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35. お正月

「あけましておめでとうございます!」


今日はさすがに冬季講習も休みだ。朝から新年の挨拶をして、おせちとお雑煮を頂く。ちなみにお雑煮は毎年父母のじゃんけん対決によって白味噌がお澄ましか決まる。今年は白味噌だった。


「ちいちゃん、じゃそろそろ行く?」


「あら?二人で初詣?」


母親が質問してきた。


「あ、うん。」


「じゃあ折角だし振袖着たら?年に一度くらいは出さないと傷んじゃうし。」


「えっと…」


ちらりとなっちゃんの様子を見る。


「俺は急いでないし良いよ?」


「あっ、じゃあなっちゃんちょっと待っててね?パパッと着せてもらうから!」


「ゆっくりね?」


パタパタと階段を駆け上り振袖を桐ダンスから取り出した。


「帯は…これが良いかな?」


母親の家系は京都出身の呉服屋だったらしい。もうその呉服屋はないけど、その縁で祖母から貰い受けた着物が家に結構あった。


「お母さん〜!お願い〜!」


母親を呼んで着付けをお願いした。


「その帯にするの?こっちの方が可愛いわよ?あんた若いんだし。」


「そうかな〜…子どもっぽくならない?」


「ならないわよ。まだ16でしょ。」


「じゃあ、そうしようかな。」


「ほら、後ろ向いて?なっちゃん待ってるしパパッと着せるわよ?」


「はーい。」


階段をそうっと振袖が崩れないように降りてソファで待つなっちゃんに声をかけた。


「えっと…お待たせ?」


くるりと振り返ったなっちゃんは少し間を空けて


「すごく似合うよ?かわいい…」


そう褒めてくれた。


二人で家を出て、隣町の神社へと向かった。


「大丈夫?歩くの早い?」


こちらのペースに合わせて歩いてくれるなっちゃんに「大丈夫だよ」と笑顔を返した。


神社へと向かう道の途中にやっぱり女の子がちらりとなっちゃんの方を見るのでやっぱり目立つんだな〜と考えていた。か、神様にこれ以上ライバルが増えないようにお願いしようかな…いやっ!ここはきっちりとなっちゃんの受験のことをお願いしなくちゃっ!そんな事を考えていたら道につまづいた。


「ちょっ、ちいちゃん。ぼーっとしてると危ないよ?」


「あ、ありがとう…。あれ、なっちゃんまた背のびた?」


ふと支えてくれたなっちゃんを見ると、見るというよりは見上げるところで視線があった。


「そうかな?確かに最近パジャマとか短くなった気がしてたけど…。」


「昔は同じくらいで可愛かったのに〜!」


「さすがにちいちゃんとずっと同じくらいってのは、男としては無いかな…?」


「そりゃそうだけど〜!なんかなっちゃんばっかり成長してズルい〜!」


「ズルくないよ、草太の方が凄いよ?」


「あー、うん…そうかも。あの子は何だろう。将来バスケット選手にでもなるつもりかな…?」


草太の身長は止まらない。いつまで伸びるんだって位グングン伸びてる。このままだと高校の間に190位にはなっちゃうんじゃないかな…


「あははっ、意外とそうなったりしてね?俺も希望としてはあと少しは欲しいかな〜。」


「えっ、そうなの?」


「うん、あんまり高すぎてもアレだし…」


「へー、なっちゃんにもこだわりとかあるんだね?意外かも。」


「まぁ、俺はいいんだけど…」


ちらりとこちらをじっとなっちゃんが見つめる。


「?」


「ちいちゃんが後々苦労しそうだな〜って。」


「私?えっと、きっと何も困らないよ?」


クスッとなっちゃんは笑ってそのうち分かるよと呟いた。


そうこうしている間に神社についた。


「ちいちゃん、ほら。はぐれると大変だからね?」


「もうっ、こどもじゃないからはぐれないよっ。」


「でも一応ね?」


そう言ってなっちゃんは少し強引に手をとって人の波へと歩き出した。


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