【短編続編】魔王の最期。~魔王宮殿からの脱出~
この物語はこちらの短編の続きです。
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魔王の最期。
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(──ゴゴゴゴゴゴゴ……)
足もとから地鳴りのように響く魔王大宮殿の崩壊音。
「魔王、セシル──か……。あいつにも、家族がいたんだな。それに、奥さんも」
目の前の大理石の柱から射し込む光の先に、雲海と日の光が眼下に遥か望み、空と海の水平線の彼方が見えた。
(夜明けか……)
魔王セシルが愛する人とともに昇って行った、橙色に染まる白い雲間と朝焼昇る青空の遥か向こう側が、眩しく光る。
(──ゴゴゴゴゴゴゴ……)
魔王セシルの魔力の加護を失った魔王大宮殿──。その崩壊の時間が、激しく振動する足もとに迫る。
「あ! イケね! アイツら助けてやんねーとだなっ!!」
感傷に浸ってる場合じゃなかった。
魔王セシルとの戦闘で、石っころに封印されちまったアイツらを助けなきゃだな!
「封印は解けてっから、アイツらどっかに、寝そべってるはずだよな……」
(──ゴゴゴゴゴゴゴ……)
揺れが止まらない。もうすぐ、魔王大宮殿は崩れ去るんだ。ヤベぇ……。
このままじゃ、アイツら、海のド真ん中に落ちちまう!
けれど、このだだっ広い『玉座の間』の何処にも見あたらない。
「おーいっ!! メリルっ!! トットぉー!! 何処にいるんだ!!」
魔女っ子メリルと、説教垂れ僧侶のトットが、居ない。
焦ったオイラは、そのまま後ろの方にある玉座の間の入り口まで突っ走って、審判の扉の向こう側へと、勢い良く飛び出た。
「(──バン!!) メリルっ!! トットっ!!」
まるで、玉座の間から審判の扉の外側へと追い出されたみたいにして──、ひび割れて行く魔王大宮殿の白い大理石の床に、二人が転がるようにして横たわっていた。
(──ゴゴゴゴゴゴゴ……)
「おいっ!! メリルっ!! トットっ!! 無事かよっ!!?」
「ん、んー……。る、ルース?」
「だ、誰です? メガネ、メガネ……。(カチャリ) ハッ!! やかまし屋ルースですか……」
魔女っ子メリルは、ついさっき魔王セシルの封印の魔力から解放されたみたいで、眠たそうな目を擦りながらも、身体を起こしてオイラを見つめた。
「メリル、ヨダレ垂れてんぞ?」
「ハッ!! うぎゃー!! まさかのルース王子っ!! 私のお顔をそんなに見ないで!! けど、ルース王子は無事なのね! ヨカッター!!」
それから、オイラは、説教垂れ僧侶のトットの顔を見た。
「相変わらずメガネ似合わねーな、トット?」
「うるさいです!! そ、それより、やかまし屋ルース! ま、魔王はっ!?」
(──ゴゴゴゴゴゴゴ……)
二人とも元気そうで良かった。
けれども、オイラたち三人に残された時間は少ない。
たぶん、もう、すぐにでも魔王宮殿が崩壊する。
「勝ったさ……。けど、オイラたちも逃げねぇと、ヤベぇぞっ!!」
魔女っ子メリルと、説教垂れ僧侶のトットが顔を見合わせる。オイラも、二人の顔と見合わせた。
「魔力……──」
「──ゼロ……」
「だよな?」
魔女っ子メリルの言葉の後に、説教垂れ僧侶のトットがうな垂れ、オイラが二人の顔を見つめたまま固まった。
(──ゴゴゴゴゴゴゴ……)
「「「 ひ、ひぇぇぇぇぇぇっ!! 」」」
誰も居なくなった魔王宮殿に、オイラたち三人の声が木霊していた。
今にも、この魔王宮殿の白い大理石の床が抜け落ちそうになっているというのに。