29. 冬休み
「ちいちゃん、ちょっといい?」
12月に入って急に冷え込んできた晩、勉強の合間になっちゃんが声をかけてきた。
「何?どこか分からなかった?」
「いや、そのさ、クリスマスとお正月って何してるかな〜って…」
「特に何もないよ?あっ、でも去年はサキの家でお菓子作ったかな?」
「今年もするの?」
「うーん、どうだろう?今年はないかも?ちょっと聞いてみるね。」
メールを打とうとしたらその時丁度サキからの着信があった。
「あ、ちぃ?今年のクリスマスとお正月はバカのせいで遊べないわ。」
「あ、やっぱり?」
なんとなく予想はしていたけど。この前の草太の模試の結果を聞いたサキは、毎日図書館でスパルタレッスンを行っているらしい…。模試の判定ギリギリBだったみたいだし…草太、大丈夫かな。まぁ、サキがいればどうにかなりそうだけど…。
小声でなっちゃんに
「サキ、冬休みはずっと草太の勉強見る羽目になりそうだって!」
と伝えると苦笑いしていた。
「それでちぃは?予定決まった?」
「あ、えっと、その多分。」
「へー、ナツと?」
「う、うん…。」
「良かったわね。あ、下着はこの前買った可愛いのにしといた方が良いんじゃない?」
「ちょっ!」
「あら?クリスマスよ?そういう事だって無いとは限らないわ?」
「なっ!ないっ!絶対っ、ないからっ!」
「あら?男はオオカミよ?あの子だって…」
な、何を言いだすんだろうっ!とサキがまだ話しているのに慌てて携帯の通話終了ボタンを押した。
「何でそんなに慌ててるの?」
「えっ、別に慌ててないっ!」
目の前で優しく笑う彼がオオカミとかなんか想像出来ないと思って見つめる。でも、、、
「何?どうしたの?」
「えっ、いやっ、、その、なっちゃんも男の子なのかなって…?」
「?男だよ?」
「あ…うんっ、当たり前だよね⁉︎あははっ、なんか変な質問しちゃったね?」
「なんか神田に言われた?」
「えっ!あっ、えっと…」
「言われたんだ?」
「そ、その…男の子はお、オオカミ…だとか…その…。」
「あぁ。まぁ、そうかもね?」
「えっ!」
「クスッ、そんなに驚かないでよ。俺女の子にでも見えてた?」
「いや、それは流石に無いけど…」
いくらなっちゃんの顔が整ってようと女の子には見えない…。
「よかった、ちゃんと男に見えてたんだ。」
クスクスと笑ってなっちゃんは、じゃあクリスマスとお正月楽しみにしてるね、とまた机に向かった。
な、なんか上手くはぐらかされたような…そう思ったけどとりあえず自分も机に向かい直った。




