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19. 花火大会 その3

「わぁ〜っ!ここならばっちりだね!」


花火会場より少し高くなった所にある公園は芝生で出来ていて皆そこに座り込んでいた。少し会場から離れているせいか人も少ない。


レジャーシートをひいてそれぞれ買った屋台の料理を並べた。


「おぉー!どれも美味そう〜!」


「本当、美味しそうね。」


「あー、何から食べようか迷っちゃう!」


「ちぃちゃん、無くならないから焦らずね?」


「いっぱい買って正解だったな!」


「た、食べきれるかな…。」


「「ではいっただきまーす!」」


「あー、みんなでこうやって外で食べるって美味しい〜!」


「ふふっ、そうね。」


お皿にのった焼きそばを食べ終えてふとなっちゃんを見た。買い出しの時から少し元気がなさそうに見えたから少し気になっていた。


口を開けてフランクフルトにかぶりつくなっちゃんの横顔をじっと見ていると目があった。


「どうしたの?ちぃちゃん、フランクフルト食べたいの?」


「えっ、あっ…あははっ、うん美味しそうだなぁって思って。」


「はい、あーん。」


優しい笑顔で、フランクフルトを持ちながらなっちゃんが言った。


「食べないの?ほら、あーん。」


「えっ!」


こ、このままあーんって!あーんってしていいのかな…⁉︎な、なんか恥ずかしいような、しかも間接キス?になっちゃうし…で、でもなっちゃんは全くそういうの気にしなさそうだし、ここで変に意識するのも…お、おかしいのかな…。グルグルと頭の中で考えているとなっちゃんがいたずらっぽい目をこっちへ向けた。


「ほら、ちぃちゃん…口…あけて?」


ちょっと掠れたような声で頬を撫でられた。…なんか変な気分になりそう…!


「っ!」


意を決して、そうっと口を開ける。


なっちゃんは相変わらず優しい瞳でこっちを見ててなんか、余計恥ずかしい…。ってか見ないでほしい!


もっと…開けないと…ね?


そ、そんな近くで囁かないで欲しい…なっなんか、言い方が本当色気満載なんですけどっ!


恥ずかしいけど早く食べないとっ、そんな思いでかぷりとフランクフルトにかぶりつき、口を離して味を噛みしめていると草太が一言


「…な、なんか二人とも大人の階段のぼっちゃったの…?エロいよ…。」


と呟いた。


へっ⁉︎と思って振り返ると木野くんは真っ赤な顔してるし、当麻君も真っ赤な顔で鼻を押さえていた。


「…ナツ、あなた少しは抑えたほうが良いんじゃない?」


サキまで少し赤くなって呆れた様子でため息をついていた。


みんなの様子に、ちっ!違う!そっそんなつもりないっ!って、いうかエロくなんかないもんっ!と抵抗したが誰も頷いてくれなかった。


「な、な、なっちゃん!なっちゃんがっ!」


なっちゃんに救いの手を求めるとにっこりと笑って誤魔化された。


「うぅ〜っ…もう〜!!!いいもんっ!最後のたこ焼き!もらっちゃうから!」


ぷんっと横を向くと下の方から空にかけて音がした。


「あっ、花火…」


パァンっと大きな音がなり、夜空に花が咲く。


「きれい…」


「夏だねぇ〜…」


周りからも感嘆の声が上がる。


しばらく皆んなで花火に魅入られていると視線を感じた。


「どうしたの?なっちゃん。」


「んー、良かったなぁと思って。」


「えっ?」


花火にかき消されてあまり声が聞こえない。


ちょいちょいと招かれてなっちゃんに近づく。


「ちぃちゃんと、こうやって花火が一緒に見れて…俺がすごく幸せって事。」


幸せそうに笑うなっちゃんを直視出来なくて目をそらしてしまう。


「あー、そろそろ本当抑えないとね…?」


軽く笑って小さい声で呟いたなっちゃんの声はまた花火にかき消されてしまった。なんて?と聞き返そうとすると


ほら?と指で空をさした方を見ているとクライマックスが始まったのか次々と花火が打ち上げられていった。


「あ〜あ、もうお終いかぁ〜。」


残念そうな草太の言葉をよそに、「さっさと片付けて帰らないと電車に乗れないわよ?」とサキが言った。


駅までの道はかなり混んでいたけど、早めに引き上げたので何とか電車には乗れた。


当麻君の家まで送ろうかという誘いは「大丈夫だから」とサキが断った。


駅から家までの帰り道をいちご飴を食べながらなっちゃんと並んで歩いた。


「今日は楽しかったね!」


家の前についたけど、楽しくって話が終わらない。


「うん、そうだね。」


「また来年もこうやって集まりたいね!」


「来年か〜…来年は、、、あ、ちいちゃん飴…くっついてるよ?」


「あっ、どこ?」


口元を拭おうとしても結構口の周りが飴でベタベタでよくわからない…。なんか指までベタベタしてきたし。


「違う違う、反対の方。」


笑いながらなっちゃんが頬っぺたを指差す。


むー…と悪戦しているとなっちゃんの指が頰に触れた。


「ここ…。」


優しくそのまま頬っぺたに手を乗せたままのなっちゃんが静かに言った。


「…ねぇ、ちぃちゃん。」


「なに?」


「来年はさ…俺…二人がいいな。」


「二人?」


「うん、ちさとを…独り占めしたい…。」


その瞬間ぎゅっとなっちゃんの身体が密着する…骨っぽくて、自分にはない感触に頭が沸騰しそうになる。


「へっ!うっ、あっ…えっと…」


「だめ…?」


そんな近くで哀しそうな声で呟かないでよ〜!っと頭の中がパニックになりながらも小さい声で答えた。


「…だ、ダメなわけ…ないよ…。」


「良かった…ごめんね?やっぱり抑えきれなくて…自重しないとね?」


すっと身体が離れてしまったなっちゃんを見つめた。


「ちいちゃん…そんな目で見ないで?本当抑えられなくなるよ。」


困ったように笑うなっちゃんに慌ててちょっと離れて寂しいという気持ちをかき消した。


「それじゃ、おやすみ。また明日ね?」


「あっ、うんっ…お、おやすみ。」


その後ぼうっとしながらお風呂に入ってベッドに潜り込んだ。


…あ、明日…どんな顔してなっちゃんに会えばいいのかわかんないよ…っていうか、なっちゃん…わかんない…す、いや、少しは好意をもってくれてる…のかな…?あー、もう〜!よく、わかんないよ…。


次の朝何も無かったかのように朝ごはんを一緒に食べて、爽やかに部活へ向かったなっちゃんを見てますますわからなくなった。


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