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風が吹いたら桶屋が…

作者: 高橋勇樹

バタフライ効果というものをご存知だろうか?

ブラジルの一頭の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を起こしうると例えられるもので、初期でのごく小さな差異が後の結果として大きな差異を生じるというものである。


日本に古くからある諺に「風が吹いたら桶屋が儲かる」があるが、これもバタフライ効果を示す例えとなるだろう。


それでは本題に入りたい。

私はテロリストである。


我が国の政府は政治家個人の利権を争うばかりで、とても国民の幸福を考えているとは思えないのである。

もちろん、こういった政治家を選挙で選んでしまっている国民にもその責任はある。


私はこの状況を非常に憂慮し、皆の目を覚まそうとこれまでも街頭でのデモやサイトを通じて訴え続けているのだが、いっこうにその効果が表れないのが現実である。


そして私はセンセーショナルなテロリズムを起こす事で皆に危機感を提起したいと結論した。

しかしながら私には爆弾を作る知識も能力も無ければ、それを人知れず設置する能力も無い。

ついでに言えば私には協力者さえいないのである。


普通ならここで諦めて、この理不尽な現実を受け入れ苦渋を舐めながら生きて行く道を進むのだろうが、私にはどうしても諦める事が出来なかった。

我が国の真の幸福の為に、全ての国民の幸福の為に、私が動かなければならないのだ。

これは私にさだめられた使命に他ならない。


ある日、私はカオス理論、バタフライ効果というものを知り「これだったのだ!」と気が付いたのである。

何も爆弾を仕掛けなくてもバタフライ効果を応用すれば任意の場所を破壊する事だって可能なのである。


そして私は「国会議事堂を破壊する」という結果から遡り、結果に至るまでの過程の全てを計算する事に成功したのである。


まず最初に、私は政府に宛てて予告状を送りつけた。私だってなるべくなら誰の命も奪いたくはないのである。


そして予告通りに国会議事堂を破壊する為に計算から導き出された行動を実行する。

その行動とは実に簡単なことで、とある場所で2リットルの水を20分間沸騰させるのだ。

そうして生じるわずかな空気の流れが周囲の環境に少しずつ作用していき、結果的に1時間後に議事堂を破壊するのだ。


私は予めの段取り通りに計算された場所である山間のキャンプ場へ移動し携帯用のガスコンロに火を点し大きめの鍋で水を加熱し始めた。

全てが計算通りである、5分経って鍋の中の水が沸騰を始めた。


突如として空が暗くなって来た、雲ひとつ無い快晴だったのにもかかわらず、たちまち重苦しい雨雲に覆われてきたのだ。

ちょっと待て、こんなの計算には含まれていない。

私の計算は完璧であり、全て計算通りに作用が進んでいくはずなのだ…


急速に発達した雨雲はゲリラ豪雨となり鉄砲水をもたらした。

私は予期せぬ鉄砲水をもろに食らってしまい瞬く間に激流に飲まれてしまった。

激流の中、スイカほどもある石に全身を打ちのめされ、すぐに肺を泥水が満たした。

全ては計算通りだったのに、何かが突発的に作用した為に計算に狂いが生じたのだろう。


ほどなく私は絶命し、議事堂を破壊する旨の脅迫状が届いたが何事も起こらなかった事と、局地的な豪雨の為に鉄砲水が発生した事が夕方のニュースで報じられるだろう。






一ヶ月前のブラジルでの出来事…

ある小学校の教師が算数にまつわる面白い話しとしてバタフライ効果を引用した。

それを聞いた小学生が放課後に蝶の真似をして羽ばたいてみせた。

「オイラの羽ばたきが地球の裏で大嵐を起こすかもな!」



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