第4章:クラス1のその先へ
森は再び静けさを取り戻していた。
アレックスは無表情のまま林から出てきた。まるで退屈な美術館の彫刻でも見るかのように木々を眺めていた。右手には、つい先ほど倒したシンジュウから取り出したばかりの、黒く光るピラミッドが淡く震えていた。装備も、魔法道具も、自分のピラミッドさえも使っていない。ただ――引き抜いただけだった。
「チッ、消える時も抵抗しなかったな…」と彼は小さく呟いた。
森の向こう側では、つい先ほどの戦いで息を切らしていた、明るい茶髪でラベンダー色の大きな瞳をした内気な少女が、アレックスが無造作に歩いてくる姿を見つめていた。
だが、彼女の視線を本当に引きつけたのは――アレックスの背後だった。
彼が歩いてきた地面は、完全に破壊されていた。木々は根こそぎ引き抜かれ、地面はひび割れ、石は一部溶けていた。まるで魔力の嵐がそこを襲ったようだった… だが、戦闘の痕跡は一切なかった。傷もなく、ただ一体の倒れたシンジュウと、まるで花を摘んできただけのようなアレックスの姿。
少女は驚きのあまり一歩後ずさった。
「これ…あなたがやったの?」
アレックスは彼女を見て、一瞬だけ、その瞳にからかうような光を宿した。
「君って、可愛いって言われたことある?」
少女の顔は一瞬で真っ赤になり、両手を頬に当てて動揺した。
「えっ!?な、なに言ってるの…!?」
だがその会話は、突如響いた恐ろしい轟音によって遮られた。訓練場の向こう側の林から、二つの巨大な影が木々をなぎ倒しながら現れた。その瞳はまるで燃え盛る炎のようだった。クラス2のシンジュウとクラス3のシンジュウ――二体同時に現れたのだ。
大地がその一歩ごとに震えた。
近くの塔にいた教官が、目を見開いて叫んだ。
「そんなはずはない!クラス3が…ここに…!」
彼は魔法の通信器を作動させて怒鳴った。
「全学生、直ちに避難せよ!繰り返す、今すぐ退避!」
多くの学生が慌てて走り出し、中には転ぶ者もいた。しかし、全員ではなかった。レイジはその場から動かず、眉をひそめていた。他にも、雷に包まれた槍を持つ生徒と、暗黒魔法で強化されたガントレットを装着した生徒の二人が撤退を拒んだ。
アレックスは動かなかった。
怯えながらも、内気な少女もその場を動けなかった。恐怖…そしてアレックスの存在が、彼女をその場に縛りつけていた。
教官は空飛ぶ杖を使って地上に降り立ち、シンジュウたちと生徒たちの間に立ちはだかった。
「君たち!早く逃げろ!私が奴らを食い止める!」
彼はピラミッドを発動させ、足元に金色の魔法陣を展開した。そこから青い炎で鍛えられた巨大な槍が召喚され、深い蒼いオーラが彼の周囲に立ち上った。
アレックスはそれを見て、静かに笑いながら呟いた。
「それで、何をするつもり?」
教官はその口調に驚き、アレックスを見た。
「クラス2のピラミッドでも、十分訓練を積めばクラス3のシンジュウに対抗できる!」
アレックスは首をかしげて、面白そうに笑った。
「ふーん…でも二体いるよ。どうするつもり?」
沈黙がその場を包んだ。
シンジュウたちが咆哮をあげた。
そしてアレックスは――静かに笑った。まるで本当の遊びが、ようやく始まるかのように。
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