73話。超竜機神アルティメット・ドラグーン
『えっ、4体合体……?』
ティアとシルヴィアが、戸惑いの声を上げた。
『はい。海竜機、風竜機、聖竜機と機神ドラグーンが、同時に【竜融合】するのですわ。それによって究極の機神が誕生するのです!』
レナ王女が補足してくれる。
「4体合体は、俺たち全員の心をひとつにする必要がある。みんな俺に力を貸してくれ! コイツに勝つにはそれしかない!」
『わかった。もちろんだよ、お兄ちゃん!』
『はい、ロイ様のために!』
『私もがんばるわ!』
今、この瞬間だけは、俺たちの心がひとつになった。レナ王女もティアを認めて受け入れてくれた。
4機の魔力が共鳴して、かつてない程にたかぶる。
『魔導システムが算出した4体合体の成功率99%! き、奇跡的な数値です。行けます!』
作戦司令室の少女オペレーターが、俺たちを後押ししてくれた。
「行くぞ、声を合わせてくれ!」
『『了解!』』
『『4体合体、超竜機神アルティメット・ドラグーン!』』
俺たち全員の魂の叫び声が、重なった。
風竜機シルフィードが、パーツに分解されて海竜機神にドッキングする。
その瞬間、機体のボディが白銀に輝いた。融合した俺たち4人の魔力が紫電となって、機体表面を駆け巡る。
「うぉおおおおおーッ! 完成! 超竜機神アルティメット・ドラグーン!」
まさに神をも上回る絶大なパワー。だが、俺たちにかかる負荷も半端ではない。
レナ王女はすでに限界だし、4体合体を維持できるのは、10秒も満たない時間だろう。
「ちぃいいいいいッ!」
アスモデウスが魔剣【死を招く者】(デスブリンガー)を振りかざす。
「ドラグーン、【空間歪曲コート】の出力を最大まで上げてくれ! 強引に決めてやる、ルーチェ【因果逆転斬】だ!」
「はい、天使の力を解放します」
ルーチェの身体が黄金に輝く。天の理に干渉する天使の力を発動させたのだ。
ルーチェにも無理をさせすぎている。これが、本当に最後の一撃だ。
「くたばれぇえええ!【煉獄落とし】!」
魔剣【死を招く者】(デスブリンガー)のまとう瘴気が、爆発的に膨れ上がった。
ランディもまだ、奥の手を隠し持っていたらしい。
【空間歪曲コート】によって歪められた空間を斬り裂いて、魔剣が迫る。
「ハハハハハッ! これで終わりだヘルメス!」
ぐっ。超竜機神アルティメット・ドラグーンの防御力を完全に上回っているぞ。
俺はとっさに機体を捻らせて直撃を避けるも、【聖竜剣バハムート】を持つ右腕が斬られて消し飛んだ。
『あぁあああああッ! ロイ!?』
ティアが悲痛な声を上げる。
「……マスターは、私がお守りします【時間回帰】!」
「なにッ!? まだ天使の力が使えただと!?」
ランディが驚きの声を上げる。
ルーチェの発動した【時間回帰】により、アルティメット・ドラグーンの右腕が瞬時に復元した。
【因果逆転斬】に続いて、【時間回帰】を限界まで使ってしまったら、ルーチェの身体は……
『ありがとうルーチェ! ロイ、決めましょう!』
ティアが膨大な聖なる魔力を【聖竜剣バハムート】に送り込んでくれる。
この一撃は、全員で掴んだ最後のチャンスだ。
ルーチェのためにも絶対に決めてやる。
『「はぁあああああああーッ! 【因果逆転斬】!」』
俺たち全員の声が重なった。
「なっ、バカなぁああああッ!?」
必中必滅の一撃が、機械仕掛けの悪魔アスモデウスを真っ二つに斬り裂いた。