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やまぐちブックストアダイアリー  作者: 着ぐるみ人形あき
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第4話 書店員達、島へ 後編

「え?さっきの車って……」


焦るコニー、光学迷彩を作動させてたはずなのに。


「あなたの街のやまぐち書店って書いてある車よ?まさか海から上がって来るとは思わなかったわ~。」


不審に思ったえびちゃんが鑑定をかけると……


「コニー、ダメだ。その人は誤魔化せない。なんせ“真実の目”を持ってる。神ですら騙せない最恐のスキルだ。」

「昔からあたしだけ何か見えたり嘘がわかったりするのよ……なんか能力有ったのね?」

「あれ見られてたんですカ……では運転席をお見せしマス。」


運転席にピンクの小動物が座っていた。


「キャー!かわいい!ねぇ、抱っこしていい?」


普段のクールな目付きはどこへやら、ウサギかネコでも見るような目でXOXOを見つめている。


「ほらほらおいで?まぁ毛皮もしっとりとしてもふもふね、可愛がってもらってるのね。」

「あの……お客さん、その子はデスネ……」

「愛玩用でしょ?そういう事にしときましょ?あたし要らない報告書書きたく無いから。」


XOXOは若干引いている。


「お客さん何者なんデスカ?」

「ああ、お店じゃ自己紹介なんかしなかったもんね。あたし字守(あざす)令子(れいこ)、防衛軍諜報部少尉よ。」

転移者(トラベラー)保護機構、山口書店、アンドロイドデス。」

「これだけ答えて?あなた達は地球を征服もしくは壊滅させる気は無いのね?」

「ありまセン。」

「OK、じゃそういう事で……」

「お姉さん、釣りの穴場知らないなの?」

「あ~もう空気読めよお前は!」

「ん~、そこの横山を流れる長谷川の河口でスズキが釣れるわよ。」

「ありがとう、行ってくるなの。」

「あ!漁協は防衛軍秘密基地だから近付かない様にね?それと長谷川の先のアーノルズ溜池に行くんだったらアヒル最低1羽狩るのがルールだから。」

「アヒルか……あれ結構美味いんだよな。」

「全部狩り尽くしてもいいわよ?アヒルに今日を生きる資格は無いわ。」


すごい恨みようだった。


「今年の初夢なんかアヒルに嵌められて虎に食われる夢見たわよ!」

「ん?XOXO、アヒルの脳吸っても大丈夫か?」

「いけるよ。生物の脳なら大丈夫だよ。」

「あざすさん、アヒルをXOXOの餌にしていいかい?」

「ええ!駆除してくれるなら歓迎よ。さて……そろそろあたしも帰るわ。」

「あざすさん、またのご来店お待ちしていマス。」

「ありがとう、必ず寄るわね。」


その時、突き上げる様な衝撃が来た。


「地震か……ヤバいわね。」


あざすさんがトランシーバーに叫ぶ。


「こちら字守、状況を報告せよ!」

“海底火山噴火の模様、津波10分後到達予定。”

「全係員横山避難所に緊急避難!島民の受け入れを優先。みんな生き残るのよ!」

「みんな!“張形(ばいぶ)”キメろなのォォ!」

「黙れ!混乱するなお前は!」

「車に乗ってくだサイ!あざすさんは助手席へ!」

「あたしとXOXOは飛び降りられる様に!」

「OK!全員乗ったぜ!」

「飛行モード緊急発進しマス!」


ドン!垂直にカローラフィールダーが飛び上がる。

噴煙が海面から上がってそこを中心に波が円形に盛り上がっている。


「XOXO!飛び降りてすぐブライシンクロン!」


窓から飛び出したXOXOは空中でぐんぐん大きくなっていき……着水、と同時にコニーが空中に身を投げる。


「フェードイン!」


コニーがXOXOに溶け込む、生体戦車XOXOの完成である。

XOXOは鼻を伸ばし光弾を3連射。波の壁を崩す事に成功すると今度は鼻からの光線で残った波の壁を切り刻む。


「とりあえず島に向かう波は潰したが……どうやってコニーとXOXO拾うんだ?」

「車をホバリングさせマス。で、まずコニーちゃん乗り移ってくだサイ。」


えびちゃんがコニーを引っ張り上げる。


「で、XOXOは小さくなってくだサイ。」


1メートルの大きさになったXOXOは泳ぎ回っていた。


「バックドアを開けマス、XOXO、飛び乗れマスカ?」


XOXOはイルカの様にジャンプして30センチになり、ペンギンの様にカーゴ部分に着地した。


「さぁ、とっととズラかるなの。」

「誰からどこへ逃げる気だ?」

「こんなの報告できないわよ。だいたい報告したらあなた達は防衛軍から追われる事になるかも知れない、島を救ってくれた恩人にそれはできないわ。それはそれとして……誰にでも見せないこと!車だけでも充分防衛軍から追われるネタになるんだからね?」

「でも何でガッジーラやギャメラ来なかったんだろう?向こうじゃすぐ来たんだけど……」

「この次元じゃ居ないんじゃないか?俺の方でも居なかったぞ?」


コニーとえびちゃんの会話をあざすさんは聞かなかったことにした。


「はぁ……報告書どうしよう……」



「突如海中から現れたピンクの怪生物に依る攻撃で津波は破壊された……字守諜報少尉、本気かね?」

「先日綿山曲淵付近に現れた怪生物に酷似しておりました。その後見えなくなりましたので海中に逃走したと思われます。怪生物の思考が読めれば良かったのですが……」

「……いや、大丈夫だ。その怪生物はどういう生態をしていると思うかね?」

「海洋生物を主食にしているかと。」

(コニーちゃんのラーメン盗み食いしてるなの。)


あざすさんの協力により間蔵島防衛軍秘密基地(漁協)に潜入させた蜘蛛型盗聴装置はクリアな音声を拾っている。


「では字守少尉、特殊任務だ。台戸(だいと)市に潜伏しやまぐち書店を探ってくれたまえ。」

「え?いやあそこは私も利用しますが普通の書店ですよ?」

「それはわかっているのだが曲淵の怪生物の情報が出れば儲け物位のスタンスでやってもらえないか?」

「はぁ……微力は尽くしますが……何も出ない可能性が高いです。」

「それはそれで仕方ないのだよ。お母上からそろそろ結婚相手を探したいと言われてな……」

(ならバイトかパートで入ってもらいましょうカ。)

(あの人ならなのの暴走止められるな。)

(あ~!XOXO!何であたしのラーメン食べてるの!)


やれやれ、退職が遠退いたと思いつつもかわいい妹達が増えると考えればそう悪い事ではない、気に入ったXOXOもたまに連れ帰って世話させてもらおう。あざすさんの心は楽しみで溢れていった。


かくしてあざすさんはやまぐち書店の一員となります

たぶんこの話はとしあきたちに受けが悪いと思われます。元々コスプレイヤー設定のあざすさんが何故軍属になったか?本物の軍服でコスプレしたかったという隠し設定でございます

さて次回で登場人物も一段落、その次から日常回になる予定です。

次回 第5話 不良少女と呼んでくれ  お楽しみに

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