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65話。帝国騎士を倒して、ボス部屋まで案内させる

「……地の底から、すさまじい瘴気が噴出されています」


 悪魔のダンジョンに踏み入ると、ルーチェが顔をしかめた。


「やはり、地獄と物理的に繋がっているようですわね。この中に長くいると、体調を崩しそうですわ」


 レナ王女も顔を歪める。

 身体が重くなったように感じるのは、気のせいじゃないみたいだ。生命を蝕む瘴気が、ダンジョン内に充満していた。


「さっそく、おいでなさったか……!」


 先を急ごうすると、レッサーデーモンの群れが行く手を塞いだ。かぎ爪を振りかざして、殺到してくる。


「部分召喚、【ホーリー・ファング】!」


 俺は機神ドラグーンの右腕を出現させて、下級悪魔どもを薙ぎ払った。


「すごい! 悪魔たちが一掃ですね!」

「このまま体力を温存しつつ、最下層を目指そう。作戦司令室、ナビゲーションを頼む」

『はい! 使い魔たちを放って、索敵をいたします』


 作戦司令室の少女オペレーターから返答があった。

 彼女らは使い魔を、ダンジョン内に散開させる。

 事前にダンジョンの道順については、最下層を除いて情報収集が済んでいた。おかげで、敵にあまり遭遇することなく、スイスイ進める。


『ヘルメス様、そのまま、真っ直ぐ進んでください。突き当りを右です!』

「ありがとう、助かるよ」

「ドラニクルのメンバーは、優秀ですね。さすがはマスターの手足です」


 ルーチェが感心したように呟いた。


「あらゆる分野のスペシャリストを揃えていますからね。普段は、みなわたくしのメイドとして働いていますが、有事の際の訓練は欠かしておりません」


 ドラニクルの総司令であるレナ王女は得意げだ。


『きゃあああ! ヘルメス様とレナ総司令に褒められちゃった! ますますガンバリますよ! 行け、私の使い魔たち!』

『私だって!』


 競うように励む少女オペレーターたちの案内のおかげで、迷わずガンガン下層に降りて行ける。

 途中、宝箱などもあったが、攻略優先で無視した。一刻も早くボスモンスターを倒して、このダンジョンを消滅させなくちゃならない。


 すると開けた場所に出た。

 そこには帝国騎士の一団が待ち構えていた。


「ほぅっ、貴様が、ヘルメスか? ひ弱な錬金術ごときが、帝国の最強の盾と謳われたこの俺、ガイン様を突破できるか!?」

 

 いずれも屈強な男たちだ。その先頭に立つのは、並外れた巨漢だった。


「教皇グリゼルダの宣言は聞いていないのか? 黙って通してもらえると、ありがたいんだが……」

「私は大聖女として、このダンジョンを攻略しに来ました。道をあけてください」


 ルーチェが厳しい声をかけた。

 騎士たちは悪魔から襲われた形跡がない。やはり、悪魔と彼らはグルのようだ。


「ふん! 教皇に認められた、救世主と大聖女だと? しょせんは金で買った地位であろう? 貴様らは、ここで悪魔に殺されたという筋書きよ!」


 巨漢は俺に向かって、槍の切っ先を突き付けた。


「帝国の盾ですか? それでは史上最強防具【ディストーション・アーマー】をまとう、このわたくしがお相手いたします」


 レナ王女が前に歩み出ると、偽装用の鎧が絢爛豪華な【ディストーション・アーマー】に換装された。

 空間転移の応用で、本来の鎧を呼び寄せたのだ。


「悪魔と契約を交わして、我が国を攻撃するなど、許しがたいです。恥を知りなさい!」

「ほうっ! これは美しい。Sランク冒険者と名高いレナ王女であるな?」


 好色そうにガインは舌なめずりした。


「恥じを知れだと? ガハハハッ! お前の方こそ自慢の鎧を剥ぎ取って、恥をかかせてやるわ!」

 

 ガインは神速の突きを連続して放つ。

 レナ王女はピクリとも動かなかった。防御の必要がないからだ。


「なにぃいいいい!?」


 ガインの槍は、レナ王女の身体に触れる前に軌道を逸らされる。【ディストーション・アーマー】の空間歪曲効果だ。

 ガインはムキになって槍を撃ち込むが、レナ王女に触れることもできなかった。


「空間を歪ませて、あらゆる攻撃を逸らす。これが【ディストーション・アーマー】の力ですわ。ヘルメス様がわたくしに贈ってくださった、愛の結晶。突破することなど、決して叶いません」


 レナ王女は右手をかざして、氷の弾丸を放った。

 ガインは慌てて回避しようとするが、ヒットした右足が氷漬けになる。


「あぎゃああああ!?」

「下手に動くと、足が砕けてしまいますわよ? 降参してください」


 にっこり微笑んで、レナ王女は降伏勧告をした。

 それを見て、他の騎士たちが青ざめる。


「ガイン隊長の魔法防御を、いとも簡単に突破しただと!? う、噂以上の氷魔法の使い手だ」

「ヘルメス様はわたくしなど、足元にも及ばないほど強いです。もしかすると、機神ドラグーンは狭いダンジョン内では使えないと思ってらっしゃるのかも知れませんが……」


 レナ王女の話の途中で、レッサーデーモンどもが俺とルーチェに襲いかかってきた。俺はそれを部分召喚した機神ドラグーンの拳で殴り飛ばす。


「なに!? あ、あれだけの悪魔を、い、一撃だと……?」


 ガインが呆けたように目を瞬いた。


「こんな風に、問題なく機神も使える」

「もし降伏してくださるなら、最下層のボス部屋まで案内していただけませんか? ガインさん。それとも全身を氷漬けにされたいですか?」

「はっ、はぃいいいい! ボス部屋までご案内させていただきます!」


 ガインは怯えきった声で承諾した。

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