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やさしい悪魔  作者: 黒月 祐
1/7

kind-hearted phantom

なんとなく思いつきで執筆しました。

物語として成立させるのが目標です。

私の職業は声優だ。


と言っても仕事はほとんど無く…

生活費はバイトを掛け持ちして生計を立てている。

田舎から出て来た22歳の陰キャ、コミュ障女子。

それは少し大袈裟だ。

特別明るい訳でもなく、特別社交的でもない。

自分では普通だと思ってる。

そんな私でも時給の高いアルバイトはとても重要。


ボイストレーニングの月謝だってバカにならない。

アパート代だって東京は異常に高い。

しかも私は声優だ。ビジュアルだって気にしなければならない。

美容院だって行かなきゃだし、服だって流行りの物を着なければならない。

(ほとんど安物だけど…)


なので、時給と効率の良いアルバイト。

ガードマン(ほぼ、道路工事の交通整理)

深夜のコンビニ。

時給はガードマンの方が全然良い。

だけど、これがキツイ。

夏は暑いし。

冬は寒いし。

雨の日なんて最悪…

交通整理なので、どうしても渋滞の原因になる。

イライラしたドライバーから怒られるのはしょっちゅうだ。


「おい!なんで向こうばっか流すんだよ!ざけんな!」


「信号何回変わってると思ってんだよ!ボケ!使えねーな!」


だいたいこんな感じの内容の文句を何度も言われる。

そんな時私にできるのはヘルメット深く被り、目元を隠して頭を下げるだけ…

文句を言われた数だけ頭を下げる…

時にはゴミを投げつけられる事もある。

走り去り際に空き缶を投げ捨てられたり、空のペットボトルを投げ捨てられたり。

コンビニの袋に入ったゴミを投げ捨てられたり。


(私が悪い訳では無いのに…)

これで時給が低かったら誰もやらないだろう…


それに比べればコンビニは全然楽だ。

外気や天候の影響を受けない。

たまに文句を言われても温めたお弁当がヌルい程度。

レジが混んでしまった時に多少嫌味を言われる事もあるけど

ガードマンで鍛えられてる私はその程度の攻撃では全くダメージを受けない。

何より嬉しいのは賞味期限切れのお弁当やおにぎりなどをタダで貰える。

他にもサンドイッチやパン、なんちゃってスウィーツなど…

食費が浮くのは私にとって生命線だ。


その日、バイト終わりに私がバックヤードで選んだお持ち帰りは…

幕の内弁当。お値段お高めのせいか、よく売れ残る。

おにぎり2個とサンドイッチ。具材とかナニサンドとかは正直どうでも良い。

明日の朝食までゲット出来た事に本当に感謝…

お茶は帰路の途中にある100円の自販機で買う。その方が安いし…



私がどうして声優を目指したか。

小さい頃から「声が良い」とか「声が良く通る」って言われてた。

小学生の頃は本を読むとお母さんはいつも満面の笑みで聴いてくれた。

私が本を読み出すと何をしていても聴きに来てくれた。

そして私が読み終えるまで優しく微笑みながら聴いてくれた。


「今日もとっても上手に読めたわね、お母さん楽しかったわ」

そう言ってお母さんはいつも私の朗読を褒めてくれた。


中学から高校に進むにつれ、私はアニメやゲームが好きになった。

魅力的なCVに元気を貰った。

(私も声優になれるかな…お母さんだってあんなに褒めてくれたし…)

憧れはどんどん強くなり、自分なりに覚悟を持って今の事務所の門を叩いたのだ。


うちの事務所は業界では中堅どころ、横の繋がりで仕事もボチボチある。

長編のシリーズアニメなんかの仕事もあるけど、まだまだ下っ端の私はお呼びで無い。

1話限りの端役だったり、動画CMのちょっとしたナレーションだったり…


それでも楽しいし充実してる。


うちの事務所のエースは(三崎 鞠子)さん。業界でもボチボチ名の知れた方だ。

演技力も声の通りも凄くて私の憧れの先輩だ。

ただ残念なのは私と声色が被っている。

正直、これは痛い…

でも忙しい鞠子さんが拾いきれない小さい仕事なんかはお値打ち品の私に回って来る事もあるので

キャラ被り声被りも悪い事ばかりじゃない。

もっともっと演技の幅を広げるように努力しなきゃ…


明日も午前中ボイストレーニング。午後から事務所で仕事とスケジュールのチェック。

早くお茶買って帰ろう…

100円自販機の置いてある場所は通りから少し入った所だ。

自宅までは少し遠回りになるし、人通りも少なくて暗いので正直あまり歩きたくない。

バイト終わりのこの時間帯はちょっと怖い…




(えっ…ちょっと待って…自販機の少し先に人が居たような…)

いや、気のせいじゃない!確かにいた!そしてスッと隠れた!


(これ!ダメなやつだ!)

すぐに逃げ去ろうと踵を返す。

しかし、そこには2人の大男が私を見下ろし道を塞いでいた。

「声を出すな!顔面ぶっ潰すぞ!」

男の大きな手が私の口を塞いだ!自販機の方からさらに2人の男が走って来た!

「おい!お前らそっち持て!その先の駐車場だ!」


(犯られる!)

両手、両足を掴まれて私は軽々と持ち上げられてしまった。

そのせいで男の手が私の口から離れた!(今だ!)


「助けてー!誰か助けてー!」


私はありったけの金切声を上げた。かなり遠くまで聞こえてるはずだ。

「この女!なんてでけぇ声だ!」「おい!タオルで口塞げ!」

男はタオルを重ね畳んで私の口を押さえた。これでは声は出せない。


「もうここでヤっちまおう!」「おい!もっとしっかり押さえてろ!」


両手両足をガッシリ押さえられた私はただもがいているだけだ。

パーカーのファスナーが降ろされ、デニムの腰に男の手がかかった。


(犯られたくない!犯られたくない!こんなヤツらに犯られたくない!)

恐ろしいというよりも納得のいかない怒りが込み上げてきた。


(こんなヤツらに絶対犯られたくない!絶対に嫌だ!)


デニムが膝の上まで降ろされた。


(絶対に嫌だ!絶対に嫌だ!)


男達は黒目が点になるほど興奮している。私は頭の中で叫んだ。




(今助けてくれるなら悪魔に魂を売ってもいい!)



(今なら悪魔とだって契約する!)



心からそう思った。



悪魔でもなんでもいいから助けて欲しかった。





(あれ…?…なんか…こめかみが…きな臭い…)




…頭の中に、声が聞こえた…ねっとりと、まとわりつくような声…





(…契約をしよう…)




それははっきりと聞こえた…ねっとりと…まとわりつくような口調。

男の手が私の下着を降ろそうとした瞬間、目の前が真っ赤になった。


(あれ?…地獄…?…………いや!これ!赤色灯!)


「警察だ!動くな!」「事件発生!事件発生!」

男達は意味不明な怒声を上げながら逃げ出した。



(助かった…)


ぼんやりとパトカーの赤色灯眺めた…

今は安心の赤い光だ…

私は身なりを整え、とぼとぼ100円自販機の方へ歩きながら幕の内弁当を拾い上げた。

投げ出してしまったので中身が偏ってしまっているが、勿体ないから温めて食べよう…


これから警察にも色々と訊かれるのかな…


自販機に100円入れてお茶の釦を押す。


ゴトンとお茶が出て来た。

自販機からお茶を取り出した時、背後から聞こえた…



「危なかったな」


…!…!…!…!


はっきりと聞こえた!声として聞こえた!耳に直接届いた!


ねっとりと…まとわりつくような…あの口調…


全身に鳥肌がゾワゾワと立つのがわかる…


恐怖で髪の毛の根が浮いてるのが自分でも分かる…


首筋から腰まで背中を氷が滑り落ちているような寒気を感じる…



(これ…人じゃない…)


(見ちゃだめだ…見ちゃだめだ…見ちゃだめだ…)


「契約は成立した。この場はとりあえず失礼するよ…」




「悪魔の加護を…」



全身の血の気が引いて震えが止まらない…



私は 片瀬 水菜。


悪魔との契約を交わしてしまった声優。















かなりスローペースでの投稿になると思います。

お付き合い頂けたら嬉しいです。

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