第1話:追放された無能貴
プロローグ:異世界転生
長時間プレイしていたゲームのラスボスを倒した瞬間、俺の意識は途切れた。
目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。
「……ここは?」
ベッドの上で目を覚ました俺は、体が妙に軽いことに気づいた。見下ろすと、自分の手が小さくなっている。
鏡を探して顔を見ると、明らかに自分ではない少年の姿が映っていた。
(まさか……これ、異世界転生ってやつか!?)
そう思った瞬間、脳内に流れ込んでくる記憶。どうやらこの世界での俺の名前はレオン・ディアス。
王国でも名門と名高いディアス公爵家の三男らしい。
ただし、問題があった。
成人の儀式:魔力ゼロ判定
この世界では15歳になると「成人の儀」を受け、魔力適性とスキルを授かるらしい。
そして迎えた今日、俺は家族の前で魔力適性を測ることになった。
儀式を行うのは、家に仕える老魔導士。水晶に手をかざすと、通常なら魔力が数値化されるはずだった。
「では、レオン様。魔力適性を測ります……」
俺は緊張しながら水晶に手を置いた。
――が、数秒待っても何も起こらない。
「…………?」
「……これは……?」
「魔力ゼロ……!?」
その場にいた家族の顔が一気に険しくなった。
「嘘だろ、ありえない……」
「こんなことが……」
「ふっ、やはりお前は落ちこぼれだったか」
俺の兄、アルバートが鼻で笑った。彼は長男であり、完璧な天才貴族と称えられている男だ。
「魔力ゼロなんて、貴族の恥だな」
「レオン、お前には貴族の血が流れているとは思えん……」
そして父が重々しく口を開いた。
「レオン、お前はこの家にふさわしくない。今日をもって、ディアス公爵家から追放する」
「――ッ!?」
……こうして、俺の貴族生活はあっけなく終わった。
無能スキル「解析眼」と「吸収」
だが、まだ希望はある。
成人の儀では、魔力適性とは別に「固有スキル」が授かるのだ。
俺はすがるような思いで、老魔導士の言葉を待った。
「レオン様の固有スキルは……『解析眼』と『吸収』です」
俺はホッと息をついた。よし、スキルさえあれば――
「……ゴミスキルだな。」
アルバートが鼻で笑った。
「解析眼? ただの鑑定スキルじゃないか」
「吸収? そんなもの聞いたことがないな」
「やはりお前は何の才能もなかったんだな」
「追放の決定は変わらん。荷物をまとめて出て行け」
――結局、俺は何もできないまま、公爵家を追い出された。
異世界で生きるために
俺はわずかばかりの金を持って王都の片隅にある冒険者ギルドへ向かった。
貴族でもなければ、スキルも魔法もろくに使えない。俺には**「冒険者として生きる」選択肢しかなかった。**
ギルドの受付嬢に目をつけられながら、俺は登録を済ませた。
「レオン・ディアスさんですね。初めてのクエストは、スライム討伐になります」
「……スライム?」
「ええ、最弱のモンスターです。あなたのようなFランク冒険者向けですね。」
(……見下されたな)
だが、ここで腐っている暇はない。俺には**「解析眼」と「吸収」**がある。
スライム狩りが、俺の異世界での初戦闘だ。
第2話につづく!
「スライム討伐!解析眼と吸収スキルの力」