたから。

「手、つないでもいい?」

「ああ」

 返事を聞くと、あたしは本田の大きな手を握る。温かい。しゅんと同じ温もりだ。少し残っていた不安も、一気に何処か別の場所へ行ってしまう。

「な、何処まで行くんだ?」

「なんかしゅんの通ってた小学校の校区の端っこの方。あたしとしゅん、小学校違うくてさ。遠いの、しゅんと見に行ったその場所」

「へぇ〜」

 そのあと少しだけ会話すると、あたしらは何も喋らなくなった。何も喋らずに、ただただ歩いて。何故か、一言も喋らずにいる沈黙空間(くうかん)が、その時はとても落ち着いた。


 どれくらいの時間が流れ、どれくらいの道程を歩いただろう。3年前のしゅんと来て一緒に流れ星を見た公園へと着いた。

 あたしと本田は、あの芝生へと足を進める。しゅんと其処で一緒に見た、少し盛り上がって丘みたいになっている芝生へ。

 この公園――そう言えば、この公園の名前って知らないなぁ。帰るとき、覚えてたら見て帰ろうかな――は、3年前と何も変わってはいなかった。3年前みたく、ブランコとかシーソーとかがある。何処にでもあるようなただの公園のままだ。

「ここでね、しゅんと流れ星見たんだ。絶対に見れるっていう保証はないんだって」

「へぇ」

 本田の返事が合図になったかのように、あたしと本田は、3年前のあたしとしゅんと同じように、ほぼ同時に空を見上げる。

 其処には、3年前と変わらないまま、無数の流れ星が行き交っていた。

「すげぇ……」

 空を見上げて、流れ星が視界に飛び込んできた瞬間、本田が声を漏らす。

「綺麗……」

 つられてあたしも、あのときと全く同じ台詞が口から出てきた。


――なぁ、瀬戸内。

――なに?

――願い事、もうしちまったか?

――ううん。まだこれから。

――あのさ。

――ん?

――俺のことは、願わないでくれよな。

――あっはは。照れるんでしょ?

――まぁ、な。でも、どうしてわかったんだ?

――それはね。


「しゅんも同じこと言ってたから」

「同じことを?」

「うん。『俺のことは願わないでくれ』って言うから、理由聞いたら『なんか照れるじゃん』って言うの」

 あたしがそう言うと、本田は黙り込む。何かを考えているかのように。

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