4. 中学校(ナツ視点)
生まれて初めて両親に頭を下げた。ちょっと、いやかなり驚いていたけど何処か嬉しそうにする両親は、好きにして良いと言ってくれた。転勤で三年も千里から離れてしまったから変な虫が付いてないか不安になったが、今の所まだ大丈夫そうだった。まぁ、神田がいるしね。
「ナーツー?早く帰ろうぜ〜。」
「あぁ、今行く。」
部活が終わって、草太と一緒に校門へ向かう。もといた町とはいえ転入してすぐにこの学校に馴染めたのはこいつのおかげだろう。
草太も千里と同じ頃からの友達で、うん、まぁ親友って呼べる間柄かな。アホだけど。
「そういや、ナツってさぁ、高校…」
「あっ、あの!黒澤先輩っ…」
「ん?何?」
何?とは返事はしたけどまぁ、大体何の用かはわかる。
「草太。ちょっと先行ってて。」
「はいよー。」
こっちに戻ってきてから、妙に女の子にモテるな…
目の前の女の子は俯いて真っ赤な顔で…小さく好きですと言ってきた。
「ありがとう。でも、ごめんね、今は恋愛とか考えられないんだ。」
優しい笑顔と共に何度も口にした言葉。
千里以外の女の子なんて興味が全くわかない。
「で、どーだった?」
「どーって。別に何も変わらないさ。」
「まー、しかし良くモテるな。みんなお前の外見に騙されてるな〜。」
「騙すも何も…」
「騙されてるだろ?ちーちゃん含めて。」
「好きな女の子の為に努力してるだけさ。それに別にちさとに隠すつもりも無い。そろそろ異性として見てもらいたいしね。」
「うわぁー、ナツのスケベー!あぁーちーちゃんが穢されていく気がする〜!」
キャーキャーと騒ぐ草太が煩いから蹴りをお見舞いしてやった。
「そう言えばさっき何か言いかけてたけど?」
「いてぇ…ナツって相変わらず酷いなぁ。あぁ、高校。ちーちゃんのとこ受けるんだろ?」
「もちろん。」
「俺も受けようかな。」
「…。」
「あっ!何だよ、その目。俺じゃ落ちるってか?」
「…まぁ、受けるのは勝手だけど、滑り止めは絶対落ちないでよ?」
「んなこと言って、ナツが落ちるなよ〜?」
「俺は推薦でも試験でも落ちないから、心配しなくていいよ。」
「ずりぃ…。」
そう、千里と同じ高校へ行く為にできる努力は前の学校でも全部した。進学校だった為二年が引き受ける生徒会長なんて面倒なものになったり、生徒の鏡なんて言われる存在なんかに好きでなりはしない。
全ては千里と居たいから。ただそれだけだ。