第10話:また、朝がくる
朝、5時55分。
目覚ましが鳴る3秒前に、純志は目を開けた。
……静かだ。
空気も、光も、昨日と同じ――ように見える。
ベッドを出て、鏡を見た。
目の下にあったはずの小さなホクロが、なくなっていた。
コンビニのレジ、店員は人間。
駅の広告には、
「この世界に異常はありません」
とやたら丁寧なフォントで書かれていた。
(うざぁ……)
誰もおかしくない。
でも、それが一番、おかしい。
会社に着いてデスクにログインしようとしたとき、
PC画面の片隅に、白い小さな文字がふっと現れた。
「観察対象No.042:正常起動完了」
(……変わってる)
昨日までのナンバーは041だった。見間違いじゃない。
そして“正常起動完了”――つまり、これは42回目の世界の再起動なんだ。
……なら、今回の俺は“42体目”ってことか。
苦笑しながら、椅子に背をあずけた。
昼休み、公園のベンチ。
ベンチの裏に、小さな落書きがあった。
「だいたい42回目くらいで気づく」
誰が書いたのかもわからない。
けれど、今の純志には――やけに納得できた。
そのときだった。
「おはようございます。……180cmのうさぎ、見かけませんでしたか?」
背後から聞こえた、穏やかな声。
振り返ると、スーツ姿のキリンが立っていた。
純志は、軽く笑って言った。
「うん、またお前か」
キリンは首を傾けて、静かに頭を下げた。
また、朝がくる。
世界はもう、42回目だ。
―佐藤純志のあとがき(Ver.42)―
いやもう、42回目って、なんかキリいいな。
このあとがきも、もしかして過去に41回くらい書いてんのか?
そう思うと、そろそろ「テンプレあとがき」でも作っとこうかな。
てかさ、PC画面に「042」とか出されるとさ、
“俺が入れ替え制”なのバレバレじゃん?
もうちょい気ぃ遣ってくんないかな、この世界。
……でも、まぁ。
また朝が来たし、
また世界が始まったってことなんだろな。
よし。うさぎ、探すか。




