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#3

【作者より】


富永家の屋敷は日本の洋館のイメージです。

実際にある貴族の屋敷とは異なりますが、オリジナル設定(・・・・・・・)なのであらかじめご了承ください。

 わたくしは来栖がくる頃にはすでに起きて身支度を整えていた。

 顔も洗ったし、髪も寝癖がないので、結果オーライですわ!


 部屋の扉がコンコンと叩かれる。

 扉の叩き方で誰が部屋の前にいるかすぐに分かってしまうわたくしは少しおかしいでしょうか?

 それがわたくしのちょっとした特技なので、ご覧いただきたいところです。


 あっ! この扉の叩き方は確実に彼かもしれませんわ!

 わたくしは「はい」と返事をする。


「失礼いたします」

「どうぞ」


 ほらっ! やっぱり正解ですわ!


「お嬢様、おはようございます。今日はお早いお目覚めですね」


 来栖は驚きながらもわたくしが適当に開けたカーテンをタッセルで束ね、房かけでまとめていた。

 彼は「何かいいことでもあったのでしょうか?」と問いかけ、「ええ」と答える。

 本日はバレンタインデー前日なので、メイドとともに材料の買い出しに出かけることになっているのだ。


「今日はメイドとちょっと外出に……」

「ほう……今日は何も予定が入っていないので、二人で楽しんでいらしてください」


 あら? 意外とあっさりした返事ですわね……

 も、もしかしたら、料理長(シェフ)から昨日のことの報告を受けたとかはないわよね!?


 わたくしは警戒していた。

 彼からのあっさりとした返事は何かありそうな予感がする。


「お嬢様、どうされたのですか? 私の顔に何かついていますか?」


 来栖に言われてからようやく気がついた。

 全く意識していなかったけれど、わたくしは彼の顔をじっと見ていたらしい。

 来栖の頬にはご飯粒やパンにつけたジャムなど何もついていない綺麗な状態。

 なんでこんな時に食べ物のことが出てくるなんて恥ずかしいじゃない……!


 その時、くぅー……とわたくしのお腹が鳴り、同時に「……あっ……」と呟いた。


「お、お腹が空きました……」

「もうじき朝食(モーニング)が完成する頃でしょう」

「ほ、本当?」

「ええ。お嬢様のお支度がほぼ済んでいらしたことが救いですので」

「ふふん、褒められた。今日は何かしら?」

「本日の朝食は和食をご用意しています」

「あら、珍しいわね?」


 彼の前でお腹は鳴るわ、顔をじっと見られたと思われる中、普段は見られない少しはにかんだ表情を見ることができたわ!

 本日はついていないかもしれないと思いつつも、ふとした時に訪れる幸せなひとときは大切なのかもしれませんわね。


「旦那様や奥様が向かわれると思いますので、私たちもそろそろ向かいましょう」

「ええ」


 わたくしは来栖の誘導で居間に向かい、家族で朝食を済ませた。



 ◆◇◆



 今日のお嬢様は朝から機嫌がいい。

 ただし、カーテンの開け方はいい加減ではあるが。


 彼女の機嫌がいい時は自分から動き始めることが多く、俺が訪室した時は寝起きの顔が高確率で見られる。(毎回「見ないで!」と言われてしまう……)

 執務が遅い時間に始まる時や泊まり番の時は旦那様や奥様の専属や他の使用人に代理として入ってもらうこともしばしば。

 もちろん、俺もお嬢様だけではなく、旦那様や奥様の部屋に訪室することもあり、彼女の様子を話す機会もあるのだ。(どちらもお嬢様が悪食(アレ)であることは知っているため、迷惑をかけていないか心配してくれている。しかし、どちらかの両親が悪食(ソレ)ではないと聞いている。ちなみに使用人を除いた富永家全員、俺が暗殺者であることを知っている)


 彼女が言っていた「今日はメイドとちょっと外出に……」という台詞(セリフ)が妙に引っかかる。


 ほう……やはりそうだったのか……

 お嬢様の前では表情を変えなかったが、料理長から報告を受けた通りだったのだ。


 よって、今年のバレンタインの贈り物の担当はお嬢様とメイドを意味している模様。


 本日はその前日――

 彼女らはこれから材料を買い揃え、何を作るのかは分からないが、とりあえずチョコレート系を作り、男性陣の人数分に合わせてラッピングをして……翌日渡される。


 はい。阻止することは完全に不可。

 お嬢様……俺が決して望まないことをしようとしたな……


 彼女は他の男性陣には普通のチョコレートを入れ、俺の分のチョコレートに何か(例えば、訳の分からんものとか)入れそうな気がする――


 実をいうと、俺はお嬢様から贈り物を受け取るのが怖いと言った方がいい。


 もし、付き合っている彼女からバレンタインの贈り物(チョコレート系でもなんでもいいのだが……)を受け取ったとする。

 その中身が何か訳の分からんものが入っていたら嫌だろう?


 君はそう思わないかい?



 ◆◇◆



 普段、富永家では朝食を取る時は居間を使用している。

 昼食(ランチ)晩餐(ディナー)はそれぞれの専属と料理人が作ることになっているのだ。

 そのため晩餐は俺が作ることが多い。(お嬢様が無茶なことを言うことがあるため)


 毎日の朝食の場で旦那様に言われるお決まりの言葉がある。


「来栖くん、今日も娘のことをよろしく頼んだよ」


と――

2026/02/06 本投稿

2026/02/07 改稿

2026/02/13 「バレンタインデー(・・・・・・・・)の贈り物」→「バレンタイン(・・・・・・)の贈り物」

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― 新着の感想 ―
お嬢様が感謝の気持ちでしようとしてるのに、来栖くんはなんとかして避けようと…w もうすでにすれ違いが始まっているぞ〜w 何かわからんものってなんだ〜w
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