第7話:無能の弟、兄を追い詰める!?逆転の一手
劣勢の戦い
ギルド内に張り詰めた空気が漂う。
俺と兄アルバートの決闘は、開始早々に一方的な展開になっていた。
「どうした? もう終わりか?」
アルバートが軽く剣を振るうだけで、俺は防戦一方だ。
俺の短剣が届く前に、彼の剣が寸分の狂いもなく狙いを定めてくる。
(まずい……このままじゃ本当に一撃も入れられずに終わる)
俺とアルバートの実力差は歴然だった。
攻撃力、速度、技術、すべてが俺を上回っている。
しかし、俺にはまだ勝ち筋がある。
解析眼で見抜いた兄の弱点
「……」
俺は息を整えながら、もう一度**解析眼**を発動した。
敵の動き、武器の軌道、隙の瞬間――。
そして、俺は気づいた。
(やはり、兄貴は魔法を使ってこない。魔力の回復が遅いんだ)
さらに観察すると、もうひとつの弱点を発見した。
(……右足の踏み込みがわずかに甘い。左に比べて動きが鈍い……怪我をしているのか?)
これならいける。
(魔力を使わせ、右側を攻める。これが俺の勝ち筋だ。)
逆転の戦術
「兄貴、そんな程度か?」
俺はわざと余裕のある笑みを浮かべ、煽った。
「ふん……言葉だけは一丁前だな」
アルバートは冷笑しながらも、わずかに目を細めた。
俺の言葉に動揺したわけではない。だが、彼は魔力を節約して戦っている。
(ならば――使わせる!)
「お前の剣技だけじゃ、俺には勝てないぜ」
俺は挑発しながら、ぎりぎりの距離を維持する。
そして、兄の剣をわざとギリギリでかわし続けた。
(あと一撃……あと一撃、惜しいと思わせれば……!)
数秒後――
「……いいだろう。ならば、少しだけ本気を出してやる」
アルバートの手に魔力が集まり始めた。
(きた……!)
魔法発動、そして逆転
「炎撃剣」
アルバートの剣が炎をまとう。
これこそが、彼の得意魔法のひとつ。
「……お前に当たれば、炭になるぞ」
「上等だ!」
俺はアルバートが魔法を発動した瞬間、猛然と駆け出した。
「――なっ!?」
アルバートが驚く。
(魔法を発動した瞬間、数秒間は防御が甘くなる!)
俺は一気に距離を詰め、兄貴の右足へ全力の蹴りを叩き込んだ!
「ぐっ……!」
兄貴の体勢が崩れる。
(右足の怪我が悪化したはずだ……!)
「まだ終わりじゃないぞ!」
俺は短剣を逆手に構え、兄の剣の角度を見極めた。
そして――
「おらぁぁ!!」
全力で短剣を振り抜く。
「ぐっ……!」
剣を握るアルバートの手首を狙い、衝撃を与える。
炎をまとった剣が宙を舞い、カンッと床に落ちた。
兄貴の武器を落とさせた……!
決着の瞬間
「はぁ、はぁ……」
俺は短剣を兄の首元に突きつけた。
「……勝ったな。」
ギルド内は静まり返っていた。
落ちこぼれと呼ばれた弟が、天才と称された兄を追い詰めた。
アルバートはしばらく無言で俺を見つめていたが、やがて苦笑を浮かべた。
「……なるほど。お前、本当に成長していたんだな」
そして、肩をすくめながら言った。
「……俺の負けだ」
ギルドの冒険者たちの反応
「……え?」
その言葉が発せられた瞬間、ギルド中に驚きの声が広がった。
「勝った……?」
「ディアス公爵家の長男に……?」
「本当に、あのFランクの新人が……!?」
まるで信じられない、というような視線が俺に向けられる。
だが、それでいい。
(……俺はもう、「無能」じゃない)
兄アルバートに認められた今、俺はようやく貴族の呪縛から解き放たれた気がした。
兄の最後の言葉
決闘が終わった後、アルバートは俺に近づいてきた。
「レオン」
「……なんだ?」
「貴族に戻る気はないか?」
「……」
俺はしばらく考えたが、すぐに答えを出した。
「……悪いが、俺はもう貴族じゃない。冒険者として生きる」
「……そうか」
アルバートは小さく頷いた。
「お前がどこまで強くなるか……楽しみにしているぞ」
そう言って、兄はギルドを去っていった。
新たな目標
兄との決闘を終え、俺はギルド内での評価を一気に上げた。
だが、俺はまだまだ成長の途中だ。
「……次は、もっと強い相手と戦わないとな」
俺は拳を握りしめ、新たな目標を見据えた。
(まだまだ、俺は強くなれる……!)
第8話につづく!
「新たな仲間!天才魔法使いカイルとの出会い」