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心が読める醜男と美醜逆転の平民

作者: 乾燥したゆで卵

俺は自他ともに認める醜男だ 

産まれてから今まで人にやさしくされたことなんてない

おまけに人の心が読めるといういらない能力持ちだ

口に出されずとも、周囲が俺のことを醜いと蔑むのを嫌になるほど聞いてきた

昔は制御ができず、聞きたくないことを嫌でも聞かされて苦労してきたが、制御できた今になっては、仮面をかぶりながら、この能力を生かして重職につけれている


人が羨む富を持っても俺の空っぽな心は満たされないままだ

一生結婚せずに、この無駄に豪華な屋敷の中でひっそりと孤独に死ぬのだろうと思っていた


今までは


それは婚約者候補との顔合わせの日だった


俺が仕事で活躍しだすと、貴族のコマに使えると思った俺の実家が、身分と年が釣り合う令嬢に勝手に婚約の打診をしていた


顔はアレでも財力があるので、悪い話ではないだろうと傲慢にも思ったのか

なんとも度し難い


なので顔合わせの為、一貴族の礼儀として令嬢の家に向かった

どうせ断られると思うが、短時間でも顔を出して(仮面をつけたままだが)いくことにした


令嬢は美しい人だった


醜男の俺を目の前にしても、震える手を必死に抑え、美しい礼儀をしてきた

心を読んでみたが、令嬢も俺みたいな醜男と結婚するのに抵抗があるようだ

それは当然のことだ、お互い不幸になるのをわかってする結婚はしたくない


軽い挨拶と話をすませ、じゃあ婚約はなし、という結果になり、帰ることにした


帰る間際に、どうせならこの醜い顔面を見た方がいいと提案された

婚約話を受け取った令嬢の父親に、説得力をもたせるためだ


令嬢が覚悟した顔で、見てくる


俺はゆっくりと仮面を外し、その醜い顔面を晒してみた


令嬢は短い悲鳴をあげながら後ずさりし、顔を悪くする


思った通りの反応で仮面を戻そうとしたその時


『まあ、とっても素敵な人だわ!まるで美の女神から愛されたような顔立ちね!』


そんな声が聞こえてきた


俺はハッ!となって周囲を見渡す

どこから声がしたのか

いやこれは心の声だ、誰かが実際に口を出したわけじゃない


『少し遠目だけどわかるわ、キリッとした目元にスッと通った鼻筋、健康的な色をしたシミ一つない綺麗な肌、キュッと引き締まった唇、顎のラインがシャープで素敵だわ〜!身分が釣り合うならお嬢様でなく、私がお見合いしたいくらいね!』


聞き間違いか幻聴だと思ったが、俺の顔の特徴をあげたうえで好感触を抱いた、というのだ、信じられないが


そして令嬢の後ろに控えてるメイドのうち、一人が真っ直ぐこちらを見てるのに気づいた

令嬢だけでなく、他のメイドも顔を青くして直視しないよう俯いてるのに、そのメイドだけうっとりした顔で俺のことを見つめていたのだ


俺はそのメイドに向かっていった

メイドは俺が向かってきたことに驚いた


メイドの容姿はパッと見平凡だが、よく見るとかわいい顔立ちをしていることに気づく


「君は…俺のことが…怖く……ない、のか?」

自分に好意を向けられたのが初めてで、緊張してしまい、たどたどしい言い方になってしまった


「…?はい、素敵な人だと思っています」

『うわ声もイケボだなあ、かっこいい』


他のメイドが「え?!」と言わんばかりに横目で振り返る


「名前はなんという?」

「……と申します」


「また後日使いを出す」


それだけ伝えて俺はその場を去っていった 


帰り際に、令嬢の父親に会いに行き、令嬢との婚約話は無かったことにしたいことと、自分の顔立ちに抵抗がないメイドがいたので迎えたいことを伝え、帰った


※※※


私には前世の記憶がある

前世は地球という星の、日本という国に産まれた。

そこでは平和な人生をおくり、平和に人生を終えた

死んだ後、この世界に異世界転生して、平民の身分として産まれた


ここはよく小説や漫画で見た、ファンタジーな異世界だった

自分に何かチート的なものはないのかと期待していたが、平凡な平民の平凡なスペックでがっかりした


でもしばらくして気づいたが、この世界で美しいと定義さている人は、私から見てそうではないと思った


この世界では、ふくよかでたるんだ身体と顔立ちが美しいとされていた

逆に引き締まった身体や顔は、醜いとされていた


これ、逆にモテないブサ男をターゲットにすれば私にもイケメン彼氏ができるってコト!?

と探したけどいなかった、残念


そんな中、父親が怪我をした


我が家の収入は減り、このままじゃ生活できなくなった


いい条件の仕事先ないかな、と探していたら貴族の家の使用人の募集があったので応募してみた

幸い計算と読み書きができたので、採用された


お屋敷の人達も、貴族の人達もみんないい人だった


わからないことは丁寧に教えてくれるし、お嬢様達は使用人達に分け隔てなく接してくれる


お嬢様は結構ぽっちゃり体型。この世界基準だとお嬢様は結構な美人さん、という認識になる

私からしたら美人、というより愛嬌のあるかわいい人にしか見えない


他の使用人がお嬢様の美しさに圧倒される中、私だけが冷静に対処してるので重宝された


そうやって屋敷で働きながら暮らしていると、お嬢様に縁談がきた


貴族としても身分が高く、この世界基準で美人の枠に入るお嬢様は、連日縁談が山のように届くが、その中でもこの縁談は大分特殊だ


まず、身分がお嬢様と対等になれるほど高い身分の方であること

お嬢様と対等なほどの高い位にいる貴族様は数えるほどしかいないので、縁談がくるのは他の階級の貴族様と比べたら稀である


そしてもう一つ、お相手がかなりの醜男だということ

お相手は貴族会で有名になるほどの醜さで、体調が悪くなるほどの醜さらしい


これって逆にいえば私にとってのイケメンが来るってこと??


ひと目でも見れたら嬉しいなあ


私も見てみたい、というとびっくりされたあと、後悔しても知らないわよ、と側に控えることを許してくれた


わーいやったぞー!これでイケメン見れるー!

と思ってたけど、仮面をつけて会いに来られた


ちえ、ざんねーん


お相手はお嬢様と数分会話した後、婚約はなし、ということになったらしい

お嬢様と相手も乗り気じゃなさそうだったから、らしい

それは仕方ない


でも帰り際に仮面を取り外してもらうことになって、ワクワクした


そして仮面を取り外された素顔は……


カッコイイ〜〜〜〜!!!!素敵〜〜〜〜〜!!!!

モロタイプ!!!!

やっぱ聞いてた通り私好みのイケメンだわ〜〜〜!!最高〜〜〜〜!!!!


私の身分が低いから結婚は無理だけど、一回でいいからデートしてもらいたいなあ


なんて呑気に思ってたらイケメン様が近づいて来られた

うわっ!顔良っっっ!!!


「君は……俺のことが……怖く、ないのか……?」

うわあイケボ

なんか初めて自分を怖がらない人間に出会った怪物のセリフですよねそれ


「はい、素敵だと思います」


「名前は?」

「……です」

「そうか、後日また使いを出す。待機していろ」


そういって去っていった


そしてお嬢様だけじゃなく仲間達にもめちゃくちゃ問いただされ、めちゃくちゃ疲れた

そして旦那様から、お前を迎えたいそうだと言われ、卒倒した


何か粗相をしてしまったのかと思ったけど違った

イケメン様は国で重要な重職を担っており、ものすごい財力があるそうだ

イケメン様の実家は、それを盾にして無理矢理婚約を進めようとしたけど、計算違いが起きた

私の存在である


穏やか方法で結婚するのは無理だろう、と思われていた醜男に、ゾッコンな女が現れたのだ


旦那様は逆にこの婚約を有利に進めれると考え、私を貴族に迎え入れようとしている


そこに待ったをかけたお嬢様


「あなた大丈夫なの?!あの醜男と結婚することになるなんて!!あなたの意志としてはどうなの?!?!?!」


「いえ、あのお相手様と結婚するのはいいんですけど、貴族の婦人として務めれるかは正直不安です……」


「そこは大丈夫よ!貴女身分は平民だけど頭いいし、しっかりしてるし、空気読めるし、わからないことがあれば勉強すればいいじゃない!私が教えてあげるわ!

でもいいの?!あの醜男と結婚しても大丈夫なのはあなたの正直な意見なのね?!誰かに言わされたとかじゃなくて!!!」


「あ、ありがとうございます…。洗脳をうけたわけじゃないんで安心してください」


お嬢様がすごい剣幕で私の肩をぐわんぐわん揺さぶってくる、そろそろやめてほしい


それから私は旦那様、お嬢様の助けを借りて貴族女性として勉強をうけた


しばらくしてイケメン様の使いが現れ、私とイケメン様の婚約話について取り決めがされた


そして私とイケメン様の顔合わせの時


「正直言って…、何故私みたいな平民女性を妻として迎えたいのか謎です、愛人でも妾でも他の方法があったんじゃないでしょうか」


「俺は君みたいに心の清い人と会ったのは始めてだった。俺は特殊能力があって、人の心の内がわかるんだ。

妻にするなら、嫌々結婚した人ではなく、俺のことを好きでいてくれる人がよかったんだ。君に出会えて本当によかった」


私とイケメン様は無事婚約し、その後色々あったけど無事結婚できた


イケメン様は私のことを溺愛してくれて、小恥ずかしい日々をおくっている




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