14. デート その2
「あっ、これ可愛いかも〜!」
「うん、ちーちゃんっぽいね。」
雑貨屋で色んなアロマキャンドルが売っている中、紫陽花色のものを見つけた。
「匂いは紫陽花っていうよりは梅っぽいねぇ。」
「うん、でも甘酸っぱくていい匂いだよ。」
「こういうの買ったことが無かったし買っちゃおうかな!」
カゴの中には既にポストカードやメモ帳が入っていたけど、まぁ滅多に買い物しないしいいかなと思った。
なっちゃんに待ってもらって会計を済ませた。
「お待たせ!」
そう言うと手を出して袋、持つから貸して?と言われた。いいよと断ると、これから他にも買うんだから邪魔でしょ?と返され荷物を持ってもらった。
なっちゃんと二人で並んで歩いて居るとチラチラと女の子達が見ていた。横に並んだなっちゃんを見て、改めてかっこ良くなったなぁと思う。昔は可愛い!って感じだったけど…
「どうしたの?」
なっちゃんがこっちを見て問いかけた。
「ううん、なんでもないっ!あっ、あの店なんかいい感じ!入ろう!」
なっちゃんの腕を引っ張ってすぐそばにあった店に入った。
「あっ、これ雑誌に載ってたコーデだ〜!」
お店の中央に並んだワンピースと小物を見る。雑誌では服をメインに扱っていたけど、ページの隅にあったアクセサリーが気になっていた。でもちょっと高いんだよね〜…じーっと見つめていると、
「今なら、二点買うと二割引にさせて貰いますよ〜?試着だけでも気軽にどうぞ?」
と店のお姉さんに声をかけられた。
「してきたら?」となっちゃんにも言われたけど、
「うーん…今日は辞めとく。ワンピース買ったばかりだしね?」
「そっか、じゃあ他行こうか。あ、それとも休憩する?」
「ちょっと休憩しようかな?」
「オッケー。あそこのベンチで座ってて?ちょっと飲み物買ってくるから。」
「うん、分かった。」
なっちゃんとわかれて、ベンチに座って一息ついた。少し熱くなった顔を案内図をうちわがわりにした。
あー、もう…なんか困ったなぁ。なんか、店に入ろうとすると優先してくれるし、人混みではリードして歩いてくれるし…優しいし…。
…なんか、すきに…ってなったら色々大変そうだから、ダメな気持ちもあるし…あーっ!うだうだ考えるな!自分!
「あのー、ちょっといいですか?」
「へっ?」
振り向くと同じ年位の男の子が数人いた。
「えっと、ここ広くて迷っちゃって…そのマップ見せてもらってもいいですか?」
手に持った案内図を男の子が指差して聞いてきた。
「あ、はい。どうぞ?」
「すみません。」
後ろの友達と、やっぱあっちでよかったんじゃん!とワイワイ話してた。
「ちさと、お待たせ。」
振り向くとなっちゃんが少し不機嫌そうに立っていた。
「あっ、なっちゃん。おかえり?」
じっとなっちゃんが男の子達を見る、というよりちょっと睨んでるのは気のせい?
「助かりました。ありがとうございました。」
そう言って男の子達はすぐに去って行った。
「何、ナンパ?」
「ち、違うよ!ただ、迷っちゃってたみたいで…」
「へぇ…」
「…なっちゃん、怒ってる?」
「あぁ、別にちーちゃんに怒ってないよ。ごめんね?はい、紅茶。」
「なら、いいけど…なんか顔がこーんなんになってるよ?」
眉間のシワを寄せて目を細めて見せる。
「ブハッ!ちーちゃん、お茶吹き出しちゃうからっ!」
思い切り笑い出したなっちゃんにほっとする。
その後は、ずっとなっちゃんが思い出しては笑っていて、失礼だなぁと思いつつも楽しく過ごした。
「なっちゃん、今日はいっぱい笑ったね。楽しかった?」
「ちーちゃんが面白かったからね、今でもまた笑いそう。ちーちゃんは?楽しかった?」
「もうっ。うん、すごく楽しかった!それに、」
「ん?
ちょっとドキドキしちゃった!デーとみたいだったなって。」
「…ちーちゃん。」
黙り込んだなっちゃんに、少し不安になる。や、やっぱりドキドキしちゃったとか言わない方が良かったかも…。
「これ…俺からのプレゼントなんだけど。」
「えっ!何? 私誕生日とかまだまだ先だよ?」
焦った私になっちゃんが首を振って笑った。
「知ってるよ?ただ、今日これをつけたちーちゃんが見たくなったんだ。」
「へっ⁉︎そ、そんなっ…そんな言い方…なんか緊張するよ。」
「後ろ向いて?」
優しく笑ったなっちゃんに背を向けると、髪をすくい上げられて身体が跳ねた。
「大丈夫だよ、何も襲ったりするわけじゃないんだから。」
くすくすと耳元で柔らかいアルトの声に頭がショートしそうになる。
「はい、出来たよ。どうかな?」
少し冷たい銀の鎖の先を見る。
「あ、これ…。」
あの店で迷っていたネックレス…なんでこれって分かったんだろう。
「ちーちゃんには、あそこにあったワンピースよりもこのネックレスの方が似合いそうだったから。」
ドロップの形をした銀のプレートに小さなピンクの石とパールが隣についてて可愛いと思っていた。
「ありがとう、なっちゃん…すごく嬉しい。」
「どういたしまして。うん、…よく似合うよ。さ、みんな待ってるだろうから帰ろう?」
その後皆で夕飯を食べている時に、そんなの持ってたっけ?と弟に突っ込まれなっちゃんにもらったと正直に答えると、へーっとなっちゃん以外の皆がニヤニヤしていたたまれない雰囲気だった。




