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16. 草太の作戦

夏休みも後半に入って花火に行こうと誘われた。


「あぁ、もう予定入ってるから。」


何度も言ったこのセリフ。


「え〜っ…もうちーちゃん誘ったのかよ。」


「いや、これから誘う予定。だけど邪魔しないでね。」


幼馴染の草太のしつこい勧誘を断固拒否した。


「うぅっ…ずりぃ…俺だって、俺だってサキちゃんと出かけたい!」


「…誘えばいいだろ。」


「…。」


ゴニョゴニョと草太が俯きながら言った。


「…何。」


「…誘った。」


「誘ったのか。意外と勇気あるね。」


ちょっと意外だったから驚いた。草太はヘタレだからそういうこと積極的にするとは思ってもみなかった。


「でも先約あるって。」


「…残念だね。」


ズーンっと落ち込む草太を見ながら考える。先約ねぇ…まぁ、神田は美人だし、先約があってもおかしく無いな。でもこれも意外かも…。


はぁ〜っと深いため息をつく草太にまぁ、来年もあるから頑張れとだけ伝えた。


この時はまさか自分もちさとに断られるなんて微塵も考えていなかった。


「えっ、花火大会?」


「うん、一緒に行かない?」


夕飯の時になんとなく聞いてみた。


「あ…えっと…その…」


思いもよらず言葉を濁して気まずそうにするちさとに心の中で動揺する。


「もしかして、もう予定入ってた…?」


「えっと…まだその決まったわけじゃ無いんだけど、クラスの皆に誘われてて…。」


「そうなの?仲良いんだ?」


「まぁ、体育祭で割と仲良くなったグループで行くっていうか。あ、サキも一緒に!」


「そっか…残念。じゃあ俺も草太たちと行こうかな?誘われてたし。」


「相変わらず仲良いね、楽しそう。」


明らかにほっとした様子のちさとに胸がモヤモヤする。そんなモヤモヤのまま、自宅に戻って草太に電話した。


「神田が誰と出かけるか分かったよ。」


「えっ、誰⁉︎」


「クラスのみんな。…それにちさとも。」


「えっ!じゃあナツも振られてやんの〜。」


笑う草太にむかついて通話を切ると、草太からすぐにかかってきた。


「もしもし…。」


「ごめんごめん、怒るなよ〜。軽い冗談だろ〜?」


「へぇ。随分嬉しそうに笑ってたけどね。」


「ごめんってば。その日俺らも出かけない?」


「何で。」


「だってもしかしたら男と一緒かも〜とか気になるし!それに運が良ければ一緒に行動できるじゃん?」


「…。」


それも、そうか。ちさとが知らない所で知らない連中に笑顔を振り向くのも嫌だしね。


「ナーツ?聞いてる?」


「…いいよ。そうしようか。」


「マジ?いやー、何か秘密の尾行って探偵っぽくてイイかも〜!」


「明らかにお前はストーカーってタイプだけどね。」


「あ、酷いぞ〜!ナツの方が粘着質っぽいじゃん。」


「…。」


終了ボタンを押そうとすると、「あーっ!また切る気だろっ!待って待って!」と草太の慌てる声が携帯から聞こえた。


「じゃあ六時に駅前で集合な!きっとサキちゃん達もそれ以前には来ないだろうし!あー、なんかワクワクするわ〜!」


「ハイハイ。じゃ、また。」


通話を切って、部屋の天井を眺める。


はぁ。あの人混みでどうやってちさとを見つけ出すかな…まぁ、早めに行っておけば見つかるか。


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