第13話 もう一度見たい
あれから日々は、何事もなく順調に過ぎていった。気づけばもう、しゅんと流れ星を見に行った季節。“秋”という名の想い出の季節。
あたしが本田を、流れ星を見に行こうと誘ったのは、そんな季節のとある晴れた日のこと。
その日は、いつもより早く目が覚めたから、いつもより早く家を出た。学校までの道程をゆっくり歩きながら、あたしはあの日に思いを馳せて。もう一度流れ星見たいなぁ、なんて思ったりして。
「ね、本田」
「なんだ?」
「明日、空いてる?」
「明日? あぁ、空いてるけど……」少し不思議そうに本田は答える。
思えば、付き合い始めてからまだ1度もデートというものをしたことがない。一緒に登下校すらしたことがない。ただ学校で喋ってるだけ。
「流れ星、見に行かない?」
「いいけど……急にどうしたんだ?」
「もう一度見たいなぁ、って思ってさ」
「そっか」
「あ、そうだ! 明日あたしん家泊まってってよ!」ふと思い立って、あたしはそう言う。
「瀬戸内の家に?」
「うん!」
「いいのか?」
「いいから誘ってるの♪」
「じゃぁ、お邪魔させてもらうわ」
――キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴ると、みんなが一斉に動き出す。自分の席に戻るために。予鈴は既に鳴っていたみたいで、さっきのが本鈴。
「あ、瀬戸内」
「ん?」
「明日何時に何処集合?」
「そだなぁ……昼間はお母さんにいろいろ頼まれたし、6時半くらいにここの正門でいい?」
「いいぜ」
そう。明日は休みなんだけど、お母さんとお父さんは仕事の都合で出張が重なって、お姉ちゃんは友達の家に泊まりに行く約束をしてて、家にあたししかいない。だから家事は全部あたしに任された。洗濯とか掃除とか、とにかく全部。休みの日に朝から起きるのは嫌だから、全部昼からすることにした。洗濯は、朝お母さんが洗濯機を回して行ってくれるみたい。
ねぇしゅん。聞いてる? 流れ星、見に行くよ。大好きなしゅんと一緒に流れ星を見に行った同じ日に、同じ場所に、大好きな本田と一緒に見に行くよ。
本田はね、しゅんにそっくりなんだよ。顔や声、あたしだけを和ませてくれる独特な雰囲気はもちろん、優しさとか仕草とか、すっごいしゅんに似てるんだよ。だからって勘違いしないでね。しゅんの面影を追って本田と付き合ってるんじゃないってこと。確かにしゅんと本田は似てるよ。でもね、違うところも沢山あるの。その違うところに惹かれたんだよ。もちろんしゅんに似てるところ――優しいとことか、仕草とか――にも惹かれたけどね。
あ、本田の話ばっかりしてたらしゅん、ヤキモチ焼いちゃうね。いつも平静を装ってるけど意外とヤキモチ焼きさんだったもんね。
しゅん、ありがと。なんか今更ーって感じだけど……。ホントにありがと。大好きだよ。