34. 手作り弁当
この話を33話として載せていました…すみません。34話です…。載せ忘れた33話きちんと載せましたorz
「えっと…ここかな?」
冬季講習実施中!ビルの窓に大きく貼られた文字を見て確認する。
なっちゃんがお母さんの料理を恋しがってると言ったら
「やだっ!かわいい!お弁当作るから、ちさと持っていってよ!」
そう頼まれた。その時に、
「わ、私も手伝う!」
と少し勇気を出して伝えたら
「じゃあ全部あんたが作ったら〜?味見だけはしてあげる〜。」
そうニヤニヤと母親が答えた。作っている最中も、「ふふふ〜っ!男は胃袋で掴んでなんぼよね〜」とご機嫌な母親だった。
「…。」
手元のお弁当を見つめ、お弁当でひとつで男の人が好きになってくれるんだったら苦労はしないよ…と思った。
「さて、と。三階だよね。」
取り敢えずなっちゃんにメールをして、受け付けの所で待つことにした。
エレベーターを降りてしばらく受け付けの前のソファで待つ。
受け付けのお姉さんに受験生と勘違いされて早く中に入るよう言われてしまった…。そのあと可愛かったかはつい間違えちゃって、ごめんね?そこのお茶とかお菓子つまんでソファで待ってて?と言われてクッキーを一枚かじった。
なっちゃんから途中、6:30に終わるから待ってて?すぐ行くから!とメールがきた。
時計の針は6時35分を示していた。
「黒澤くーん、ねぇ、今日くらいはご飯いっしょに食べようよ〜!」
そう聞こえてそっちの方を見ると、少し派手目な女の子がなっちゃんの腕を掴んでいた。
「ごめん、本当そういうこと止めて?」
掴まれた腕を解いて少し迷惑がったなっちゃんの顔が見えて声をかけた。
「なっちゃん?」
「ちいちゃん、ごめんね?待ったでしょ?」
こちらにさっと笑顔で駆け寄るなっちゃんに対して女の子の顔はキッとこちらを睨んでいる。あの子もなっちゃんの事すきなんだろうな…。
「ううん、あの、ごめんね?突然来ちゃって…。」
「良いよ?ちいちゃんならいつでも大歓迎だよ。どしたの?」
な、なっちゃん…後ろの人益々こっちを睨んでくるからそんな笑顔で大歓迎とか止めて。
「えっと、その、お弁当持って行ったら?ってお母さんが…。」
「本当?礼子さんのお弁当かぁっ!嬉しいな。」
ぱぁっと表情が明るくなるなっちゃんに、うわ…すごい期待させちゃったけど…お母さんのじゃないんだよ…と謝りたくなった。
「あっ、あの…ごめん。えと、…私が作ったの。」
「えっ!」
そんなに驚かなくてもいいんじゃない?って位なっちゃんが驚いててちょっと、いや結構ショックだぁ…。
「ごっ、ごめんねっ?今度はそのっ、ちゃんとお母さんに作って…」
謝っている最中に突然心臓がまたとまりそうになった。
ギュッと背中に回された彼の腕…ふわりと前までしてくれてた腕が今はちょっと苦しい…。っていうか他の生徒もいるし、受け付けのお姉さんも見てるし…!
「なっ、なっちゃん…!み、皆んな見てるよっ…!」
「あ、ごめん。なんか嬉しすぎてつい抱きついちゃった。」
ふわりと腕の力を抜いて極上の笑顔でこちらを見つめる彼に、もう顔が紅く染まるのを止められなかった。
「あー、俺マジで頑張れそう。ちいちゃん、ありがとうね?」
「あっ、うん…その、良かった、喜んで貰えて…。」
熱くなった頬を少しでも冷やそうと手を当てながら答えた。
「外で一緒に食べる?30分位しか一緒にいられないけど。」
「あっ、この後牛乳かって帰らないとダメだから…」
「そっか、残念。じゃあ下まで送るね?」
「あ、ありがとう…!」
自然と出された手は、繋ぐのに一瞬戸惑ったけど優しく微笑まれてしまい、彼の手にそっと手を重ねた。
エレベーターの中で、明日もさ、俺の為にお弁当作ってきてくれる…?そうこっそり耳元で囁かれて腰が砕けそうになりながらも何とかウンウンと頷いた。
なんでなっちゃんの声って耳元で聞くとあんな色気ダダ漏れなのっ⁉︎そう叫びたかった…。
あんな所みんなに見られて…明日行きにくいよ〜…!




