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あぁ、なんだか今日は風が強い。
制服のシャツが波打つように風に吹かれる。
街を一望できるこの屋上が好きだ。
風が吹いて、心地よくて、誰も来ないこの場所が好きだ。
だから俺は。
今から飛び降りようと思う。
好きな場所から飛び降りて死ねるなら、それは本望だ。
ゆっくりと腰ほどの高さの柵を跨いで、自分の足のサイズより少し大きいくらいの淵に立つ。
あぁ、今日は風が強い。
さようなら。
「ねぇ、今から自殺するつもり?」
後ろから聞きなれた声がした。
その声に思わず振り返ると、馬鹿にしたような目つきで俺を見つめるクラスメイトがいた。
彼女の氷のように冷たい視線を浴びて、俺はどうすることもできない。
彼女はふっと鼻で笑うと、今から自殺しようとしている俺にこう言った。
「そこから飛び降りても死ねないよ。私がそこから飛び降りたとき、花壇がクッションになって死ねなかったから」