表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/75

68話。幼馴染、聖竜機バハムートの真の主となる

【聖女ティア視点】


「きゃああああッ!?」


 シルヴィアの身体が浮いて、空の彼方に飛んで行く。

 ロイのくれた空飛ぶ腕輪の使い方は、ここ数日でマスターしていた。シルヴィアは鷹も追いつけない速度で、しばらく飛び続けるわ。


「助かった。聖女よ。我が主を逃してくれたことを感謝する」

「フンッ! こんな裏切り者の思い通りになんてさせないわ!」


 風竜機が厳かな声で感謝を述べる。

 私は腕組みをして、精一杯強がった。

 ランディが私たちを人質にするつもりなら、最悪殺されることは無いハズよ……!


「ランディ、シルヴィアさえ無事ならロイは、きっと思いっきり戦えるわ。聖竜機バハムートと【竜融合ドラゴニック・フュージョン】した機神ドラグーンはすごいんだからね。降伏するなら今のうちよ!」


 私は指をランディに突きつける。内心は怖くて足が震えていた。

 できれば、コイツには改心してもらいたいところだけど……


「ハッ! 浅知恵だな。時間稼ぎにもならねぇよ。まず風竜機をぶち壊して、お前の息の根を止める。それから下級悪魔どもを使ってシルヴィアを捕まえても十分、余裕がある。俺の計画に、なんの支障もねぇ」

「えっ……?」

「まさか、自分は殺されないとでも思ったか? おめでたいなティア。お前の言う通り、シルヴィアさえ確保しておけば、ロイに対する人質は十分だ。お前らはダメ押しのオマケだ。めんどくせぇ抵抗をするようなら、殺って終わりにするだけだ」

「うっ、うううう……ッ!」


 あまりにも強烈な殺意を浴びせられて、私はたじろいだ。


「あんま俺を舐めるなと、最初に教育しておいたハズだぜ。分をわきまえろよ、Dランク」


 ランディは嘲笑った。

 すごく怖い。すごく怖いけど、もう賽は投げられた。


「そ、そうよ、私はバカで実力もないわ! でも、それでも、あの人の……ロイの幼馴染だって、胸を張って言いたいのよ!」

「なにっ!?」


 私は【ドラウプニルの指輪】をポケットから取り出して嵌めた。

 これは村で再会したロイが、コッソリ私に渡してくれたものだった。使う寸前まで、隠しておくように言われていた。

 もしかするとこういった事態を、ロイはある程度、予測していのかも知れないわ。


「輝け【聖拳オーラ・ナックル】!」


 風竜機の拳を、聖なる輝きがコーティングする。これは打撃武器に聖属性を付与するバフ魔法よ。


「聖女よ。ありがたい。これでベヒーモスに対抗できる」


 風竜機が拳を構える。

 指輪の力で5倍にまで効果を高めた【聖拳オーラ・ナックル】なら、ベヒーモスにもダメージを与えられるようになるハズだわ。


「ロイは私をずっと助けてくれた。こっ、こここ、今度は私が命がけで応える番よ!」


 どうせ殺されるなら、全力で戦ってやるわ。

 時間さえ稼げば、きっとロイが戻ってきて、お父さんやみんなを救ってくれるハズ……ッ!


 突然出現した巨大モンスター【 ベヒーモス】に、村は大混乱に陥っていた。


「ティア、逃げろ! この村は放棄する!」


 お父さんの大声が聞こえる。みんなは、逃げることにしたみたいだった。

 だったら、私がコイツらを足止めをしなくちゃね。


「ハッ! しょせん、ロイの力を借りなければ何もできねぇ【お漏らし聖女】が! イキがるんじゃねぇ」


 ランディが地面を蹴って、私に猛然と突っ込んできた。目にも止まらないスピード。


「させぬ!」


 風竜機の輝く拳が、ランディを打ち据えた。ランディは腕をクロスしてガードしながらも、顔を痛みに歪める。


「やった。効いているわよ!」

「我が主、シルヴィアの命令だ。聖女ティアを全力で守るようにとな」

「えっ!? ホント!?」


 これで、ほんの少しだけど希望が出た。なにより、シルヴィアが私をちょっとでも認めてくれたことが嬉しかった。


「ちっ、スピードだけはありやがるな!」


 ランディは舌打ちと同時に、風竜機を殴り返す。両者の拳が激しくぶつかり合い、空気が震えた。

 生身でオリハルコンの巨大ドラゴンと殴り合うなんて、ランディは完全に人間を超越しているわ。


「ベヒーモス、ティアを踏み潰ぜ! ソイツを殺れば、風竜機にかけられた聖魔法も消える!」

「はぅ!?」


 ベヒーモスが私に突進してきた。

 こんな化け物に対抗できるような魔法は、持っていないわ。


「聖女よ!」


 風竜機が風の刃を撃ち込んで、ベヒーモスを止めようとする。けれども、その巨体は小揺るぎもしない。

 思わず死を意識したその時……!

 目前で爆発的な光が溢れて、ベヒーモスの巨体が弾かれた。


「えっ? ル、ルーチェ……?」


 輝きを発するのは、一糸まとわぬ姿の大聖女ルーチェだった。その姿は透けており、空中に浮かんでいた。

 ど、どうして彼女が、ここに? 確か、S級ダンジョン最下層は、空間転移が封じられているって、ランディが……


「私はルーチェであって、ルーチェではありません。ロイの母、セリカです」

「はっ?」


 言っている意味がまったくわからなかった。

 ロイのお母さんは亡くなったハズだし、彼女の外見は10代の少女だった。


「私は天に召された後、天使に昇格しました。そして、あの子らを守るために、天の理に背いて、再び降りてきたのです。ルーチェの中に宿って」


 ルーチェの背には、輝く翼が生えていた。

 清らかで荘厳な雰囲気。ま、まさか、本当に天使なの?


「ティア。私はあなたに【聖竜機バハムート】の主たる資格有りと認めました。どうか聖竜機で戦ってください」


 私はビックリ仰天した。


「えっ……? でも、聖竜機の主はルーチェなんじゃ?」

「正確にはルーチェは聖竜機の頭脳であり、主と聖竜機を繋ぐインターフェイスです。聖竜機の真の力を引き出すためには、主たる者を必要とするのです」


 突然のことに、私の理解が追いつかない。

 うれしい気持ちもあるけど、私の実力はDランク並よ。とてもレナ王女やシルヴィアみたいに、竜機シリーズの力を引き出せるとは思えないわ。

 度重なる挫折で、私は自分の才能の限界を思い知らされていた。


「大丈夫です。今のあなたになら、聖竜機を使いこなせます。自分の弱さを知りながらも、愛する人のために戦おうと決意したあなたになら。さあ。呼んでください……」


 それだけ告げると、ルーチェは幻のように空中に溶け消えた。


「なにッ!? 天使だと!?」


 それが白昼夢ではなかったことは、ランディが目を剝いていることからも明らかよ。

 ……な、なら、私のやるべきことはひとつよね。


「お願い来て! 聖竜機バハムート!」


 ズドォオオオオオーン!


 巨躯が空間転移してきた。

 威風堂々たる聖銀ミスリル製の白竜。聖なる力を宿した聖竜機バハムートが、私の呼びかけに応えて、出現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんでもかんでもざまぁやれなんて言わないけど、これの場合この非ざまぁ展開が面白くなるための努力も下地作りがまったく成されてない。出る度にイライラするゴミを持ち上げて作者一人が盛り上がっ…
2022/12/02 17:21 退会済み
管理
[一言] えー・・・結局元サヤに戻るような展開になるのは釈然としないなあ、おそらくこれを読んでいる大半の人って幼馴染みざまぁと期待していると思うのですが
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ