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64話。悪魔のダンジョン攻略開始。帝国騎士団を手玉に取る

次の日──


「ロイってば、どこにもいないわ! せっかくヘルメス様に紹介してあげようと思ったのに、どこに行ったのよ!?」


 村長宅でレナ王女と作戦会議をしていると、ティアが憤然とやってきた。


「ロイさんには、セテスの街に行っていただきましたわ。王国軍はセテスの街に、防衛線を敷いていますので」


 レナ王女が説明した。


「帝国との国境沿いに点在する村落には、王国から避難命令が出ているんだ。ティアもセテスの街に避難してもらえないか?」

「ヘルメス様!? で、でも、ここは私の故郷ですし、最後まで残って戦うつもりです!」


 ティアの実力はDランク並みなので、できれば避難して欲しいところだが……

 聖女は悪魔の天敵だ。本人がそこまでやる気なら、任せても良いだろ。


「そうか。じゃあティアには、シルヴィアと協力して、村の防衛に当たってもらおう。ランディも協力してくれるし……ラクス村で悪魔の侵攻を抑えることができれば、それが一番だからな」


 ティアは前回、この村の防衛に成功している。シルヴィアと風竜機も加われば、戦力として十分なハズだ。


「はい! ヘルメス様!」


 ティアは素直に頷いた。

 ヘルメスの前では、異常なまでにしおらしいんだよな……


「お兄ちゃんなら、悪魔のダンジョンをチャチャっと攻略しちゃうだろうから、安心だよね」


 シルヴィアは楽観的に笑って、お茶をすすっていた。

 彼女のように考えて、村から避難していない者も多い。

 俺は念のため、釘を刺しておく。


「S級ダンジョンにもぐるのは初めてだから、油断はできない。もしかすると、時間がかかるかも知れないから、その間、ここをしっかり守ってくれよ、シルヴィア」

「うん、任せてよお兄ちゃん! お兄ちゃんの造った風竜機シルフィードは無敵なんだから!」


 この前、悪魔の襲撃を退けて、シルヴィアは自信をつけたらしい。

 相手が下級悪魔なら、風属性攻撃に特化した風竜機でも、なんとかなるだろう。


「現在のところ、上位悪魔の存在は確認されていません。この村に残る戦力だけでも十分、持ちこたえられると判断します」


 ルーチェが淡々と告げる。


「それでも不測の事態は起こるものだからな。ティアもシルヴィアも、油断しないでくれよ」

 

 【薔薇十字団ローゼンクロイツ】が、このまま手をこまねいているとは思えない。

 奴らの介入を予測して、俺も打てるだけの手は打っておいた。


「うん!」

「はい、ヘルメス様の留守は、私がしっかり守ります!」


 シルヴィアとティアが請け負った。

 ダンジョン攻略組は、俺とレナ王女とルーチェだ。


 ルーチェはエーリュシオン教国での戦いから、3日近く昏睡状態になっていた。少し異常な気もしたが……

 眠りから醒めた今では、体力気力ともに充実して、問題は無さそうに見えた。


「ヘルメス様、ダンジョン付近に展開している帝国騎士団の鎧兜が入手できました。彼らの人員、配置、装備なども確認済みです」


 その時、ドラグニルの諜報部隊の少女たちが、部屋に入ってきた。

 帝国は少女教皇グリゼルダの宣言を受けても、騎士団を撤退させなかった。

 どうやら6日後の期限ギリギリまで回答を保留するようだが、俺たちはグズグズしてはいられない。


「ありがとう。さすがだな」

「はい、敬愛するヘルメス様のお褒めに預かり光栄です!」


 少女らは、うやうやしくお辞儀する。


「これで、準備は整った。レナ、ルーチェ、行くぞ」

「「はい!」」


 すみやかにS級ダンジョンのボスを倒して、ダンジョンを消滅させる。それができれば、万事解決だ。



※※※



「漆黒のドラゴン!? まさか、あれが報告にあった機神ドラグーンか!?」


 機神ドラグーンに乗って国境を超えると、帝国騎士団は大混乱に陥った。

 俺が強行突破で来るとは、彼らは予想していなかったようだ。


「皇帝陛下は、何人たりともダンジョンに近づけさせるなとのご命令だ! 全軍、ヤツを攻撃しろ!」

「し、しかし、団長! あのような化け物相手にどうしろと!?」

「それにヘルメスのダンジョン攻略を妨害すれば、エーリュシオン教会から神敵扱いに……っ! い、嫌だ! 俺は異端審問は受けたくないぃいい!」

「バ、バカ者! 隊列を乱すな! 敵前逃亡は死罪だぞ!」


 教皇グリゼルダの宣言のおかげで、帝国騎士団の戦意は低かった。

 熱心な信徒もいるのだろう。何人かが逃げ出そうとしていた。

 

「よし狙い通りだ。ドラグーン、奴らを引き付けておいてくれ」

『了解した』

 

 俺は帝国騎士団に宣戦布告する。


「帝国の騎士たちよ! 俺は教皇グリゼルダの依頼で、悪魔のダンジョンを攻略しに来た錬金術ヘルメスだ! 邪魔をするなら蹴散らすぞ!」


 アーディルハイド王国の侵略だという言質を取られないように、グリゼルダの名前を使う。


「な、なんだとぉおおお! おのれヘルメス、我らを侮るなよ!」


 挑発に逆上した騎士団長が突撃を命令した。

 騎馬隊が山の斜面を駆けてくる。

 よし。いいぞ。

 俺たちは、機神ドラグーンの外──やや離れた森の中に空間転移で出た。


「ああっ、もうちょっと、ロイ様と密着していたかったです」


 帝国騎士の格好をしたレナ王女が、残念そうに告げる。

 狭いコックピットで、俺はレナ王女にずっと抱き着かれていた。性欲を抑えるのに必死で、脂汗が出っ放しだった。

 ホントに勘弁して欲しい。


「マスター、敵は狙い通り、機神ドラグーンを追って行ったようです」


 索敵魔法を使ったルーチェが報告する。

 ドラグーンは騎士たちに追われる形で、後退していった。


「よし、陽動作戦は成功だな」


 目立つ機神ドラグーンで登場して、敵の注意を引き付ける。

 その隙に、敵国騎士に変装した俺たちは、ダンジョンに入る作戦だった。


 余計な戦闘や衝突は、なるべく避けたかった。機神ドラグーンにも、帝国騎士を殺傷しないように命じてある。


「さすがはロイ様です! 帝国騎士団も、ロイ様の手にかかれば、かたなしですね!」

「いや、これからが本番だ。気を引き締めて行こう」


 俺たちは速やかにダンジョンを目指した。

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