…ゾクリ…~冷たい、貴方。~
貴方は冷たい。
私には全く興味がないの。
ねぇ、私にも優しく微笑んで。
ーー初めて貴方を見たのは、大学サークルの勧誘活動の時だった。
「可愛いね、どこの学部?洋楽に興味無い?」
笑顔の貴方が近づいてきて、思わず心臓が止まるんじゃないかと思う程ドキドキしたのを覚えてる。
…残念ながら、声を掛けられたのは私の隣の可愛い女の子だったけれど。
貴方の隣にはいつも人がいて、賑やかで、 光輝いていた。
私がその輪に入ることは、叶わないと分かっていたから、せめて洋楽サークルに入ることにした。
洋楽に縁もゆかりもなかった私が…だ。
もちろんサークルで私だけ浮いていたのは分かっていたし、誰にも相手にされていない事も痛感していた。
だけどーー、貴方を一目見た時から、 私の世界は変わった。
そんな事、気にならないくらいあなたに夢中になっていた。
一目惚れで人を好きになるなんて、ありえないと思っていたけれど間違いなくこれは"恋"なのだ。
気がつくといつも貴方の姿を探していたし、 目で追っていた。
…もれなく、その隣には可愛い女の子達が付いていたけれど。
見ているだけで充分、なんてよく聞くけれど、そんなのはただの偽善にしか過ぎない。
人間の欲望ほど恐ろしいものは無いんじゃないかと思うくらい、日に日に私の嫉妬と執着心は増していった。
何で貴方の隣に居るのは私じゃないの。
初めて声を掛けた時のこと、覚えてる?
「えっと…、ごめん、誰だっけ?」
そう言って冷ややかに笑った貴方。
私の事、眼中にもなかったよね。
興味もない洋楽を沢山聞いて、 楽しくないサークルも、飲み会も参加して、少しでも貴方に近づけた気でいた。
けれど、そんな事はなんの意味も無かったのだと思い知らされた。
…………………だからね、
今夢の中にいるんじゃないかと思うの。
貴方が私の隣に居るなんて。
愛して欲しい、なんて無理なのは分かってる。
私の隣にいてくれるだけで充分。
冷たい貴方も愛しているのだから。