イケメンはもういいと振られました
ボーイズラブです。ハッピーエンド。最後まで読んで頂ければ嬉しいです。
俺は、酔っ払いに絡まれている。しかも、職場の先輩、、、。まいったな、、、。
「波丘くんは本当に顔が良くて得してるよね」
関口さん、、、何があったんだろう。今日はめちゃくちゃ酒癖が悪いんだけど、、、。
「機嫌悪いんですね。彼女に振られたんですか?」
「、、、」
関口さんがジトっと睨む。やば、、、ビンゴ?冗談で言ったのに。
「ハズレ」
(良かった)
「彼氏」
「???」
「彼氏に振られちゃったんだよー!」
関口さんが泣き出した、、、。やめて、、、。
「他に好きな人が出来たって、、、酷いよー!!」
関口さんはオイオイ泣いた。ほんと、泣いてる関口さんの頭の上に片仮名で「オイオイ」って書いてやりたい。はぁ〜、、、俺はため息を吐きながら、一人で酒を飲む。
(、、、関口さん、静かになったな、、、)
と思って見ると寝ていた。最悪だ。店からタクシーを呼んで、取り敢えず関口さんを乗せる。全っっっ然、起きる気配が無いから俺の家に運んだ。タクシーが家に着く頃、関口さんは目を覚ました。
「大丈夫ですか?俺が降りたら、そのままタクシー使って下さいね」
関口さんがどこに住んでいるかわからなかったけど、電車はもう無理だ。このままタクシーで帰ってもらおう。
「波丘まで僕を捨てるんだ、、、。みんな、みんな僕を捨てる、、、」
(もぉー!面倒臭い男だな!)
と思いながら二人で降りる。関口さんはフラフラユラユラしている。
「しっかり歩いて下さいよ」
「ん」
と、言いながらマンションと反対方向にフラフラ歩いて行く。
(仕方ないなぁ)
と思いながら、手を繋ぐ。関口さんは繋いだ手を見て、ゆっくり顔を上げると俺を見た。
(嫌だったかな?)
「波丘と、手、繋いじゃった」
酔っ払いの満面の笑顔に、俺はキュンッとした。
(キュンッ?まさかね、、、)
自分の胸に手を当てて、頭を振る。関口さんは、手を繋いだまま素直に俺に着いて来た。小さい子供か犬みたいに、、、。
俺の家に入るなり、関口さんは上着を脱ぎながら靴下を脱ぐ。
(器用だな、、、)
と感心していると、スーツのズボンを脱ぎながらシャツを脱ぐ。めちゃ、時短。
「先輩?何やってるんですか?」
「シャワー浴びたい、、、」
「え?」
「僕、帰ったら最初にシャワー浴びたいんだ」
「えぇぇぇ〜」
俺ん家のシャワー浴びる気なの?
「待って、先輩!下着はまだ脱がないで!」
取り敢えず、先輩を風呂場に押し込む。俺は急いで、バスタオルを取りに行く。
「ん?」
洗濯機が水を溜めてる音がする。
「先輩?」
脱衣所のドアを小さく開けて声を掛ける。関口さんは風呂場に入っているらしく、俺はドアを開けて洗濯機を見る。一時停止をして、蓋を開けると先輩のシャツやら靴下やらが入っていた、、、。
「何やってるんだよ、もぉ、、、」
そのまま、蓋を閉めて取り消しを押した。仕方がない、後で俺のも入れて一緒に洗うか、、、。
「先輩の着替えどうしたらいいんだ?」
取り敢えず、下着は新品のがあった。まだ洗ってないけど、この際それで、、、。パジャマは、白いTシャツでいいか。下も何とか探し出す。もう一度脱衣所の前で声を掛ける。まだ、シャワーを浴びてるから、脱衣所の床にバスタオルと着替えを置く。流石にこれなら気付くだろう。
俺はリビングで、上着を脱ぎハンガーに掛けると、冷蔵庫からビールを持って来て一気に飲む。一息着いてソファに座ると関口さんがそっとドアを開けて入って来た。不安そうな顔をしている。
「波丘?」
「どうしたんですか?」
関口さんがため息を着いて、安心した顔になる。
「良かった、、、知らない場所だったから、、、」
(酔っ払いめ、、、)
関口さんは、俺の白いTシャツを彼Tみたいに来ていた。
(ヤバ、、、)
俺の服がダボダボで庇護欲そそる。襟足から首元が大きく開いて、無駄にエロい、、、
「俺もシャワー浴びたいんで、何か飲みたかったら冷蔵庫漁って下さい」
「あ、ありがとう、、、」
白Tの裾を掴んで恥ずかしそうにお礼を言う。クソ可愛いな、、、オイ。横を通ると、俺のシャンプーの匂いがするしっ!
洗濯機に汚れ物を入れて、水量を調節する。後でバスタオルも入れるから、"洗い"で一度止まる様に設定してシャワーを浴びる。
残業を終えて、飯を食おうと店に入ったら関口さんがいた。9時を過ぎていたから、客数も少なくて、関口さんのテーブルに一緒に座って飯を食った。最初はフツーだったのに、酒が進む内に少しずつ関口さんが絡んで来たから、おかしいなとは思っていたんだ。まさか、彼氏に振られたとは、、、。まぁ、今は少し冷静になったみたいだからいいけど、、、。シャワーを浴びて、ドライヤーを掛け、洗濯機をセットしてリビングに行く。関口さんは、ビールを飲みながら淋しそうな顔をしていた。見てるこっちまで、切なくなる様な顔だった。
俺が気付かないフリをして隣に座ると、関口さんは
「ごめんな」
と笑いながら謝った。その途端、潤んでいた瞳から涙が一粒溢れたんだ。
人が恋に落ちるのに、理由は無い。俺は、その瞬間恋に落ちた。自分でもわかったんだ。
「いいっすよ、彼氏に振られたんでしょ?」
「、、、俺、そんな話ししたの?」
「覚えて無いんですか?」
「申し訳ない、、、」
「俺の顔、めっちゃ褒めてました」
俺はニヤッと笑う。ちょっとでも明るい雰囲気にしたかった。関口さんは俺の顔をジッと見て
「波丘くんはほんとにイケメンだよね、モテるでしよ?」
「まぁ、それなりに、、、」
「いいな。俺の、、、元彼、、、。もう、元彼なんだよな、、、」
ため息を吐きながら言う。
「俺の元彼もめちゃくちゃイケメンでさ。幼馴染だったんだけど、色んな人に告白されてたよ。選り取り見取りって感じだった。それでも、俺の事選んでくれて付き合ってたのに、、、。長い付き合いだったから、飽きちゃったのかな?好きな人が出来たからって振られちゃった、、、」
「どれ位付き合ってたんですか?」
「高校の時からだから、もうすぐ10年だった、、、」
「それは、長いですね」
「うん、俺の初恋。ずっと好きだったから、付き合う事になった時はめちゃくちゃ嬉しかった。俺、同性が好きだから。きっとそーゆう相手、もう2度と見つからないんじゃないかな?って思う」
「じゃ、俺と付き合いますか?」
「え?」
先輩はちょっとびっくりした様に目を見開いた。
「流石イケメン、、、。でも、俺、イケメンはもういいよ」
関口さんは小さく笑った。俺は速攻振られた。
振られると余計に気になっちゃうもんだな、、、。俺はいつも関口さんを目で追う様になった。頻繁に目が合う度に、関口さんはちょっと笑ってくれる。それが何だか嬉しくて、どんどん好きになって行くのがわかる。
*****
昼休憩、自販機の横で関口さんが通話をしていた。何と無く、元彼かな?と思った俺は邪魔をしたくなって自販機に寄る。コーヒーを2本買って、関口さんに1本渡すと、関口さんは小さい声で
「ありがとう」
とお礼を言った。
「、、、うん、、そう、、、じゃあ、また、、、」
と言って通話を切る。
「元彼ですか?」
わざと聞く。
「うん、、、」
「連絡取ってるんですか?」
「荷物が、、、」
「同棲してたんですか?」
「同居ね、、、。荷物が残っていたからどうするか相談してた」
「相談って名目で通話したんですか?」
「、、、イヤな言い方だな」
「声が聴きたいからから相談したんでしょ?」
「、、、」
関口さんがジトッと俺を睨む。図星かな?
「まだ、幼馴染さんの事、好きなんですか?」
俺、今、メチャクチャ意地悪だな。関口さんが元彼の事忘れてないの、わかってるのにワザと聞いた。関口さんが元彼と通話してると思ったらイライラしてきたんだ。
「俺はね、イケメンが嫌いなの。だからアイツの事嫌いだし、お前の事も好きにはならない。コーヒーありがとう」
流石に関口さんもムッとしたみたいだ。関口さんは昼飯を食いに外に出た。
(酔っ払って、家に来た時は素直で可愛かったのに、、、)
俺はどんどん関口さんが好きになる。
関口さんが駅前にある、不動産屋の前にいた。
「お客さん、何かお探しですか?良い物件ありますよ」
関口さんがゆっくりこちらを見る。
「なんだ、波丘か」
クスッと笑う。
「引越しですか?」
「、、、今住んでる所に、アイツが彼氏と住みたいって言うんだ。もうすぐ、更新だし、あそこは珍しく男二人でも入居出来たからさ。譲って欲しいって、、、」
「良いじゃないですか、心機一転引っ越しましょうよ」
「簡単に言うなよ、、、。家具とか折半にしようってなったんだけど、、、なんか色々疲れちゃって、、、。頭が回らないんだ」
「、、、ふぅ〜ん、、、。先輩、飯、食ったんですか?」
「???まだ、だけど」
「飯、食いに行きましょう。ゆっくり話し聞きますよ」
関口さん、酔っ払うと可愛いんだよな、、、。普段は自分の事、俺って言うのに、酔っ払うと僕になっちゃうところも可愛い。
「新しい彼氏と一緒に住みたいからって、追い出すなんてどんな神経してるんだよ、、、。しかも、ベッドとテレビと冷蔵庫は置いていって欲しいって、、、。あのベッド買ったの僕なんだよ?。それなのに、、、」
「幼馴染さんの新しい彼氏も、彼氏と元彼が一緒に寝てたベッドなんてイヤじゃないんですかね?」
「、、、僕はイヤだ。アイツと彼氏があのベッド一緒に使うの?イヤだよ、、、」
関口さんが泣きそうになっている。あぁ、可愛い。なんか頭撫でたくなっちゃうんだよな。
「この際、ベッドは引き渡して、彼氏に嫌な思いをさせましょうよ。彼氏に「元彼と寝てたベッド何て嫌だ」って言われたら、幼馴染さんもショックを受けるんじゃないですか?」
「あのベッド、めちゃくちゃ高かったんだよ、、、。結婚しても使える様にしっかりしたヤツだし、、、」
(関口さん、元彼と結婚まで考えてたんだ、、、)
「じゃぁ、ベッドは譲れませんね。頑張って説得しないと。引越し業者が運ぶ時、どうするんですかね?新しい家に入れる時、二階以上だとベランダから入れるのかな?ベランダ無かったらどうなるんだろう。ちなみに分解して組み立てとか出来ますか?あーゆうの捨てる時、どうするんですか?壊してゴミ捨て場に持って行くんですか?」
「、、、うぅ」
関口さんが下を向きながら呻いてる、、、。
「、、、ベッドは、、、置いていく、、、。そしてもうベッドは買わない、、、」
(あ、色々面倒臭い事に気が付いたな。握り拳を作って泣きそうな顔してるよ、、、)
「でも、俺、ベッドが好きなんだよ」
「もう、家具とか電化製品とか全部置いて、俺の部屋に来れば良いじゃないですか。部屋も空いてますよ。ベッドだってちゃんとあるし。俺のベッドもなかなかですよ。ちょっと広めで買ったから、関口さんも気にいると思います。幼馴染さんも、関口さんが急に居なくなったら、心配すると思うし来ちゃえば良いじゃないですか」
「そうかな、、、?心配してくれるかな?」
「心配します」
「別れた元彼でも?」
「俺なら心配しますね」
(心配するからと言って、連絡するとは限らないけど、、、)
「じゃぁ、波丘の所にお邪魔しようかな、、、」
(酔っ払いの関口さん、こんなに騙されやすくて大丈夫かな?)
この際だからと、食器類も全部置いて来させた。翌日、本当に衣類と私物を少しだけ持って、俺の部屋に来た。関口さんは一応、部屋に
「さようなら、今までありがとう」
と、メモを残して鍵を置いて来たそうだ。
そして、薄情な関口さんの元彼は一度も連絡をして来なかった。
「波丘に騙された、、、」
週末二人で飲んでいたら、酔っ払った関口さんが絡んで来た。
「アイツから何も言って来ないじゃないか、、、」
「え?俺、連絡来るとは言ってませんよ。心配するって言ったんです」
にっこり笑うと、関口さんは
「ズルい、、、」
と、呟いた。
「幼馴染さんからの連絡待ってたんですか?」
「う、、、、、うん、、、」
「ふぅ〜、、、ん。俺と暮らして居ながら、他の男の事考えてたんだ、、、」
「な、、、」
「冗談ですよ」
俺が笑うと、関口さんは真っ赤になった。ホント、こーゆう所、可愛いんだよ。ニヤけが止まらない。
関口さんのスマホが鳴った。直感で元彼だと思った。関口さんがスマホに伸ばした手を咄嗟に掴む。呼び出しはそのまま。関口さんが上目遣いで俺を見る。俺は人差し指を唇に当てて、黙って見つめ返した。
「?」
関口さんの瞳が俺を責める。呼び出しが止まった。
「なんで?出ちゃいけないの?」
ちょっと涙目になってる。
(連絡来るの、ずっと待ってたみたいだ)
と思った。また、呼び出しになる。5回鳴ってから手を離した。関口さんが通話ボタンを押す。
「はい、、、」
「俺、、、」
スピーカーになっていたから、元彼の声が聞こえる。関口さんは慌ててスピーカーを切ろうとする。でも上手く切り替えられなかったのか、スピーカーのまま話す。
「うん、、、」
「元気?、、、」
「、、、えっ、、、と」
「ごめん、元気な訳無いか、、、。その、、、急にいなくなったし、心配でさ。」
「先輩、誰ですか?」
俺はワザと相手に聞こえる様に言った。
「え?今、外なの?」
「いや、えっと、友達の家」
関口さんはアワアワしながら返事をする。
「友達の家に泊まってるの?」
「うん、、、しばらくね」
「また、通話してもいいかな?」
「、、、うん」
「ありがとう、じゃぁ、また連絡するよ」
「うん、、、またね」
通話が切れるまで関口さんはそのままで待つ。相手も切れないみたいで焦ったい。俺は冷蔵庫にビールを取りに行く。戻りながら関口さんの顔を見たら、何とも幸せそうな顔をしていた。
いつから幼馴染なんだろう。幼稚園?小学校?中学かな?幼稚園からなら20年くらいか。俺みたいな、ポッと出じゃあ敵わないな。そう思いながら、関口さんを見る。
「元サヤですかね?」
なんて言うと
「まだわからないよ」
と嬉しそうに言う。
(期待してるクセに、、、)
俺はモヤモヤして来た。
「元サヤでしょ。おめでとうございます」
にっこり笑ってやる。
「波丘?」
「ビールで乾杯しましょうよ」
持って来た1本を関口さんに渡す。
「ありがとう、、、」
「元サヤおめでとうございます。そして、失恋した俺に乾杯」
そう言いながら、ビールの缶と缶を軽くぶつける。
「失恋なんて、本気じゃないクセに」
と言って関口さんは笑う。
「本気ですよ」
関口さんは俺の顔をジッと見て、ちょっと小首を傾げる。俺はプルタブを押し上げて、ビールの蓋を開けるとゴクゴク飲む。
「イケメンに言われると冗談でも嬉しいよ」
「冗談じゃありません」
俺は真剣な顔で言う。
「そ、そうなんだ、、、」
「そうです」
(ま、俺の事は最初から眼中にないだろうけど、、、)
夜中に関口さんが使っている部屋から、ボソボソ声がする。元彼と話しているんだろう。これは、本当に元サヤかもな、、、と思った。
*****
「波丘さん、飲みに行きませんか?」
「いいよ。いつ?」
「良いんですか?今日どうですか?」
「今日ね。わかった」
昨日の件で、俺はちょっとヤサグレていた。休憩室で、缶コーヒーを飲んでいたら女子社員に声を掛けられて、飲みに行く事にした。関口さんは隣で静かに聞いている。
「関口さんもどうですか?」
ついでみたいに誘われた。
「え、、、いや、俺は遠慮するよ」
「そうですか、またお誘いしますね」
女子社員はホッとした様に言う。女子社員が休憩室を出て行ってから、関口さんが
「流石、イケメン」
と呟く。こんな事があっても関口さんは、ヤキモチも妬かないんだろうな、と思いながら
「そー言う訳で、今日は遅くなりますね」
「、、、わかった」
数人で飲み会だと思ったら、二人きりだった。会社のロビーで待ち合わせだったから、二人きりで歩くとデートに行くのかと勘違いされた。
「まさか、二人きりだとは思わなかったよ」
「飲み会とは言ってませんよ」
女子社員はにっこり笑う。
「どこに行きましょうか?何が食べたいですか?」
俺は近場の男性客ばかりが集まる様な店に入り
「ここ、美味いんだよ」
と言って、無理矢理席に着いた。勿論、飯を食ってちょっと酒を飲んで解散する。彼女は不満そうだったけど、2人きりで飲むのは嫌だった。
家に帰ると関口さんの靴があった。
「ただいま」
と言って靴を脱ぐ。
(一人の時は言わなかったのに)
と思う。
リビングに入ると関口さんが飲んでいた。
「おかえりぃ〜。早いね」
ご機嫌じゃないか。何かいい事でもあったのか?元彼と元サヤになったのか?
「酔ってますね」
ぽやぁ〜とした顔で俺を見る。
「波丘は酔ってないの?」
「酔いませんよ」
(あんな女と二人きりで飲んでも美味く無かったし。あんたにヤキモキ妬いて欲しいから飲みに行ったんだよ、、、)
なんて、絶対言わないけど、、、。
「可愛い女子と飲みに行ったのに、楽しく無かったの?」
「フツーでした」
(さっさと帰って、関口さんと飲めば良かったよ)
俺はネクタイを外して、上着を脱いだ。
「シャワー浴びて来ますね」
そう言って、リビングを出る。
シャワーを浴びて、さっぱりしてリビングに戻ると関口さんが通話中だった。
(あぁ、元彼か、、、)
と思いながら、リビングのドアを閉めて自室に行く。ため息を吐きながら、冷蔵庫からビールを持って来れば良かったと思った。しばらくベッドでゴロゴロして、物足りないからビールを取りに行く。通話の邪魔をしたくなかったから、静かにドアを開けて冷蔵庫の前に立つ。関口さんは
「うん、、、うん、、、。そうだね、、、」
なんて返事をしていた。早く仲直りして、一緒に住めば良いのに、、、と思いながら、リビングを出た。
関口さんがドアをノックする。
「どうぞ」
と言うと遠慮がちにドアが開く。
「飲んでるの?」
と聞くから
「飲んでますよ」
にっこり笑って、ビールの缶を見せる。
「一緒に飲まない?」
「良いですよ」
腰掛けていたベッドから降りて、リビングに行く。
「さっきの幼馴染さんですか?」
「、、、うん」
「戻って来てって言われたんですか?」
関口さんが俺をジッと見る。
「今日、早かったんだね」
(あ、話題を変えた。聞かれたくないのか?)
「飲み会だと思って行ったら、二人きりだったから、、、」
「、、、そうだったんだ、、、」
(あれ?元気ない?)
「俺が遅かったら、幼馴染さんでも呼ぼうと思ったんですか?。ダメですよ、此処で相引きしたら、、、」
「しないよ」
関口さんが困った様に笑う。
「、、、さっきの通話、幼馴染さんでしょ?」
「、、、うん」
「仲直りしたんですか?」
「彼氏と上手くいかないって、、、」
「チャンスじゃないですか。もうすぐ
元サヤですね」
「チャンスって、、、」
関口さんは何とも言えない笑顔を見せた。
「あのベッド置いて来て正解だったよ。彼氏に「元彼と使っていたベッドでなんて寝られない」って言われたって、、、。引き取ってくれないかって言われて、僕は居候だから無理だって断ったんだ」
「上手くいったじゃないですか、、、」
「それから彼氏とギクシャクしてるらしくて、、、」
「もうすぐ、先輩の元に戻って来ますよ」
痩せ我慢がバレない様に、ニカッと笑う。
関口さんは、また俺をジッと見つめる。
「波丘の周りにはいつも女の子がいるよね」
「そうですか?」
「今日も女の子に誘われてたし、、、」
「まぁ、そうですね」
「この間も、何かお菓子貰ってただろ?、、、」
(ん?いつの話だ?結構前に、"お土産"ってちょっとしたお菓子を貰ったけど、それの事かな?)
「波丘って、彼女いないの?」
「いませんよ。彼女いたら、俺、先輩とじゃなくて彼女と同棲してると思いますけど、、、」
「同棲した事あるの?」
「無いですけど、、、」
「そうなんだ、、、」
ちょっとホッとした様な顔になった。
「波丘はさ、同性と付き合うのどう思う?」
「どうって、、、?」
「変じゃないかな?」
「別に変じゃないでしょ?好きになるのに、性別は関係ないし。好きになっちゃったら、相手の事束縛したくなるだろうし。束縛したいから、付き合うんでしょ?まぁ、束縛って言葉は極端だけど、、、」
「束縛したいから付き合う、、、」
「そうですよ。自分以外の人を大切にして欲しく無い。自分だけを見て欲しい。そう思った時点でその人が好きだし、束縛したくなるでしょう?付き合う事で、約束した事になる。相手を大切にする、1番に考える。それが出来なくなったら別れた方がいい」
「自分以外の人を大切にして欲しく無い。自分だけを見て欲しい、、、」
「関口さんは、幼馴染さんにそう思ってるんでしょう?」
関口さんはビールを飲んだ。何か考えてるみたいだ。
「俺、なんか、ツマミ探して来ますね」
俺は酒を飲む時、ツマミを食べない。だから、何が良いかわからなかった。そう言えば、さっき話していた"女子社員からもらったお菓子"が何処かにあったな。と思って探す。小さな紙の手提げ袋に入っていたはずだった。冷蔵庫からもう2本ビールを持って、貰ったお菓子と一緒に持って行く。
「どうぞ」
関口さんにビールを渡し、小さなお菓子の箱もテーブルに置く。
「これ、めっちゃ高いチョコレートじゃない?」
「そうなんですか?」
「テレビでやってた、、、」
「そうなんだ、、、。これでしょ?さっき言ってたお菓子」
「これは波丘が食べた方が良いよ」
「う〜ん、俺、酒飲みながらツマミとか食べないからな」
「今じゃ無くてもいいから、ちゃんと食べてあげなよ。波丘の為にわざわざ買いに行ったんだよ」
「そうですか?わかりました。先輩がそう言うなら、、、」
*****
会社帰り、駅の改札に関口さんが居た。知らない男と。あれはきっと元彼だ。アイツ、こんな所まで来たのか、、、。
関口さんが元彼とやり直したいなら、引き止めるべきでは無い、、、と思いつつ、一度振ったクセにやり直したいなんて虫が良すぎるだろう、とも思う。取り敢えず、二人の様子を観察する。
関口さんは、元彼に促される様に改札横に移動する。何だろう。関口さんの様子がおかしい。元彼に会えて嬉しいなら、あんなに下を向かないと思う。横に首を振ったり、身体が引き気味になってる。明らかに嫌がってる感じがする。何と無く、喧嘩をしているのがわかり、関口さんの元へ行く。
「お疲れ様です」
にっこり笑って関口さんと元彼の側に行く。元彼は
(誰だ?)
って顔をしている。
「波丘、、、」
「どうしたんですか?こんな所で喧嘩してると目立ちますよ」
「う、うん、、、」
そっと関口さんと元彼の間に肩を入れて少し距離を取らせる。
「悪いけど、大事な話しをしてるから邪魔しないでくれる?」
元彼が言う。元彼は確かにイケメンだった。背も高いし、ガッシリしている。仕事も出来そうに見える。関口さんが俺の影に隠れた。元彼と話しをしたくないみたいだ。
「すいません、関口さんは今日具合悪くて帰ったんです。またの機会にしてもらえれば、、、」
関口さんが俺の後ろで小さくなっている。俺の腰あたりのシャツを握りしめているのがわかった。
「君は?」
「会社の後輩です。上司に途中で倒れるといけないから、一緒に帰れって言われて来ました」
勿論ウソだ。俺は後ろの関口さんを隠す様に身体の向きを変える。
「すまない、波丘、、、」
「大丈夫ですか。顔色悪いですよ」
関口さんは、本当に真っ青になっていて今にも倒れそうだった。
「じゃ、失礼します。、、、関口先輩、定期は?」
と言いながら歩き出す。改札を抜け、エスカレーターでホームまで降りて行く。俺は、関口さんの手を繋いで離さなかった。ホームには電車が止まっていた。まだ、座る場所があったから急いで関口さんを座らせる。一応、元彼が来て無いか確認した。ドアが閉まり、関口さんもやっと安心出来たのか、肩の力が抜けたみたいだった。
「駅に着いたら起こしますよ。寝て下さい」
「ごめん、、、」
俺はにっこり笑う。関口さんを安心させたかった。
電車の中で少し寝たからか、関口さんの顔色は大分良くなった。スーパーで晩飯とビールとツマミを買って帰る。家に着いたら、先に関口さんにシャワーを浴びてもらう。、、、初めて俺の家に来た時の事を思い出して、ニヤけた。可愛かったなぁ。関口さんがシャワーを浴びてる間にビールを冷蔵庫に入れて、晩飯を温める。テーブルに準備して、関口さんと入れ替わりにシャワーを浴びに行く。関口さんはシャワーを浴びて落ち着いたのか、顔色が戻っていた。
「あれ?食ってなかったんですか?」
シャワーから出て、リビングに行くと関口さんは何も手を付けずにいた。
「ああ、一緒に食べようと思って待ってたから」
「もう一度温めますか?」
「いや、このままでいいよ」
俺は冷蔵庫からビールを2本持ってリビングのソファに座る。
「お疲れ様。で、何があったんですか?」
関口さんは俺の顔をジッと見る。
「ま、いいや。腹減ったから食いましょう」
関口さんが話したくないなら、無理には聞かない。早く酔わせて、勝手に喋って貰えばいい。
2本目のビールを飲み終えた頃、ポツリポツリと話し出した。
「やり直したいって言われた」
「おめでとうございます」
関口さんがジッと見る。
「アイツ、彼氏と上手くいってないみたいで、何度か会いたいって言われてたんだ」
「会わなかったんですか?」
3本目のビールを飲む。
「だって、彼氏がいるのに悪いだろ?」
(真面目だ)
「別れてすぐの時は、やっぱり淋しくて会いたかったんだ。アイツが連絡してくる度に嬉しかった。彼氏と上手くいかなくて、どうしたらいいかわからないって相談されて、別れた相手にそんな相談するなよ、、、って思いながら、アイツと繋がってる感じがして嬉しかった。」
俺はふふっと笑った。関口さんはお人好しだな、、、。
「その内、彼氏と俺を比べて、「お前といる時は楽だった。気を使わなくて良かった。あいつといると機嫌を取ったり、気を使って疲れる」って言い出したんだ。「休みの度にデートに行きたがる。飲みに行けば、誰と何処に行くんだって聞かれる。自由が無い。お前とやり直したい」って、、、」
「付き合って間も無いんだから、そんなもんでしょ、、、。」
俺は少し呆れて言った。
「僕とアイツは小さい頃からの付き合いだから、そう言う事は無かったんだ。大きな喧嘩も無かったし、、、。僕、アイツの事好きだけど、今でも愛してるのかな?、、、。長い時間一緒にいたから、家族みたいな感じになってる気がする、、、。アイツにドキドキする事無いし、振られてショックだったけど、、、。よくわからないんだ、、、」
「そうですか、、、」
関口さんが、僕って言い出した。俺は一度立ち上がってビールを取りに行く。関口さんに1本渡し、同時に開ける。俺はビールをグッと飲んだ。関口さんが俺を見ている。
「通話はしてたけど、絶対に会わない様にしてた。彼氏がいるのに、アイツと会うのは良く無いと思ったんだ。本当は通話も良く無いんだけど、今更拒否するのも難しくて、、、」
「先輩、飲んで飲んで。ビール温くなっちゃいますよ」
「あ、あぁ、、、。アイツにもう一度やり直そうって言われたけど、アイツは彼氏と別れた訳では無いし、、、。僕がやり直すって言ったら別れるつもりなのかな?よくわからない、、、」
ビールの缶を両手で持って、クルクル回している。俺はビールの缶の下を指で支えて持ち上げる。関口さんが気付いてビールを飲む。
「僕はね、、、」
(さっきから、僕って言ってるな、、、)
「僕は、アイツも別に僕の事愛してる訳じゃないと思うんだ。ただ、一緒にいると楽だからやり直したいだけだと思う」
「そうですね」
「そうですねって、、、ひどいな」
関口さんが苦笑いになる。
「だから、お互いの為に今のままで良いと思うんだ、、、。」
「関口さんはそれで良いんですか?」
「う〜ん、、、。わからないけど、楽だから付き合うってなると、、、なんか違う気がする」
「そうですね、、、」
「今の彼氏の事だって、好きになったんだから、もっと大事にすれば良いのにって思うんだ。彼氏も、アイツの事好きだから色々言うんだろうし、、、。もし、今やり直しても、また同じ事が起きる気がして、このままでいいかな?って、、、」
「ちょっと、トイレ、、、」
「はい、いってらっしゃい」
俺は一度、テーブルの上を片付ける。空き缶と、食べ終わった皿をキッチンに持って行き、洗い物をする。テーブルを拭き、ツマミの乗った皿をキッチンに運び新しい皿に移す。
(先輩、戻って来ないな、、、)
と思い、トイレに行く。いない、、、?俺の部屋のドアが少し開いてる、、、やられた、、、。ため息を吐きながら、自室に入る。関口さんが倒れ込む様に、俺のベッドで寝てる、、、。
「ベッドが好きって言ってたもんな、、、」
関口さんの部屋にはソファベッドが入っていた。やっぱりあれじゃぁ、満足しなかったか。俺はベッドに腰掛けた。
「先輩、、、」
「先輩、、、」
起きる気配が無い。
「襲いますよ、先輩、、、」
耳元で囁いてみる。反応無し。俺のベッドは大きめのベッドだ。関口さんが結婚しても使える様にしっかりしたベッドを買った様に、俺も彼女が出来た時に二人で寝られる様にデカいのを買った。関口さんをコロンと奥に転がし、俺も横になる。仰向けになった関口さんは気持ち良さそうに寝ている。
(愛しているのかわからない、やり直さない方が良い、、、か、、、)
関口さんの顔をじっくりと眺める。まつ毛が綺麗に並んでる。関口さんが少し目を開ける。ぼぉっとしながら、俺を見る。
「波丘、、、」
目を閉じて、俺の名前を呼ぶ。寝返りを打つ様に、身体をこちらに向ける。
「はい、、、」
「波丘は、まだフリーなの?」
「恋人がいるか、いないかですか?」
「うん」
「いませんね」
「好きな人は?」
「いますよ」
「そっか、、、いるんだ、、、」
ちょっと残念そうに返事をする。
(やっぱり冗談だと思われてる気がする、、、)
「俺、振られたんです」
「えぇ〜、波丘みたいなイケメン、振る女いるんだ」
目を閉じながら笑う。
「男ですよ」
「、、、」
「付き合ってた男に、振られたばかりの男でした」
俺の顔を見ている。瞳が少し左右に揺れている。ちょっと潤んでて可愛いな。
「幼馴染と付き合っていて、もうすぐ10年だったらしいです」
関口さんが数回瞬きをした。視線を泳がせて、何か考えているみたいだ。
「えっ、、、と、、、」
「忘れちゃいました?先輩に「俺と付き合いますか?」って言って、「イケメンはもういいや」って振られました。俺は今でも先輩の事好きです。むしろ、今の方が好きかな、、、」
「冗談」
「では無いですね。俺、本気で好きですよ。先輩の幼馴染が通話して来る度にイライラします。先輩も嬉しそうにしてた時は、サッサと寄りを戻せば良いのにって思ってたし、ヤキモチ妬いて欲しくて女子と飲みに行きました。まぁ、先輩は何とも思わなかったみたいですけど」
急に関口さんの瞳から涙がポロポロ溢れ出した。俺はギョッとして、関口さんの頬に手を添えてしまった。
「どうしたんですか?」
親指で涙を拭う。関口さんは俺の手に自分の手を重ねて、何も言わずに首を振る。ヤバ、、、やっぱり可愛い。
「僕、自分の気持ちがわからない。アイツと別れて淋しかったのに、波丘が、女子と飲みに行った日、、、何だかすごく不安になった。彼女に誘われてる時点で、断って欲しい、行かないでって考えてた。後から二人きりだったって聞いてショックで、意地張って遠慮しなければ良かった、どうして着いて行かなかったんだって後悔した。波丘が思ったより早く帰って来て、安心したし。酔っ払う程飲まなかったみたいだから、一緒に飲めると思って嬉しかったんだ。まだ、アイツの事好きなのに、、、。でも、波丘がシャワーを浴びてる間に、アイツから通話が来て、ホントは波丘とたくさん話しがしたかったのに、邪魔された気分になって、すぐに通話を切りたかった。波丘に、アイツとの仲を応援する様な事言われると悲しくなるし、何だか変な気分になるし、、、。波丘に女子が話し掛けるのを見るとモヤモヤしてた。あのお菓子だって、、、。あんなに高い物送る程、波丘が好きなんだって考えて。彼女が波丘の事想いながら、わざわざお店まで行って選んだって思ったら食べたく無かった」
「先輩、俺の事、好きになっちゃった?」
関口さんが顔を上げる。瞳がウルウルしてる。
「好きになっちゃった?」
自分に自分で問いかけてるのかな?
俺のシャツを両手で掴み俯く。
「そうかも、好きになったのかも知れない、、、。だから、アイツと会いたく無かったのかな?アイツからの通話、最初は嬉しかったのに段々避ける様になってた。波丘に聞かれたく無くて、スマホにアイツの名前が表示されると気分が悪くなる様になったんだ。それなのに、波丘は僕がアイツとやり直したいと思ってるみたいだったし、、、」
「じゃあ、俺達、両思いですよね?」
「、、、え?」
「俺は先輩が好きです。先輩は俺の事、どう思ってるんですか?」
「好き、、、」
「それって、両思いですよね」
「そっか、両思いなんだ、、、」
関口さんの口元が優しく笑う。
「関口さん、、、」
「?」
急に名前で呼ばれて、関口さんが俺の顔を見る。俺は、関口さんの瞼にそっとキスをした。
「関口さん、可愛い。大好き」
耳まで真っ赤にして、涙をポロポロ流して言う。
「だからイケメンは嫌いなんだよ、、、無駄にカッコいいんだもん、、、」
関口さんが俺にしがみつく。
「関口さん、俺ね。関口さんに俺以外の人を大切にして欲しく無い。俺だけを見て欲しいんだ。だから、付き合いたい、、、付き合って下さい。俺、関口さんの事、大事にするよ。1番大事にする。誰よりも誰よりも大切にする」
「波丘、、、俺も、波丘だけを大切にしたい。それから、俺の事も大事にして欲しい」
関口さんが俺の右顎にキスをした。
「ごめん、ちょっと届かなかった、、、」
「ふふ」
俺は抱き上げる様にして、関口さんを引き上げる。
「もう一度して?」
「ん」
関口さんが目を閉じながらキスをした。関口さんの酔いが覚めても、このキスを覚えていてくれますように、、、。
「それにしても、関口さんが俺の事好きだったなんて、全然気が付かなかったな」
「、、、俺も」
「、、、俺もって」
俺はついつい笑ってしまった。関口さんが俺の心臓の音を聞いている。俺の腕の中に関口さんがいる。強引に一緒に住み始めたけど、今は良かったと思う。俺だけがヤキモチ妬いたり、イライラしたりしてると思っていたのに、関口さんも色んな気持ちになっていたなんて信じられなかった。そして、嬉しい。
会社の帰り道、関口さんと2人で歩いていると、関口さんの幼馴染が駅の改札横にいた。身長が高いし、身体もデカいからやたら目立っていた。関口さんは俺に隠れる様に後ろに下がったけど、残念ながら俺の顔も知っていたから、見つかってしまった。
「元!」
早足で近付いて来る。関口さんは俺の後ろで、俺のスーツの上着を掴む。
「元、やり直したいんだ。ちゃんと話しをしよう」
俺を挟んでごちゃごちゃ始めた。
「悠誠、、、ごめん」
関口さんが俺の後ろから顔だけ出す。
「俺、この人と付き合ってるんだ。だから、やり直せないよ」
「嘘だろ、、、」
「ホントだよ。好きなんだ。悠誠もちゃんと彼氏の事考えてあげて、嫌いになった訳じゃないでしょ?」
「わかった、わかったから2人で話そう」
ヌッと手が伸びてきたから、俺は思わず掴んでしまった。
「ダメですよ」
「お前、この間の、、、」
「関口さんの後輩で、恋人の波丘です」
思いっきり笑顔で名乗ってしまった。
「悠誠、ごめん。俺、波丘さんを大切にしたいんだ、だからもう連絡しないで欲しい。もし、連絡があっても出る事は無いから、、、」
「元、、、」
「俺達はもう終わったんだ。悠誠から別れたんだよ、好きな人が出来たからって。悠誠はちゃんと今の彼を大切にした方がいいよ、、、」
関口さんは俺の腕を引っ張って、改札に向かった。
家に着くまで、関口さんは一言も話さなかった。今日の事がショックだったんだろうか。2人でリビングに入り、荷物を置くと関口さんが俺を抱きしめた。
「悠誠とはずっと連絡取って無かったんだ。急に無視する感じになってたから、今日ちゃんと伝えられて良かった。俺、波丘の事、大好きだから大事にする」
「修一、、、。修一って読んで欲しい」
関口さんは、俺の頬を両手で包んで
「修一」
と呼ぶとキスしてくれた。
「1番好きだからね」
「俺も、元さんが大好き」
俺は元さんの腰をグッと引き寄せキスをした。