24. 文化祭打ち上げ
「お疲れさま〜!そして、学年一番の売り上げだ〜!って事でカンパーイ!!」
「「カンパーイ!!」」
文化祭が終わって只今クラスの打ち上げ中。貸切で食べ放題のレストランに来ている。ここのパスタとデザート美味しいんだよね〜。
「ねぇっ!なんか文化祭にすっごい美少年が来てたらしいよ〜!」
「美少年?」
目の前のクラスメイトが少し興奮気味に目を輝かせている。
「うん、なんか先輩が話してたんだけど来年うちの高校に入学するらしいよ!もう今その話題で持ちきりだよ〜!」
「へー、そうなんだ。サキ、知ってる?」
サキなら知ってるかな、と思って話を振ってみる。
「そうね…まぁ。来年になればわかるでしょう。」
「サキってば相変わらずクールだねぇ。恋愛とか興味ないの?」
「別に、今の状況で満足してるしね。」
「なにそれ、意味深〜!」
キャッキャと周りのクラスメイトがはやし立てるが、サキは全く興味がないという素振りで
「さ、ご飯取りに行きましょ?出来立てパスタが伸びちゃうし。」
と席を立った。
「あっ、私も!」
サキの後をついていって気になったことを聞いてみた。
「ねぇ、さっきの美少年って…心当たりあるんでしょ。」
「そうね。」
「えっ!誰?知り合い?」
「…まぁ、ナツじゃない?」
「えっ!…あ、、でもそうかも…。」
確かにあの時帽子は被ってたけど…よく見たら美少年ってバレるよね…。
「大変ね、ライバルが増えるわよ。」
「ら、ライバルって…」
「あの子モテるからね。」
「う…。」
ひ、否定できない。
「まぁ、ちぃなら余裕よ。」
「そ、そんな事は無いんじゃ…。」
「今から手つけとけば?」
「ふぇっ⁉︎な、な、何言ってんの?」
突然変なことを言い出した目の前の美少女に驚く。
「あ、でもまだ中学生だし、犯罪になっちゃうのかしら?」
「ちょっ!もう!サキっ!」
「ふふっ、冗談よ。…多分。」
「もう〜!!!」
その後パスタとデザートを全種類制覇して幸せな気分でみんなと別れた。
「あー、また食べ過ぎちゃった。」
ひとりお腹をさすりながら呟いた。夕飯食べれるかな…。
「あれ?ちいちゃん、ひとり?」
「あっ、なっちゃん。」
駅から家までの道を歩いていると後ろから声をかけられた。
「あ、なっちゃん。部活、終わったの?」
振り返ると大きなスポーツバッグを肩にかけたなっちゃんがいた。
「うん、まぁ、もう引退しても良いんだけどね。体動かすといい気分転換にもなるし。」
「高校でもバスケ続けるの?」
「うーん、どうだろう。多分、続けるのかな?」
「そっか、なんか、楽しみ。」
「楽しみ?」
「うんっ!なんか、前に試合見たとき、すごくカッコ良かったし!」
「本当?」
「うんっ!本当、高校入ったら…」
サキのあの子モテるからねという言葉を急に思い出して、自分で言っててちょっと胸がチクっとした。
「色んな子が、なっちゃんの事…好きになるよ。」
「…ちーちゃん?」
「もう〜っ、今でもすごい噂なんだよ?なっちゃんこの間ちょっとうちに来ただけで上級生が美少年が来た〜って騒いでるんだから!」
このモヤッとした気持ちをどうにかしたくてわざと大げさに明るく振る舞った。
「ちーちゃん…」
名前を呼ばれたかと思ったら、そっと静かに抱き寄せられて、腕の中に優しく閉じ込められた。
「俺はさ…大勢の人に好かれるよりただ一人の人に好きって言われたいよ。」
なっちゃんの少し哀しそうな声に、不安になってそうっと見上げると優しく笑って
「ごめん、俺多分汗臭いかも。」
と腕を解いた。
そのあとはいつも通りに夕飯を食べて勉強して、別れたけどモヤモヤした気持ちはずっと続いた。




