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やさしい悪魔  作者: 黒月 祐
3/7

desire

悪魔の加護本領発揮!?

水菜の隠された日常とは…

事務所はとても慌しかった。


自分でも不思議なほど良く眠れた。

これも悪魔の加護なのだろうか…とてもリラックス出来てる。


「水菜!これな!あんまり時間の無いが頼むよな!」

「はい!大丈夫です!」

田中さんから今日のイベントの資料が渡された。

今日のイベントの流れや台詞などが確認出来る。

時間はまだ3時間以上ある。台詞もそれほど長くはない。

演じるキャラクターは闇の力で主人公を支えるドラゴンが擬人化した女性。


闇堕ち女子はゲームの世界では鉄板なのかな…


いずれにせよ(ゆるふわ女子)とは真逆。私と鞠子さんの得意分野だ。

普段からのボイストレーニングもサボってないし、このキャラなら無難にこなせるはずだ。

キャラクターをイメージしながら台詞を頭に叩き込む。

(闇の力…力強く…高貴に…猛々しく…)

イメージトレーニングしながら台詞を復唱する…


田中さんの運転する車が会場に近付くに連れ、臆病な私が顔を出し始める。


(大丈夫、大丈夫…きっと大丈夫…)

台本を強く握りしめる。

「水菜、リラックスな。」

ヘビースモーカーの田中さんは私の喉を気遣ってタバコを吸ってない。

今日のイベを無難に乗り切りたいのが良くわかる…うちのエースが倒れてしまったのだから当然不安なのだ。

駐車場に車を停めた田中さんは仮設の喫煙所に行き猛然とタバコをふかし始める。

田中さんは加熱式ではなく火を付けるタバコを吸っている。

愛用のオイルライターでタバコに火を付けてモワモワと煙を吐いている。


とても身体に悪そうだ…


会場入りする時の田中さんはニコチンガムをガシガシ噛んでいた。

「水菜、頼むな、リラックスな、普段通りな…」

何とか成功させてあげたい…不安と臆病が120%の私と田中さんは青い顔で会場へ向かう。


舞台裏では既に出待ちの声優さん達がスタンバイしていた。

顔は知らないけど、名前は聞いた事ある方々だ。

「マリちゃん大変だったね〜大丈夫なの?」

「あ、いえ…ちょっと、詳しい事は…」

このチャラ男が誰かは知らないけど、きっと鞠子さんの知り合いなのだろう…


舞台では司会の人が色々言ってるが全く入ってこない。

イベントはどんどん進みいよいよキャラクター紹介の場面。

司会の人が次々と声優さん達の名前を呼ぶ。

(いよいよ私の番だ!)

田中さんの方をチラッと見た。ニコチンガムをガシガシ噛んでいる。


「それでは!○○役!片瀬 水菜さん!」司会の人の高らかな紹介の後、舞台の巨大スクリーンに私のキャラクターが写し出された。

マイクを手渡され一歩前へ出た瞬間。




(心配するな!私がついている!) ……… 悪魔の声!



「契約をしよう!」

無意識に出た台詞の後は台本の台詞がスラスラと出て来た。


臆病な私と不安は一瞬で消え去り、悪魔が私に舞い降りた!

自信と高貴と力に満ち溢れた圧倒的な声が台詞となって会場に響いた。


(ウォーーーーーー!)


会場の観客席からは歓声が上がった。

興奮気味の司会者が私のキャラクター名を何度も連呼している。

ゲーマーの観客の笑顔が見える。


間違い無い!大成功だ!

歓声の中には私のキャラクター名と私自身の名前を呼ぶ声も混じっていた。


その後は司会の人がゲームの内容やシステムなどの説明をしていたが、私はただニコニコしていれば良いだけなので、あまり聴いてはいなかった。

会場からは時折「水菜ちゃーん」と声がかかるので、ニコニコしながら手を振れば良いのだ。

ちょっと売れっ子になった気分だ。


イベントは順調に進み、フィナーレを迎えて声優達が舞台を降りる際、会場からの声援は私へのものが多かった。

(よかった…とりあえず成功だ…)

イベントグッズの売り上げも私の担当キャラクターものが好評らしく、田中さんも上機嫌だ。

「水菜、よかったよ!本当に!ありがとうな!」田中さんは本当に喜んでる…


「水菜ちゃーん、お疲れでーす。」…さっきのチャラ男。

「いや、良かったスけど、あんまカッパぐとマリさんに恨まれんじゃないすか?」

と、冗談混じりに言った来た。

「あ、いえいえ…私なんかは鞠子さんには全然、足元にも…」

早く消えろチャラ男…

「この後軽く〜行くんですけど〜…」

すかさず田中さんが割って入る。

「いや〜すいません、うちの子このあと押してんですよ〜またでお願いします。」

「あ、そうなですね…田中さん、こちらこそ失礼しました〜また今度是非〜」


田中さんに遮られチャラ男はどこかへ仲間と飲みに行ったようだ。

「全く、あのチャラチャラした…おい、水菜あんなんダメだから!」

「まあ…水菜は心配ないか…」


今の言葉には深い含みがある…


「あ、鞠子の病院で良いんだろ…」

「お願いします…」


そのあと、田中さんは一切喋らず鞠子さんの入院する病院へ送ってくれた。

私が車から降りると待っていたかのようにタバコ に火を付けた。

ヤケクソのようにブカブカ煙を吐いている…


やはり、身体に悪そうだ…


田中さんは私に手を振り、力なく笑って走り去って行った…

田中さんの心中は察する…私の事、知ってるから…


鞠子さんのクスリの事…知ってるのは社長と田中さんと私だけ…


鞠子さんの病室…

個室だ…そっとドアを開ける…


鞠子さん…酷い隈…生気の無い顔色…ガサガサの肌…

そっと鞠子さんの手を握る…

「水菜…」

「…はい…」

目を薄く開けて微笑みながら鞠子さんは私に言ってくれた。

「私の代わり…ちゃんと出来たんでしょうね…」

「いえ、無理でした」

鞠子さんは悪戯っぽく笑った。

「水菜、お水飲ませて…」

ベッドの脇にある水差しに手を伸ばした。


鞠子さんはその手を抑え、首を横に振った…


私の手は震えていた…自分のトートバッグから飲みかけのミネラルウォーターのペットボトルを出し、口に含んだ。


我慢できなかった。

鞠子さんと唇を重ねて口移しで水を飲ませた。

もう歯止めは効かなかった、鞠子さんの唇を吸い舌を絡ませた。

頭の中が真っ白になり、鞠子さんの唇と舌を夢中になって貪った。

鞠子さんも応えて私を抱き締めてくれる…


あまりの幸せに目眩がする…


鞠子さんの代役で私が恨まれるハズがない…


私は鞠子さんのものなのだから…











あくまでもフィクションです。

お見せ出来るものかは分かりませんが、最後まで執筆するのが目標です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです 水菜と鞠子さんの関係性が気になります! 次回も頑張ってください
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