第6章:真の捕食者の咆哮
第6章:真の捕食者の咆哮
シンジュウたちは動かずにいた。爪を振り上げ、今にも立っているのがやっとの内気な少女を押し潰そうとしていた。だが、何かが彼らを止めていた。それは盾でも、魔法でもない。「存在感」だった。
アレックスの。
彼は静かに訓練場の中心へと歩いていった。その足音は、まるで森全体が息を呑んでいるかのように響いた。一歩進むごとに、空気が重く、濃く、熱く、赤くなっていく。
紅蓮のオーラが彼の体を包み始め、まるで液体の炎のように揺らめいた。彼の三色の髪が逆立ち、光を放つ。普段は空虚なその目が、今は深紅に燃えていた。
「な、なんだこいつは…?」
まだ意識のある学生の一人がつぶやいた。
「ピラミッドを使ってるのか…?」
別の学生が言った。
だが違う。アレックスのピラミッドは、まだポケットの中にあった。
彼はそのまま、かつて誰もが致命的な脅威と見なしていたクラス2のシンジュウの前で立ち止まった。
その怪物は咆哮を上げ、彼の頭を狩り取ろうと爪を振るった。
だがアレックスは、ただ片手を上げただけだった。
その瞬間、彼のオーラが爆発し、形のない力へと変貌した。深紅のエネルギーの爪が彼の腕から現れ、シンジュウの体を貫いた。怪物が触れる前に。
時間が止まったかのようだった。
シンジュウは驚きと苦痛の入り混じった声を発し…そして体が真っ二つに裂け、黒い結晶の雨となって消滅した。
全員が息を飲む。
地面に倒れていた教官は、かろうじて目を開けたまま呟いた。
「…触媒なしの技、だと?」
レイジは震えながら、その光景を理解できずにいた。
「今の…なんだったんだ…?」
内気な少女は、呆然としたまま、ゆっくりと消えゆく自分の盾を見つめながら、アレックスを見上げていた。
アレックスは、粉々になったシンジュウの残骸の中を歩き、彼女の前で立ち止まった。
「怖がってる顔、すごく可愛いって言われたことある?」
さっきまであの怪物を一瞬で消し飛ばした存在とは思えないような、いたずらっぽくもミステリアスな笑みを浮かべた。
彼女の顔は一気に真っ赤になり、言葉も出せなかった。
だが、その束の間の甘い空気はすぐに吹き飛ばされた。
クラス3のシンジュウが、仲間を倒された怒りで咆哮を上げた。そしてもう一体も、迷うことなく進み始めた。
教官が、かすれた声で叫んだ。
「避難しろ!!あれには勝てん!!」
だがもう、遅かった。
クラス3のシンジュウは分裂し、灰色の歪んだオーラを放ち、残った数名の生徒たちを包囲し始めた。
しかしアレックスは――ただ人差し指を舐めて、まるで果実の味を確かめるように呟いた。
「さて…ここからが本番だな。」