reminiscence
水菜の追憶シーン。
男性に体を触られたくない…
原因は父だ。
私は幼い頃、父を亡くしている。
私は父が、お父さんが大好きだった。いつも優しかった…
お風呂にも一緒に入ってくれたし、公園でもいっぱい遊んでもらった。
出かけた時も私が寝てしまった時は優しくおんぶしてくれた…目を覚ますのはいつも父の背中だった…
本当にお父さんが大好きだった。
ある日、私とお父さんが買い物に出かけた日の事。
脇見運転の車に跳ねられて父は死んだのだ。
父が私を庇ってくれたおかげで私は軽い怪我ですんだ。
その時の状況を私は憶えていない。
人は見たくないものや記憶に残したくないものを脳が危険と判断すると記憶や視覚から省くらしい。
父と一緒にいた最後の記憶は買い物に出て手を繋いで歩いている所まで。
優しく微笑みかけてくれているお父さん…
優しく手を握ってくれているお父さん…
父の一歩は私の三歩。
私に合わせて歩いてくれる優しいお父さん…私の記憶はそこまでだ…
成長するにつれ男性への嫌悪感だけが増していった。
やたら胸を見る、脚を見る、無意味に距離を詰めてくる…
スカートから覗く下着に奇声を発して騒ぐ。頭おかしいの?
私のお父さんはそんなんじゃ無かった!
いつもいつも優しかった。私が寝付くまでそばに居てくれた。
いつも優しく微笑んでくれた。
こんな性の対象としか女を見れないような人では無かった。
きっとこんな事を言う私が少しおかしいのだろう…
父が今でも健在であればこうはならなかったかも知れない。
でも優しかった男性の、私の理想像が理想のままで逝ってしまったのだ…
故人を越える人物は現れない。
私の男性嫌悪感は増すばかりだった…
高校三年生の時、一歳年下の女の子に告白された。
その子曰く、男子生徒に一切媚びらない、くだらない男子の戯言は全て無視する私は何故か一部の女子の間で人気らしく、隠れファンが居るとか居ないとか…
これ、絶対男嫌いと思われてるやつ。
一方で男子生徒の前で自分の可愛さアピールをする女子生徒は陰ではかなり叩かれてるらしい。
それはわかりやすい…
告白してくれた子は「ゆかり」長い黒髪が印象的なとても可愛い子だ。
「あの、先輩…アニメとか好きですよね。私もで、あの…趣味とか共有出来たら嬉しいですし…あ、もちろん先輩の事も大好きですけど…先輩のファン多いので…」
「今はどんなアニメ観てるの?話しながら帰ろっか」
私とゆかりが仲良くなるのに時間はかからなかった。放課後待ち合わせしてお茶を飲みながらアニメの話をしたり、学校での出来事を話したり…
周囲も特別な違和感は感じないらしく、同じ趣味の女子がつるんでいる程度しかない。
でも、異変は私自身に起きていた。
何度かゆかりを自分の部屋へ呼んで時間を過ごすうち、ゆかりを見て体が熱くなるのを感じた。
その気持ちはだんだん強くなってる…
この子と唇を重ねたい…血が出るほど口を吸いたい…舌を絡めたい…何時間でも…この子の肌を噛みたい…跡が残るぐらい強く…血が滲むほど…この子の肌に爪を立てたい…傷跡が残るぐらいに強く…
我慢に我慢を重ねたけど限界がきた。
「ゆかり、あのね今日お母さん帰りが遅いんだ…仕事の後に会食があるから帰って来るの深夜だと思うの…」
「嫌じゃないなら直ぐにうちに来ない?二人で過ごさない?」
私の声は自分でもわかる程震えていた…
「あの、はい…行きたいです…」
ゆかりの顔は真っ赤だった。そして私の手をぎゅっと握ってきた。
もう二人は無言でただただ歩いた。
まだ外は明るいというのに私は部屋に入るやいなやゆかりと無理やり唇をかさねた。
「ゆかり!」
ゆかりをベッドに押し倒して乱暴に口を吸うと、ゆかりは私の背中に手を回して私の口の中に舌を入れてきた…
(ゆかりの方から舌を…もう、無理…)
プッツリと何かが切れて無意識にゆかりのブラウスを引きちぎった。
白い肌が露わになり、か細い肩をすぼめている。
容赦なくその肩に噛み付いて歯を立てた。血が滲む程。
ゆかりが嗚咽を漏らしながら私の背中に爪を立てる。
「ゆかり!もっと!もっと!強くして!」
ゆかりの爪が私の背中に食い込む。血が出ているのがわかる…
あまりの快感に意識が飛びそうになる…
この日、この瞬間から私の性の対象は男性ではなく、女性になった。
ゴツゴツと骨ばった男性に求められるのはゴメンだ。
私は私の価値観で恋愛する。
他人にどう思われようが、後悔なんて全くない。
思いつきで始めてしまったので情報不足で……(汗)