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やさしい悪魔  作者: 黒月 祐
6/7

outrageous

あなたのまわりにはこんな人は居ませんか?

そんな回です。

今日はとても憂鬱だ…


曙の藤田と顔を合わせての打ち合わせの日だから…

制作委員会の方々とは簡単な打ち合わせに関してはオンラインで済ませていたのだが、今回はリハのCVや動画などを合わせての打ち合わせなので大掛かりだ。

正式に契約書を交わすのも今回の打ち合わせのあとで交わす予定だ。

当然、制作の面々揃い踏みでの打ち合わせとなる。

そこに藤田がくるのは仕方ないとしても、ここ最近の藤田のウチの事務所への無茶振りが酷い。

田中さんも当たり障りなく躱してはいるが、かなりストレスが溜まってそうだ。

内容は詳しくは分からないけど、電話で話しているのを聴いている限りではかなり酷い。

アダルトアニメのCVの依頼や恋愛バラエティーショーのタレント出せとか曙の社名が出ない藤田の個人的なコネ造りの手伝いみたいな仕事ばっかだ。

さらに藤田のタチが悪いのは私にオファーをくれたのは曙ではなくキャスティング専門の別会社なのに、まるで自分の貸しであるかのような物の言い草だ。

このところ毎日のようにかかって来る藤田からの電話に田中さんはうんざりしている。

見るに見兼ねて社長が言った「藤田にはハッキリ断ったらどうだ?」

社長(代表)は田中さんの実のお兄さんだ。

田中さんとタイプが違うが、紳士的で社交的でいつも清潔感のあるスーツ姿の優しい人だ。

「でも代表、藤田のヤツ今日の打ち合わせの前に返事が欲しいっていくつかリクエストの案件提示して来てるんですよ!断ったらアイツ何言い出すか…」

「いいんだよ、アツシ」社長が言った。

「オレも目を通してみたが、これはうちで受ける仕事じゃない。ハッキリ断って堂々と打ち合わせに行って来い。水菜の仕事はきっちりやる。藤田の依頼は別!相手が曙でもな。」

社長の言葉に勇気100倍の田中さんは早速藤田に電話して言葉こそ丁寧だけどハッキリと断りの旨を伝えている。

流石は社長だ。進むべき方向を迷った時、しっかりと針路を示す。これこそ代表たるものだ。

社長に勇気を貰った私と田中さんは打ち合わせの会場へと向かった。

田中さんの運転する車の中でランチタイムだ。二人でコンビニで買ったおにぎり、サンドイッチ、お茶、アイス…デザート付きだ。

田中さんは社長みたいなパリッとしたスーツではないが、黒のジャッケットに黒のパンツ、黒のニューバランスのスニーカー。インナーは白のTシャツ。そこへおにぎりの海苔のカスやらサンドイッチのパン屑がポロポロ落ちて乱暴に手で払いながら運転している。


駐車場に車を停め、会場入りすると今回の制作スタッフの全員がすでに来ていた。

藤田は薄いピンクのジャケットに白の綿パン姿で横着にガムをクチャクチャと噛みながら台本らしき物を読んでいて、私達の方は見向きもしない。

40代後半〜50代前半の腹だけ出た中年で目がギョロッとしていて気持ち悪い…

スタッフの皆も雰囲気が重く、キャスティングのメンバーは伏し目がちだ。

藤田の三つ隣の席に見た事のない女性がいた。オンラインミーティングでも一度も見た顔ではない。

田中さんが言った「皆さん、本日はよろしくお願いします。」

もう嫌な予感しかしない。

藤田の目がギョロッと動いて言った。

「あぁ、田中さん。どうもね〜申し訳ないんだがね、うちもさ今回の企画力入れててさ、色々検討したんだけど、ちょっとキャスティングの変更って事になってさ、悪いんだけど今回はおたくのお嬢さん見送りって事になっちゃってさ…」


「な、いや!藤田さん!いくら何でもそりゃ無いんじゃないすか!?」

田中さんはしばらく藤田に抗議していたが、藤田はせせら笑ってのらりくらりと躱した。

正式な契約前である事とキャスティングの最終決定権は曙にある事で田中さんの抗議は認められなかった。

普通ではありえない話だ。本来ならキャスティングのスペシャリストが決めた配役にNGは出ない。

あの見た事ない女性はやはり私の代役だった。

そしてこれは後で分かった事だけど、私の代役は声色が役に合っていないとキャスティングスタッフから藤田に意見があったらしいのだ。

しかし、藤田はそれを全く受入れず強引に押し通したらしい。

そんな藤田の傍若無人な行為もキャスティングの会社としては目を瞑るしかないのだ。

曙から仕事を切られたらやっていけない現実があるからだ。

これが藤田のやり方だ。

あらゆる所でコネを造り、芸能界のみならず裏社会の人間とも関わりがあるらしい。

自分の思い通りにならないと気がすまない。自分に逆らうヤツは潰す。

田中さんが藤田の無茶振りをハッキリ断ったのがよほど気に入らなかったのだろう。


(お前みたいなカスがオレに逆らってんじゃねーよ)


ギョロリとした藤田の目が田中さんを睨んでいる。

ざまあみろ言わんばかりに口の端からガムを覗かせて笑っている。


これが藤田という人間だ。



あくまでフィクションです。

実在する名称、人物等とは一切関係ありません。

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