第11話 想い出、告白
あれからどれくらい、本田の腕の中で泣いていただろう。泣きやんでから、しばらく本田の腕の中にいるとき、ちらっと外を見たらもう真っ暗だった。
「ありがとう」あたしは本田の腕の中で言う。
「ああ」そう言って本多は、あたしを離す。
あたしは俯いて目をこする。涙の跡を拭うために。
「瀬戸内」
「ん?」本田に名前を呼ばれたから、あたしは本田を見上げる。
あぁ、懐かしい。よくしゅんのことをこうやって見上げていたなぁ。
「笑え」頭を右手の人差し指で掻きながら、顔を真っ赤にして本田は言う。
「うん!」あたしはそう言って笑う。
満面の笑顔になってたかはわからないけど、きっと前みたいに、しゅんと一緒にいた時みたいに笑えてたと思う。
「……好きだ」突然、顔を真っ赤にしたまま本田が言う。
「へ……? 今、なんて……?」
あたしがそう言うと、本田に手首を掴まれて、グイッと引き寄せられる。気づけば、あたしは本田の腕の中。
「だからッ! 好きだっつったんだよッ!」怒鳴るように本田は言う。
きっと本田、今顔さらに真っ赤だと思う。しゅんとも似たようなことがあった。
まだあたしとしゅんが付き合い始めた頃、しゅんがあたしに好きだって言ってくれて。あたしはちゃんと聞いていた。だけど、聞こえなかったフリして、しゅんをからかって。そしたら今の本田とおんなじことして。あたしはしゅんの腕の中からすり抜けて、しゅんの顔を見てみたの。しゅんの顔は、林檎みたいに真っ赤で。
だからたぶん、本田も今、林檎みたいに顔が真っ赤だと思うの。
「っははは、あははっ」あたしは本田の腕の中で笑い出す。
しゅんと本だが、あまりにも似てすぎて、なんだか面白くなって。
「なに笑ってんだよッ! 人が真面目に告ってるってのに」
「ごめんごめん」
「で、返事は?」
絶対照れてるな、と、あたしはこの台詞で確信した。答えを急かすから。
「好き、かな?」
「ハッキリ言え」
「じゃぁ好き」
「じゃぁ、ってなんだよ」
「あははっ、ははっ」
「?!」
いじりがいがある。しゅんと本田はおんなじだ。似てるだけのところもあれば、全く同じなところもある。
「好き。傍にいて?」あたしはいきなり言う。
笑うのをやめて、静かに、真剣に。
「ああ」本田も、あたしが言ったように静かに真剣に言う。
腕の力が強くなる。やっぱり好きだなぁ、って感じる。ギュッて強いけど、優しい腕の力。腕の中のこの暖かさ。あたしの気持ちだけを和ませてくれる独特の雰囲気。本だの全てが好き。本田の全てが愛しい。
しゅんのことは、絶対に忘れない。本田を好きでも、永遠のナンバーワンはしゅんだけ。しゅんのことは、全部想い出に変える。色褪せることなんて絶対にさせない。しゅんはかけがえのないあたしの一番大切な人で、一番愛しい人だから――。