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60話。大結界、【聖域(サンクチュアリ)】発動

 スドォオオオオン!


 大質量の空間転移に、弾かれた大気が震える。


「あれは、まさか……【聖竜機バハムート】! ぐぅ、やっぱりルーチェのための機体だったのね!?」


 大聖堂にいるティアが、何やら悔しそうに聖竜機を見上げた。


「で、でも私じゃ、ヘルメス様のお役に立てない………ッ! ルーチェ、応援してあげるわ! がんばってぇええ!」

「うぉおおおお! あの機体から、すさまじい力を感じます。ヘルメス様、勝ってくだされぇええ!」

「ホンモノの天使であるルーチェ様が、堕天使ごとに負けるハズがなぃいいい! がんばれルーチェ様!」


 ジオス枢機卿や聖騎士たちも、俺たちを応援してくれた。


「はい……!」


 ルーチェがみんなの声援に、若干はにかんだように応える。

 聖竜機とルーチェのシンクロに、問題は無さそうだ。聖竜機には人工知能は搭載しておらず、ルーチェがその役割を果たすように設計していた。


「未知の機体を確認。【竜融合ドラゴニック・フュージョン】のベースとなる機神ドラグーンの破壊を優先します」


 堕天使アザゼルが機神ドラグーンに向かって、光弾を連射した。


「マスターは、私がお守りします【聖反射壁リフレクション・ウォール】展開」


 聖竜機が突っ込んできて機神ドラグーンの盾となった。

 聖なる輝きが、聖竜機を包んでいる。俺に降り注いだ光弾は、聖竜機に反射されて逆にアザゼルに襲いかかった。


「これは魔法反射か!? 最上級クラスの聖魔法なのじゃ!」


 少女教皇グリゼルダが、感嘆に身を震わせた。


「……だけどアザゼルにダメージはないか」

「はい。瞬間移動で、すべて回避されました。あの敵に攻撃をヒットさせるのは、至難の業です」


 俺たちを見下ろす堕天使アザゼルは、未だに絶対的な優位を保っている。


「戦術目標、切り替え。カタリナ大聖堂の破壊を優先します」

「なにぃいい!?」


 堕天使アザゼルは、大聖堂に向かって手をかざした。

 俺の動揺を誘うには、ティアたちのいる大聖堂を攻撃するのが効果的と判断したのだろう。


「ひゃああああっ! ちょ、ちょっとぉおお!?」


 ティアがめちゃくちゃ慌てて、ひっくり返る。

 ジオス枢機卿たちも、恐怖に顔を引きつらせた。


「くそっ! 【ドラゴン・ブレス】!」


 アザゼルを妨害するために、俺は灼熱のブレスを発射する。アザゼルの身体がブレて、別の場所に現れた。

 それを追って、空間跳躍パンチを仕掛けるが、ことごとく回避されてしまう。攻撃がまったく当たらない。

 アザゼルの超然とした姿は、まさに天罰を執行する天使のようだ。


「案ずるな! 大聖堂には、守りの要となる大結界があるのじゃ、これを起動させる! わららも共に戦うぞヘルメス!」


 少女教皇グリゼルダが、声を張り上げた。


「教皇様……っ! ありがたいです」

「わらわはエーリュシオン教国の、なにより人類の守護者たる教会のトップ。おぬしたちだけには、良い格好はさせられぬのじゃ! ヘルメスよ、わらわの声を皆に届けてくれ!」


 教皇グリゼルダの目に、決然たる意志が宿った。なにか吹っ切れたようだ。


「わかりました。外部スピーカーをオンにします」


 グリゼルダは大聖堂内にいる信徒たちに呼びかける。


「聞け、敬虔なる信徒たちよ! わらわは教皇グリゼルダ。今、カタリナ大聖堂を不埒なる悪魔の手先が攻撃しておる! 天に手をかざし、わらわに力を貸すのじゃ! 大結界を起動させ、みなを守り抜く!」

「はっ! 教皇聖下、わかりました!」

「わ、わわわわたしも協力するわよ、こうすれば良いの!?」


 ティアやジオス枢機卿、聖騎士らが天に手をかざした。彼らの身体が光に包まれる。


「これは……どうやら、千人単位の大人数による大規模魔法のようです」

「そうじゃルーチェよ! 教皇とはこの大結界魔法を制御、発動するための術者でもあるのじゃ。大聖堂に収容したすべての人々を守り抜くためのな!」


 大聖堂に光が満ちる。

 それはグリゼルダを信じるすべての人々から放たれる光が合わさったものだ。


「はぁあああああ! 【聖域サンクチュアリ】 発動ぉおおおッ!」


 グリゼルダが叫ぶと同時に、堕天使アザゼルから破滅の光が大聖堂に降り注ぐ。

 だが、大聖堂を覆った神聖な輝きが、それらをかき消した。


「大聖堂への被害、ありません」

「これがエーリュシオン教会の秘術ですか? さすがは教皇様」


 究極の防御魔法を目の当たりにして、俺も驚嘆した。


「うぉおおおおおおお! 教皇グリゼルダ様、バンザイ!」


 大聖堂からも、爆発するかのような喜びの声が上がる。


「いや、これはわらわの力ではなく、互いを守りたいと願う人々の想いの結集なのじゃ」


 グリゼルダが頭を振った。


「なにより、おぬしのおかげじゃ、ヘルメスよ。絶望に抗うおぬしが、みなに立ち向かう勇気をくれた。わらわひとりであったら、あの堕天使に圧倒されて、立ち尽くしていたじゃろう。感謝するぞ」


 グリゼルダはなにやら、ぽっと頬を染めて頭を下げた。

 とても心根の良い娘だ。グリゼルダが教皇でいてくれるなら、きっとエーリュシオン教国の民も、世界中の信徒たちも幸せだろう。

 そんな彼女だからこそ、俺は守り抜きたい。


「マスター、私の心が何か熱くなっています。今こそ、【竜融合ドラゴニック・フュージョン】を」


 ルーチェが熱を込めて提案した。

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