第5話 不良少女と呼んでくれ
「ぬあ~……」
山行香代は悩んでいた。
何故か同級生から舐められるのである。
「何か心配事でも有るなの?」
「あ!本屋の看板娘1号のお姉さん。」
実際、ここ台戸市のやまぐち書店には他所で看板娘を張れる美(少)女ばかりが働いている。
猫耳を着けた1号、眼鏡少女の2号、お団子頭のV3、最近パートで入ったストロンガー、そして店長でセーラー服のスーパー1……誰が言い出したのかその様に呼ばれているのであった。
1号はどうやら最寄りのコンビニにおつかいに行かされているようだ。
「こんにちは~なの!」
コンビニに入ると……ストロンガーが店番をしている?
「あざすさんは居ないなの?」
「令子は前の職場に呼ばれて行っちゃったのよ……多分時間には帰ると思うんだけどね……」
コーラとサイダー、ミルクとエナジードリンク、それに緑茶を買い込み書店に向かう。
中には……さっきコンビニに居た女性が?
「あ!あざすさん、ちょうど良かったなの。」
「なの~!その前になんでお客さん連れて来てんだよ?」
「いや……それよりお姉さんさっきコンビニに居ませんでした?」
「ああ、多分うちの母親よそれ。」
「は?お母さんですか?」
「あたしはあざす、母親は旧姓間座すみれでみんなまざすって呼んで区別してるわ。」
「一卵性母子なの。」
「なの!要らん事言ってないでそちらのお客さんは?」
「あ!あたし山行香代って言います。周りから舐められて悩んでたらお姉さんに声かけられて……」
「わかった、形状変化!」
えびちゃんの手から虹色の光線が迸り……彼女はメデューサの様な姿になっていた。
「ポイズンラミアだ、毒持ってるから舐めたら死ぬぞ?」
「そういう事じゃな~い!」
「えびちゃん、あれ今度あたしに掛けて?」
あざすさんは気に入ったようだ。
「とりあえず人間に戻してくだサイ。」
「え~かっこいいと思わねぇ?」
「誰が人外にしてくれと言いましタカ?」
「そうね、防衛軍が調べに来るわね。」
「あざすさん、ウキウキしてるなの。」
「いや~これはちょっと……」
「ハイハイ、んじゃ戻すぜ?人間回帰!」
人間には戻った……だがその黒髪は金髪に近い茶髪に、瞳は赤っぽく変色していた。
「……えびちゃん、説明を要求しマス。」
「たぶん恐怖から色素情報の変質が有った様だ……」
「かわいいの!ギャルみたいなの。」
本人は……
「これだ!ありがとうお姉さん!これなら舐められない。弥魔那芽麗羅の誕生だ!」
喜んでいた。
「え~と、ヤマナメちゃん、名前は替えない方がいいわよ?暴走族みたいな字面になってるし。」
「そうですか……はい、そのまま行きます!」
「それとここでバイトする気はないデスカ?たぶん心を鍛えるには最高の環境デスヨ?」
「したいけど……テストなんかで出られない日ができたら迷惑が……」
「ほらほらそんなの気にしない、あなたが来たきゃ来れば良いのよ。それにえびちゃんの魔法見てしまったからね。」
「そういえばえびさんとこちらは……気を悪くしないでください、人間じゃないような……」
「ああ、俺はエルフでなのは獣人だよ。狼オカマだ。」
「え?なのさん男なんですか?」
「男根見るなの?」
「見せようとしてんじゃねぇ!」
「あざすさ~ん!正体不明の円盤が1機太陽系外縁部に接近中、一月後には地球に上陸の模様。」
「ありがとうコニーちゃん、XOXO~、頑張って調べてくれたのね?お姉ちゃん感激よぉ~!」
「え?何この子?地球に居ない感じのフォルムしてる……」
「ああ、XOXOちゃんは大型ハムスターの奇形種よ?このピンクの毛皮がキュートでしょ?」
「いや、あたしは白いお腹がかわいいなと……」
言葉が判るのかXOXOと呼ばれる謎生物はヤマナメの手に体を擦り付ける。
「うわ~!ふっわふわのすごい毛皮だ!かわいいかわいい、よ~しよしよし。」
コニーとあざすさんはアイコンタクトでほくそ笑む。こいつ墜ちたなと……
「で、お姉ちゃん誰?」
「ああ、ごめんな?アルバイトで世話になる山行香代って言うんだ。」
「社員証とエプロンと名札デス、それとこっちはあざすさんからプレゼントだそうデス。」
結構派手なスカジャンだ。背中には弥魔那芽と入っている。
「これは……」
「鎧よ。それ着てる限り怪我はしないわよ。」
「着用する事に依って力場を発生させマス。マグナム弾位は弾きマス。」
「後は……えびちゃん、ヤマナメちゃんにカムフラージュで黒髪の魔法掛けて貰える?」
「すぐ消えちまうが……はい、できたぜ。」
見た目だけは元の山行香代に戻った。
「さぁ、公園に行きましょう。」
あざすさんの指示で公園に行くと……
「XOXOちゃん、巨大化後すぐに小さくなってくれる?」
ズオッと30メートルになってすぐ30センチに戻るXOXO。
その足元辺りに倒れているヤマナメちゃんとあざすさん。
「えびちゃん!カムフラージュ解除。XOXOちゃんに光学迷彩。」
台戸市中央公園に突如現れ消えた怪獣、目の前で見た少女は恐怖で髪が脱色された……これがあざすさんの計画であった。
更に防衛軍予備役少尉の言葉を否定できる者は居らず、ヤマナメちゃんの髪は正式に恐怖による脱色と相成った。
そしてその夜……
「ぎゃあ~!」
「出たぁ~!」
「ガァガァガァガァガァ!」
台戸市中央公園に人の上半身に蛇の身体を持つ妖怪が目撃されたと言う……
「何遊んでるんですカ?」
「いや~、XOXOちゃんだけ悪役にするのは気が引けて……」
「あざすさんの趣味だと思うなの。」
「でも昼にやったら防衛軍から怒られるぜ?」
「いやいやこれ癖になるわぁ~、特に池のアヒルが逃げ回るの楽しいわよ~、今度みんなで蛇になってパレードしない?」
「防衛軍に射殺されマスヨ?」
そして……
「んちわ~!ヤマナメで~す。あ、あざすさんでしょ?昨日の夜の妖怪濡れ女って。」
「なんでみんなあたしがやったと思うわけ?」
「魔法を掛けた奴を問い詰めれば簡単なの。試しにえびちゃんに七年ゴロシかけるなの?」
「何だよそれは?」
「肛門に挿入された男根は七つの直腸を破壊し七年後に死に至らしめるという恐ろしい技なの。」
「ヤマナメちゃん、聞いてはいけまセン!」
「あれ?コニーちゃんはどこか行ってんの?」
「前回の奨励賞じゃ納得できないらしくて新しい漫画描いてるのよ。佳作狙いだって。」
「後2点だったから照準には入ってるんだよな。漫画か……俺も描いてみようかな。」
周りはともかく中は平和なやまぐち書店だった。
今回執筆にやたら時間がかかっております。
普通の日常を書く予定でした……なんでこうなった?
ヤマナメちゃんとあざすさんの社員証は制限がかかっており、食堂と中央コンピューターへのアクセスまでしか承認されておりません。例えばえびちゃんの部屋に行く場合、えびちゃんもしくは書店ちゃんの承認が必要になります。
次回は早速ヤマナメちゃんの友人が様子を見に来る話です。
次回第6話 リングサイドから来た友人 お楽しみに