#5
二人を尾行するだけなのに自転車では行けない。
伊達メガネは自室に置いてきたので裸眼だ。(屋敷から出る時は裸眼。前回も書いたが、念のために)
彼女らは徒歩で出かけるようなので、歩いて後ろから追っていくしかないな……
なんか周囲から怪しい目で見られているような気がするが、今は気にしている場合ではない。
通行人のみなさーん。
俺は決して怪しい者ではございませんので、絶対に警察を呼ばないでくださいねー。
心中でそう思いながら二人を追う。
はい。近くのスーパーに到着したお嬢様たちが向かう場所は……それはお菓子コーナー。
バレンタインデーの贈り物といえば、チョコレート系が定番だ。うん。
お嬢様、俺はバレンタインデーの贈り物は板チョコ(義理チョコ)でいい!
味はミルクチョコレートで!(単にミルクチョコレートが好きだから)
うわぁぁぁ……手に取ったものはブラックチョコレート!
そちらはホワイトチョコレート!
……はぁ……無駄に疲れた。
場を取り乱してしまって申し訳ない……
最終的には彼女らはブラックチョコレートとホワイトチョコレート、ココアをかごに入れ、レジを通している。
俺の好きなミルクチョコレートは一枚も入っていなかった!
そういえば、百円ショップがなんとかかんとか……と言っていたな。
今のところは問題なく二人で買い出しすることができている。
俺は某小さい子どものおつかいを見守る番組のスタッフなのか? それともカメラマンなのか?
あっ、カメラは持っていないし、走り回ったりしていないから違うな。
彼女らの尾行はまだ続く――
◇◆◇
わたくしたちが次に向かったところは百円ショップ。
自動ドアを通過すると、バレンタイン関連のコーナーがお出迎え。
「バレンタインの製菓材料コーナーができていますが、流石に板チョコは売り切れていますね……」
値段だけが貼られていて何も入っていないケースがいくつかある。
そこには板チョコレートが入っていたらしく、すでに売り切れていた。
わたくしたちは近くのスーパーで購入してきたので必要ない。
「あっ、ラッピングはいろいろありますね!」
「ちょうど入荷しているところみたいですわ!」
バレンタインのラッピングのコーナーを見ていると店員さんが追加分を入荷しているところ。
可愛い容器からカップケーキが入りそうな箱まで形や大きさも様々。
「正方形のケースは……なさそうですね……」
「少し店内を見て回りませんか? 何か代わりになりそうなものが見つかるかもしれませんわ!」
「そうですね! 流石、お嬢様!」
わたくしはメイドに提案してみた。
店内を見てみれば何か代わりなりそうなものが見つかるはず。
何もなければまたこのコーナーに戻って考えてみてもいいと思ったの。
◆◇◆
俺も百円ショップはたまに行くが、意外と面白いものもあるし、姉さんから「化粧品も売ってるよー」と言われて本当かよ? と疑ったことだってあったくらい。
本当に化粧品が販売されていたのは衝撃的だった。
さあ、お嬢様! 俺にミルクチョコレートを――!(まだそのネタを引きずっている俺)
……ケースに値段だけ貼ってあって中身は空っぽではないか……
あれ? ミルクチョコレートに気を取られていたら彼女らの姿を見失った?
俺たちがいる百円ショップの店内は広いため、途中でばったり会ったら確実にヤバイ……
二人と店内を同時に警戒しなければならないな……
◇◆◇
わたくしは文房具売り場で可愛いクマのシールを見つけた。
来栖に渡すチョコレートの包み紙か容器に貼って分かりやすくしておこうかしら。
「あっ、お嬢様。可愛いシールですね!」
「分かりやすい目印にしようかと思いまして……」
「ほおー……お嬢様は来栖さんのことが好きなんですね?」
「い、いや! 全くもって違いますわ!」
「お嬢様、嘘はついてはいけませんよー」
もう恥ずかしいじゃない……
わたくしにとって来栖は大切な人であることは事実だけれども、恋愛感情って……どうなのかしら? 下手したらあるのかしら?
結局、百円ショップ内を一通り見て回ったけれど、正方形のケースの代わりになりそうなものは見つからなかったわ。
バレンタイン関連のコーナーに戻って、蓋つきの丸い透明なケースの中に五個くらいずつマーブル模様のチョコを入れることにした。
容器は男性陣の人数分より少し多めになってしまいましたが、残りは何か別の機会に使用してくださることでしょう。
もちろん、来栖に渡す分は容器にクマのシールを貼ったものにしますけれどね。
◆◇◆
現在、彼女らはレジを通している。
蓋つきの丸い透明なケースとクマのシールを買っていたのだが、そのシールは何に使うんだ?
何かの目印に使うのか? それとも、そのシールを貼ってデコレーションするのだろうか……?
広い百円ショップでお嬢様たちに見つからずに済んだのは奇跡だったのかもしれない。
おそらく二人は屋敷に戻るのだろう。
彼女らが屋敷に到着するまでが俺の尾行ミッションだ。
2026/02/10 本投稿




