表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/75

46話。アークデーモンを人造聖剣で倒す

 灼熱のブレスを浴びたというのに、アークデーモンは体表が焼け焦げただけだった。

 ヤツは赤い瞳で、俺を睨みつける。


「敵、ダメージ軽微です」

「【ドラゴン・ブレス】でも、あまり効果がないのか……ッ!?」


 上位悪魔との戦闘は初めてだったが、これほどの魔法防御力を誇っているとはな。

 興味深い対象だ。


「なんだ? 機械じかけのドラゴンだと? またぞろ人間は妙なモノを造ったようだが、この我の敵ではないわ!」


 ヤツは勝利を確信して、ゲラゲラと嘲笑った。


「悪魔の肉体は、アストラルボディ(霊体)が顕在化したものです。物理的、魔法的攻撃の90%を無効化すると言われています。通常攻撃では太刀打ちできません」

「で、でもお兄ちゃんの造った機神ドラグーンなら勝てるよね!?」


 冷静なルーチェの指摘に、シルヴィアが不安の声を上げる。

 相変わらず、ふたりの少女から密着されて居心地が悪いが、四の五の言っている場合ではない。


「もちろんだ。【ホーリー・ファング】展開!」

『了解』


 機神ドラグーンの左手より、白く輝く爪が伸びる。これは聖銀ミスリルを鍛えて造った対悪魔用の兵器【人造聖剣】だ。


「す、すごいわぁ! あの爪から、膨大な聖なる力を感じるわ!」


 地上でティアが、目を見張っている。

 聖女だけあって、この【人造聖剣】の力を感じ取れるらしい。

 創造神【父なる神】が勇者に下賜した聖剣を分析して、錬金術で再現したのがこの爪だった。


「当然です。マスターの造った機神ドラグーンは、人間を害するあらゆる魔物を滅ぼすための兵器。悪魔、アンデッド、ドラゴン、精霊。いかなる存在をも討滅するための武装を有しています」


 ルーチェが心なしか誇らしげに微笑する。


「紛い物の聖剣を造り出したということか。だが、しょせんは紛い物に過ぎん。一撃で粉砕してくれよう!」


 アークデーモンが矢のように飛翔して、機神に魔槍を突き出したきた。

 迎え撃った【ホーリー・ファング】が魔槍を破壊して、アークデーモンの胸をえぐる。


「グォオオオオオ!? なんだ、この力は? 紛い物の聖剣ごときが、なぜこれ程の力をぉおおッ!?」


 それはルーチェが機神ドラグーンに乗っているからだ。

 聖剣とは、【父なる神】の力を地上に下ろすための依代だ。本来なら、勇者のような神に選ばれた特別な人間しか、聖剣の真なる力を解放することはできないのだが……ルーチェは特別だった。

 ルーチェは【父なる神】の末端である天使なのだ。


「こ、この感覚は、まさか……天使! 天使がそこにいるのか!?」

「天使だって!?」


 アークデーモンの叫びに、村人たちも驚愕の声を上げる。

 まずいな。ルーチェの正体については秘匿しておきたい。


 俺は機神ドラグーンを突進させ、アークデーモンを【ホーリー・ファング】で貫いた。


「バカなぁあああああ! まさか天使を使役するだと!? それは天にまします父にしか許されぬことだぞ!」


 聖なる力に身体を焼かれて、ヤツは断末魔と共に滅び去る。


「不遜! 不遜が過ぎるぞ、錬金術師ぃいいい!」

「不遜? そうかな……」


 聖剣も天使の力も錬金術で分析、再現できる。

 なら、それを使うことをためらう必要などない。


 祈ったところで神は助けてくれないことを俺は8年前に思い知った。

 神の奇跡にすがるのではなく、神の奇跡を再現して、大切な人を守り抜くんだ。


「やったぁああああ! ヘルメス様が、ヘルメス様が勝ったわ! ありがとうヘルメス様!」


 ティアが拍手喝采する。


「おおおおぉっ! これが噂の機神ドラグーン! 勇者無き時代の新たな英雄じゃあ!」


 村長も村人たちも、全員が大歓声を上げて俺をたたえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ